杣江市綺録【第071篇】弔席の女|特記観察対象照会簿:File 25
弔席の女
— 各所の葬儀記録に残る正体不明の美女

基本情報
通称:弔席の女
氏名:不詳
推定年齢:二十代
性別:女性
服装:黒の喪服
分類:葬祭場関連人物
確認日:2025年6月1日
確認地点:市内の複数葬儀場
所在:不明
所属:不明
観察概要
本対象は、杣江市内の葬儀場において、葬儀後の記録写真、家族写真、監視映像などに確認される身元不詳の女性である。
外見特徴としては左耳の真珠様耳飾りを記憶する証言が複数ある。
一方で、氏名、住所、親族関係、葬儀社所属はいずれも確認されていない。
本対象は、葬儀場内で確認を求められにくい位置に静かに留まる。
誰かと長く会話する、受付を手伝う、焼香順を誘導する、遺族のそばに立ち続ける、棺や遺影に近づくなどの行為は確認されていない。
葬儀の最中に、本対象を不審者として扱った記録はない。
受付で制止された例、親族から退出を求められた例、葬儀社職員が警備上の申し送りを行った例も確認されていない。
照合事項
最初に照合対象となったのは、宮前葬祭会館で行われた通夜式の式場記録写真である。
同写真は、祭壇、供花、席配置を記録する目的で撮影されたもので、葬儀社側の業務記録として保存されていた。
葬儀終了後、遺族側が写真を確認した際、最後列寄りの席に座る若い喪服の女性について問い合わせが行われた。
当初、葬儀社側は親族側の人物と認識していた。
一方、親族側では、葬儀社関係者または故人の遠縁であると考えられていた。
しかし、親族名簿、会葬者記録、受付控え、香典帳、供花手配記録のいずれにも、該当する氏名は確認されていない。
葬儀社側の当日勤務表、司会、案内、受付補助、清掃、搬送補助の記録にも該当者はない。
式中の進行記録にも、当該女性への対応や声かけは記載されていない。
参列者への聞き取りでは、若い喪服の女性がいたとする証言は複数得られている。
ただし、続柄については、故人の姪、喪主側の知人、配偶者側の親族、葬儀社の案内係など、回答が分かれている。
いずれも確認に基づくものではなかった。
別事例として、別斎場で撮影された家族写真にも、本対象とみられる女性が確認されている。
同写真は少人数の親族が祭壇前で撮影されたもので、最後列端に立つ若い喪服の女性については、遺族側から親族として認識する回答は得られていない。

当該写真の確認時、遺族側の複数名は、写真に写る人物を順に説明することができた。
しかし、最後列端の女性のところで説明が止まっている。
後日の再確認でも、同女性を明確に知る者は確認されなかった。
同斎場の葬儀社控え、親族控室利用記録、受付担当者一覧、撮影時の配置確認にも該当者はない。
関係者の一部は、故人の遠縁または喪主側の知人であると思っていたとする回答をしているが、具体的な氏名には到達していない。

所見
本対象は、確認されないまま葬儀場という特定の場に収まる形態をとる。
親族席の端に座っていれば、葬儀社側は親族の一人と見なす。
集合写真の最後列端に立っていれば、周囲は誰かの縁者と見なす。
ロビーの壁際に立っていれば、参列者、葬儀社関係者、親族側の知人のいずれにも見える。
本対象の特徴は、確認を求められない位置に留まり、関係者同士の認識のずれの中に収まっている点にある。
葬儀という場では、参列者全員の関係を一人ずつ確認することは少ない。
見知らぬ人物がいても、故人側もしくは葬儀社側の者として認識される余地がある。
本対象は、その余地に現れる。
また、本対象は、忘れられやすい人物ではない。
容貌の印象を残す者はいる。
しかし、あとで写真や映像を見返した時、関係者は初めて、本対象を誰も説明できないことに気づく。
現場での目撃証言は、必ずしも信頼できる照合材料にならない。
そのため、現場での存在が認められながら、記録上の所属は未確定である。
現在は、各所の葬儀記録に残る正体不明の美女として保持する。
なお、本対象は、葬儀場内で互いに確認されないまま成立するため、現場証言のみで判断せず、保存された写真・映像資料を優先して照合すること。
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