杣江市綺録【第077篇】帰らない子|特記観察対象照会簿:File 28
帰らない子
— 閉館後の青少年施設に残る身元不詳児童

基本情報
通称:帰らない子
氏名:不詳
推定年齢:小学校低学年程度
性別:不定
服装:不定
分類:青少年施設残留児童
確認時期:1999年7月以降
確認地点:杣江市青少年センター
所在:不明
危険性:単独対応および館外同行は禁止
観察概要
本対象は、杣江市青少年センターの閉館時刻前後に、館内に発生する身元不詳の児童である。
本対象は館内の一角に一人で留まり、閉館時刻を過ぎても退館しない。
外見は通常の児童として処理可能な範囲に収まる。
服装、髪型、所持品については記録ごとに差があり、本対象が単一個体であるか、複数の児童が同一のふるまいを示しているのかは確認できない。
本対象は、閉館時刻になっても、退館しようとせず、職員の声かけに対して、まだ終わっていない、もう少しで迎えが来る、帰るところである、といった趣旨の返答をする例がある。
ただし、利用者名簿、当日受付簿、団体利用記録、保護者連絡先、学校別利用者一覧のいずれにも、本対象に該当する児童の記載はない。
本対象は、保護対象に見える。
しかし、保護対象として対応を進めた場合、対応者は本対象が示す帰宅経路へ関与することになり、この時点で危険が生じる。
照合事項
同施設では、午後七時の閉館時刻前後に児童が館内へ残っている場合、職員が声かけ、保護者確認、退館確認を行う手順が存在していた。
しかし、本対象に対して同手順を適用した場合、確認作業が通常の範囲に収まらない例がある。
氏名を尋ねた場合、たとえ名乗っても利用者記録と一致しない。
保護者名や住所を尋ねた場合も、照合可能な氏名、町名、番地には到達しない。
回答はしだいに、帰宅先ではなく、帰宅経路を示す内容へ移行する。
この点が、本対象の主要な照合事項である。
この行動は一見すると帰宅先を示しているように見えるが、実際には対応者を施設外へ移動させるための誘導に近い。
過去の対応記録で、職員が本対象を施設外へ送ろうとした例があるが、当該職員の所在は現在まで確認されていない。
以後、同施設では、閉館時に本対象とみられる児童を確認した場合、職員単独での同行、正面玄関からの退館誘導、住所確認の深追いを避ける運用が取られている。
本対象に関する記録は、一般利用者の閉館後残留記録とは別に扱われている。
ただし、記録上の表記は一定せず、帰らない子、残っている子、閉館時児童、未退館児童など複数の呼称が確認される。
一方で、本対象を単なる不審者として扱うことも適切ではない。
外見、年齢、態度はいずれも、保護を要する児童として十分に自然である。
また本対象の出現に際して、施設設備の破損、他利用者への直接的危害、金品の紛失、暴力行為は確認されていない。
危険は、対象そのものの行動ではなく、職員側が通常の保護対応として施設外へ同行してしまう点にある。
所見
本対象は、帰れない子ではなく、帰らない子として扱うべきである。
閉館後の青少年施設に児童が残っていれば、職員は声をかけ、事情を確認し、必要であれば保護者連絡や帰宅支援を行う。
その判断は通常業務として正しい。
本対象は、その正しさの中に現れる。
本対象は、助けを求めて泣くわけではない。
職員を脅すわけでもない。
ただ、閉館時刻を過ぎても館内に残り、帰宅確認に必要な最低限の返答をする。
その返答は、保護対応を止めるには不十分であり、保護対応を続けるには十分である。
特に、帰宅先の確認が帰宅経路の確認へ変化する点は重要である。
氏名、保護者名、住所が照合できないまま経路だけが示された場合、職員は確認のために対象とともに施設外へ出る判断をしやすくなる。
この時点で対応者は本対象を帰すための経路へ踏み込んでいる。
本対象の危険性は、館内に残留することではない。
職員に、帰宅支援の判断を発生させる点にある。
以後、本対象を確認した場合は、単独対応および館外同行を行わないこと。
住所、保護者名、帰宅経路の確認は記録に留め、職員が実地確認へ移行しないこと。
また、本対象のみを残して施錠する対応も避けること。
本対象は、閉館後に取り残されているのではない。
閉館後も、帰らないものとして残っている。
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