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カスハラ対策を経営層に通す説明資料の組み立て方。何を数字で示し、何を決めてもらうか

カスハラ対策の必要性は分かっている。それでも経営層に上げる段になると、資料の1枚目で手が止まる担当者は多いはずです。法改正の解説を並べても、返ってくるのは「で、うちは何をいくらでやるのか」という一言です。この記事では、承認を得

るための説明を4つのブロックに分ける方法と、数字で示す部分と判断を仰ぐ部分の分け方を整理します。

結論:説明は4ブロック、決裁事項は3つに絞る

先に結論を言うと、経営層向けの説明は「対象と期限」「未対応で起きること」「自社の現状」「決めてほしいこと」の4ブロックで足ります。そして決裁を求める項目は3つ以内に絞ってください。

法改正の背景や条文の解説は、資料の本体に置かないでください。必要なら補足資料に回します。経営会議の議題として通るのは、判断を求める資料であって、勉強のための資料ではありません。

数字で示すブロックと、言葉で示すブロック

数字で示すのは、期限と自社の実数です。

  • 施行日は2026年10月1日。ここまでの残り週数を書く

  • 対象は労働者を1人でも雇用する全事業主。企業規模による猶予期間はない

  • 自社で昨年度に発生した顧客とのトラブル件数(クレーム記録、警察を呼んだ件数、店舗からの報告件数など、手元にある実数)

  • そのうち従業員が対応を交代した件数、または長時間の対応になった件数

自社の実数がここで効きます。世の中の統計より、自社の記録のほうが経営層には届きます。記録が残っていない場合は、店長や現場責任者に直近3か月分をヒアリングして件数を作ってください。件数がゼロに近いなら、それも判断材料です。件数が少ない会社では、対策の重心を規程と窓口に置くという説明ができます。

言葉で示すのは、未対応で起きることです。ここは断定を避けて正確に書いてください。措置を講じていない場合、行政による助言・指導・勧告の対象となり得ます。指導に従わない場合は企業名公表の対象となり得ます。刑事罰は定められていません。金銭的な制裁がただちに科されるかのような書き方をすると、後で事実と違うことが分かった時点で提案そのものの信頼が落ちます。

あわせて、従業員側から見たリスクにも触れてください。対応が個人任せになっている状態は、離職や休職の要因になります。採用難の業種であれば、この論点のほうが行政リスクより経営層に刺さることがあります。

経営層に決めてもらう3つのこと

具体例を挙げると、決裁事項は次の3つに整理できます。

  1. 相談窓口をどこに置くか(既存の総務・人事に役割を足すか、外部を使うか)

  2. 対応を打ち切る判断を誰の権限にするか(店舗責任者か、本部か)

  3. 対外的にどこまで表明するか(自社サイトへの掲載、店頭掲示の可否)

このうち3つ目は経営判断そのものです。顧客に向けて方針を掲げることを嫌う会社もあります。担当者が勝手に決められる範囲を超えるので、選択肢と想定される反応を並べて判断を仰いでください。

逆に、規程の文言や研修の教材選定は、担当者側で決めて報告すれば足ります。決裁事項を増やすほど会議は長くなり、結論は先送りされます。判断を求める点と報告で済ませる点を、資料上で明確に分けてください。

資料の構成と分量

1枚目に、対象・期限・決めてほしい3点だけを書きます。2枚目に自社の現状の数字。3枚目に進め方の工程と期日。ここまでで説明は成立します。

工程の枚には、誰がいつまでに何を出すかを書いてください。「体制を整備する」ではなく、「方針文書の案を総務が提出、次回会議で承認、承認後2週間で全社周知」という粒度にします。経営層が承認するのは方向性ではなく、期日と担当です。

補足すると、費用の話は概算のレンジで足ります。この場で細かい見積もりを詰めようとすると、金額の議論に会議時間を取られ、体制の判断が持ち越しになります。まず窓口と権限を決めてもらい、費用は選択肢が固まってから改めて出す順番が進みやすいです。

説明の場でよく出る質問への備え

想定される質問を3つ挙げます。「今までのクレーム対応と何が違うのか」「正当な苦情まで拒否するのか」「顧客に方針を出したら反発されないか」。

1つ目には、これまで現場の個人裁量だった判断を会社の基準にする点が違う、と答えてください。2つ目には、カスハラの成立には、行為者が顧客等であること、社会通念上許容される範囲を超えた言動であること、就業環境が害されることの3要件があり、正当な苦情は該当しないと説明します。3つ目には、対外表明の範囲は決裁事項1つとして預けていると返せます。

まとめと次の一手

経営層への説明は、法改正の解説ではなく、期限と自社の実数、そして決めてほしい3点の提示です。この形にすると、会議の場で結論が出ます。

資料づくりの前に、方針文書のたたき台を手元に置いてください。無料のひな形をダウンロードして中身を見ておくと、何を承認してもらう必要があるのかが具体的になります。

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執筆者について

丸岡 峻(MeHer株式会社 代表取締役)

2026年10月1日施行の改正労働施策総合推進法によるカスタマーハラスメント防止措置の義務化に対応した文書パッケージ「カスハラシールド」を企画・執筆しています。社内規程、対応マニュアル、記録様式、研修資料の設計を自ら行っています。

本記事は厚生労働省の公表資料および法令原文を一次情報として作成しています。参照元は本文中にリンクで明示しています。

運営:MeHer株式会社


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