「家族葬なら安い」とは限りません。見積もりの前に決めておく3つのこと
こんにちは。
群馬県で終活アドバイザーをしている、あまふみです。
普段は事務・経理の仕事をしながら、50代からの終活について発信しています。
連載「わが家の取扱説明書」、第3回です。
これまでの回はこちらです。
第1回 片付け編
https://note.com/shukatsu_amafumi/n/n7147d2bdfa2b
第2回 資産、どこにあるか編
https://note.com/shukatsu_amafumi/n/n887fde3f6940
前回の最後に「次回は葬儀・お墓編です」とお知らせしました。
でも調べていくうちに、葬儀だけで1本ぶんになってしまって。
お墓の話は、次回にさせてください。
「家族葬◯◯万円から」を見かけたら
新聞の折り込みチラシや、ネットの広告で、
「家族葬◯◯万円から」という文字を見かけることはありませんか。
家族だけで、こぢんまりと。
だから、費用もそれほどかからない。
なんとなく、そう思っている方も多いのではないでしょうか。
実は、国民生活センターが今年6月に、こんな題の注意喚起を出しています。
「家族葬だから安い」と思っていませんか?
家族葬の平均は、約96万円でした
まず、実際にかかった金額を見てみます。
直近2年以内に喪主をつとめた2,000人に聞いた調査では、
葬儀にかかった費用の平均は、96.73万円でした。
(鎌倉新書「第7回お葬式に関する全国調査」2026年)
これは葬儀社などに支払った費用の平均で、
いただいた香典で戻ってくる分は、差し引かれていません。
形式ごとに見ると、こうなります。
□ 一般葬……122.01万円
□ 家族葬……96.39万円
□ 一日葬……74.43万円
□ 直葬・火葬式……49.56万円
家族葬は、一般葬より安い。
それは確かです。
でも、約96万円。
「こぢんまり」という言葉の印象よりは、ずいぶん大きな金額ではないでしょうか。
しかも家族葬は、前回の調査(2024年)から6.49万円上がっていて、
4つの形式の中で、いちばん値上がりしていました。
相談は、この5年で1.5倍に
国民生活センターには、葬儀サービスについての相談が毎年寄せられています。
2019年度は632件。
それが2024年度には、978件になりました。
寄せられた相談には、こんな例があります。
①「一日葬は約30万円」というチラシを見て頼んだら、約80万円の契約になった
②「家族葬50万円」の表示を見て頼んだら、見積書に明細がなく、追加の費用もかかって、総額200万円を超えた
葬儀社が悪い、というお話をしたいのではありません。
葬儀は、悲しみの中で、短い時間で、大きな買い物を決める場面です。
比べる時間も、落ち着いて考える余裕もありません。
だからこそ、元気な今のうちに、知っておきたいのです。
「家族葬」には、決まった人数がありません
では、なぜ思っていた金額と違ってしまうのでしょう。
理由のひとつは、「家族葬」という言葉に、決まった人数がないことです。
家族だけなのか。
親しい友人までなのか。
仕事でお世話になった方も呼ぶのか。
どれも「家族葬」と呼べます。
実は私も、4年前に葬儀社へ行って、事前に見積もりを取ったことがあります。
それでも、どこまでの方に来ていただくのか、今もまだ決めかねているんです。
準備をした人でも、ここで迷います。
迷って、当たり前なのだと思います。
人数が決まらないと、見積もりは比べられません
「家族葬で、いくらですか」と聞いても、
葬儀社によって、思い浮かべている人数が違います。
これでは、何社に聞いても、比べようがありません。
さきほどの調査の内訳を見ると、費用はこう分かれていました。
□ 基本料金……72.02万円
□ 飲食費……11.67万円
□ 返礼品費……13.03万円
このうち、飲食費と返礼品費は、人数によって増えたり減ったりします。
合わせて、約25万円分です。
つまり、「何人で見送るか」は、
費用の中で、自分で決められる部分そのものなんです。
「家族葬で」ではなく、「20人くらいで」と伝えれば、
どこの葬儀社にも、同じ条件で聞くことができます。
人数は、名前ではなく「範囲」で決めます
「では、来てほしい人の名前を書いておこう」
そう思われるかもしれません。
でも、名前のリストは、すぐに古くなります。
とくに50代からは、仕事をしているか、していないかで、
お付き合いの広さが大きく変わります。
今書いた名簿は、10年後、20年後には、きっと別のものになっています。
それに、「この人は呼ぶ、この人は呼ばない」と紙の上で決めるのは、
思っている以上に、しんどい作業です。
そこでおすすめなのが、名前ではなく「線の引き方」を書いておくことです。
上から順に、どこまで含めるかに印をつけます。
□ 家族と、その配偶者まで
□ きょうだいと、甥や姪まで
□ 親しい友人まで
□ 年賀状をやり取りしている方まで
□ 仕事でお世話になった方まで
名前は書きません。
名前は、そのときにご家族が、年賀状や住所録から拾えば大丈夫です。
