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杣江市綺録【第093篇】北口の母|特記観察対象照会簿:File 35

北口の母

— 具体的すぎる助言を売る路上託宣対象


基本情報

通称:北口の母

氏名:不詳

年齢:不詳(推定70代)

性別:女

外見:高齢女性、薄い黒布、小机、紙箱、二つ折りの小紙片

分類:路上託宣対象

確認年:2009年

確認地点:杣江駅北口、杣江駅北口商店街、駅前祭礼時の露店外縁部

危険性:助言不履行時の不利益発生例あり


夜の駅前商店街の端を撮影した記録写真。閉店後の店舗シャッターの前、歩道脇に小さな折り畳み机が置かれている。机の奥には高齢の女性とみられる人物が座り、頭から薄い黒い布を被っている。机の上には紙箱と、二つ折りにされた小紙片が複数並んでいる。手前には客とみられる人物が一人腰かけ、机上の紙片を見ている。派手な占い道具や装飾はなく、閉店後の商店街に一時的に出された簡易な路上商売のように見える。
杣江駅北口商店街付近で確認された、本対象とみられる女性


観察概要

本対象は、杣江市内の駅前および商店街周辺で確認される路上占い師風の人物である。

本対象は、人通りが途切れた駅前や、閉店後の商店街の端に小机を出す。

駅前祭礼時には、露店の並びから少し外れた位置で確認されることがある。

本対象は、高齢の女性として語られることが多い。

ただし、年齢、服装、顔立ちについては記録ごとの差があり、明確には特定されていない。

頭部に薄い黒布を被っていたとする記録がある。

商売の形式は簡易である。

机上の紙箱または小皿に代金を置き、客が二つ折りの小紙片を一枚選ぶ。

小机、紙箱、二つ折りの小紙片を伴う点は、各記録でおおむね一致している。

手相見、姓名判断、易占などは確認されておらず、やり取りは短い。

紙片の外側は無地、または番号のみであり、内容は開くまで分からない。

小紙片に記される文面は、運勢、恋愛、金銭、健康といった一般的な占い文ではない。

日時、場所、行動を指定する短い助言であり、翌日から数日以内に取るべき行動を一つだけ示すものが多い。

文意そのものは明瞭である。

ただし、受け取った時点では、なぜその助言が必要なのかは分からない。



照合事項

本対象については、小紙片を受け取った者、周辺店舗関係者への聞き取り記録が残っている。

平成二十一年十二月、杣江駅北口商店街で本対象とみられる女性が小机を出していたとする記録がある。

当時の聞き取り記録では、同女性は「北口の母」と呼ばれていたが、氏名、住所、営業許可の有無はいずれも確認されていない。

同記録では、二つ折りの小紙片を一枚百円で渡していたとされる。

平成二十四年九月、杣江駅北口で本対象から小紙片を受け取った者は、翌日の通勤時、宮前通りの西側歩道を通るよう記された紙片を所持していた。

同人は通常、宮前通りの東側歩道を通行していたが、翌日は紙片の記載に従い、同じ通りの西側歩道を歩いた。

通常どおり東側歩道を歩いていれば通過していた時刻に、同歩道上で建物外壁工事中の資材が落下している。

落下地点は、同人の通常経路上にあたる。

平成二十六年七月、駅前祭礼時の露店外縁部で本対象から受け取った小紙片には、榎橋二丁目の飲食店へ入らないよう記されていた。

同日夜、同人は同店前を通過したが、紙片の記載を思い出して入店しなかったと話している。

同日夜、同店では複数名の体調不良が発生した。

翌日、店頭に臨時休業の掲示が出され、後日、市保健所による食品衛生上の問題が確認されている。

同店はその後も営業を再開していない。

平成二十九年二月、宮前通り沿いで本対象から受け取った小紙片には、指定された日時の電話には仕事中でも出るよう記されていた。

同人は当該時刻に着信を受け、紙片の記載に従い応答した。

内容は親族の急変を知らせる連絡であり、同人はその後、勤務先を早退している。

令和元年十月、杣江駅北口商店街で本対象から受け取った小紙片には、黒い長傘を受け取らないよう記されていた。

同人は同日夜、駅前で見知らぬ人物から傘を差し出されたが、受け取らなかった。

当該傘が、市内複数施設で記録された同特徴の長傘と一致するかは確認されていない。

小紙片そのものは、数点が現物として保存されている。

紙質、筆記具、折り方は一定しないが、いずれも市販のメモ用紙または便箋を小さく切ったものに近い。

文面はいずれも手書きである。



所見

本対象は、外形上は通常の路上占い師として扱われる。

ただし、小紙片に記される内容は、占断結果とは言い難い。

吉凶や運勢を示すものではなく、受け取った者の性格、過去、願望を読み取る内容でもない。

記されているのは、後日必要になる可能性のある具体的な行動である。

助言の内容は、市内の異常事案に限られない。

むしろ、日常の小さな選択に関するものが多い。

そのため、本対象は怪異事案への対応文を売る存在ではなく、生活上の分岐を小紙片として先に示す対象として扱うべきである。

危険性は、本対象から直接加えられるものではない。

問題は、紙片の文面が具体的であるにもかかわらず、受け取った時点ではその根拠を判断できない点にある。

無視すれば後日になって意味が判明し、従った場合でも、何を避けたのか分からないまま終わる例がある。

また、紙片の助言が受け取った者本人に向けられたものとは限らない。

同伴者、家族、後日その紙片を受け取った者に関係したと見られる例もある。

このため、紙片が誰の手に残ったか、破棄されたか、別人に渡ったかも記録対象となる。

本対象は、未来を大きく告げる者ではない。

あとで必要になる一文を、先に売っている。



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