線の引き方なら、仕事を辞めても、年齢を重ねても、変わりません。
香典を受け取るか、辞退するか
人数と一緒に、決めておきたいのが香典です。
以前、葬儀社の方から「香典で、返礼品はまかなえますよ」と聞いたことがあります。
これは、香典返しの習わしを考えると、うなずける話です。
香典返しは、いただいた額の3分の1から半分ほどをお返しするのが一般的だからです。
ただし、これは香典を受け取る場合のお話です。
香典を辞退すれば、返礼品も飲食費も、ご自分の側で用意することになります。
少ない人数なら、辞退しても負担は軽くなります
とはいえ、辞退すると損、というわけではありません。
先日、身内が親を見送りました。
参列したのは、子どもたちと、その連れ合いと、孫たち。
10人に満たない見送りでした。
香典は辞退。
「家族だけで」と、周りに念を押していたそうです。
終わったあと、
「シンプルで、負担も少なくて、良かった」と話していました。
人数が少なければ、飲食費も返礼品も、もともと大きくはなりません。
そして香典を辞退すると、香典返しの手配や記録、あとからの発送も、まるごとなくなります。
負担が少ないというのは、お金だけでなく、この「あとの作業」も含めてのことなのだと思います。
もうひとつ、大事なのが「念を押した」ところです。
一度お伝えしただけでは、「それでも」と足を運んでくださる方がいます。
家族だけで、と決めたなら、はっきりと、何度かお伝えしておくことが大切なようです。
小さく見送ったあとに、ある仕事
ただ、小さくすれば全部うまくいく、というわけでもありません。
□ 葬儀のあとに、知らなかった方が一人ずつ、お参りに来てくださる
□ 誰を呼ぶかで、親戚の理解が得られないことがある
□ 亡くなったこと、家族だけで見送ったことを、あとからお知らせする必要がある
お金と手間は減ります。
その代わりに、「あとからお知らせする仕事」が増えます。
どちらが良い、悪いではありません。
両方を知ったうえで、わが家に合うほうを選べばいいのだと思います。
見積もりには「賞味期限」があります
最後に、4年前に見積もりを取った私が、いま感じていることを。
見積もりは、一度取ったら終わり、ではありません。
さきほどの調査でも、家族葬の費用は、2年で6.49万円上がっていました。
4年前の見積もりは、きっと、今の金額とは違います。
見積もりを取ったら、取った日も一緒に書いておく。
そして何年かに一度、見直す。
食べものと同じで、見積もりにも賞味期限があるんです。
国民生活センターのアドバイス
国民生活センターは、次のように呼びかけています。
① 葬儀の希望やイメージを考えて、情報を集めておく
② 葬儀社との打ち合わせは、親族や第三者など、複数で行う
③ 見積書は必ず受け取り、明細をよく確かめる
④ 不安なときやトラブルのときは、すぐに消費生活センターに相談する
困ったときの相談先は、消費者ホットライン「188(いやや)」です。
局番なしで、お近くの消費生活センターにつながります。
見積もりの前に決めておく3つ
ここまでのお話を、3つにまとめます。
① 呼ぶ範囲(さきほどの5つのうち、どこまでか)
② 香典(受け取る/辞退する)
③ 形式(一般葬/家族葬/一日葬/直葬・火葬式)
この3つが決まると、
「家族葬でいくら?」ではなく、「この条件でいくら?」と聞けるようになります。
見積もりを取りに行くのは、まだ先で大丈夫です。
まずはご家族と、この3つを話してみるところから始めてみてください。
今日決めるのは、線を1本だけ
来てほしい方の名前も、葬儀社も、今日決めなくていいんです。
今日は、「家族と配偶者まで」「きょうだいまで」……
その、どこに線を引くかだけ。
線が1本引ければ、見積もりが比べられるようになります。
比べられれば、慌てずに選べます。
次回は「お墓編」です
次は、今回お約束していたお墓のお話です。
継ぐ人がいるのか、いないのか。
今のうちに、家族と話しておきたいことを考えます。
さて、最後にひとつだけ。
あなたなら、どこに線を引きますか?
よかったら、コメントで教えてくださいね。
※この記事は一般的な情報のご紹介です。葬儀の契約内容やトラブルについては、お近くの消費生活センター(消費者ホットライン188)にご相談ください。
参考にした資料
- 株式会社鎌倉新書「第7回お葬式に関する全国調査(2026年)」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000129.000009951.html
(2026年2月27日〜3月3日/直近2年以内に喪主を経験した全国40歳以上の男女2,000人)
- 独立行政法人 国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル-『家族葬だから安い』と思っていませんか?-」(2026年6月3日)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260603_2.html
