[毎SS]踏切オーディション(約700文字)
目の前で警報機が鳴っている。
規則正しい不協和音が、否応なしに不安を掻き立てる。
いつもそうだ。
何かに挑戦するとき、必ずこうして僕の目の前には踏切が現れる。その踏切は常に閉まっていて、どれだけ待っても開きはしない。警報音が常にけたたましく鳴っていて、僕に引き返すように促す。
みんな、どうやって挑戦しているのだろう。
その警報機について、友達に話したことがある。
友達は、呆れた顔をして「そんな踏切あるわけないじゃん」と言った。挑戦したいならすればいい、と真剣にアドバイスしてくれた。でも、その時の僕は、彼の無神経な言葉に憤りを覚えた。
警報機が鳴っているんだ。
その先に行ってはいけないんだよ。
目の前の警報機が、僕を拒絶する。
「タカシは、おばあに似てとっても慎重なんだねえ」
死んだ祖母の声が聞こえる。
優しい祖母だった。僕が物心ついた時にはすでに病床にあって、僕の話を楽しそうに聴いてくれた。
「大丈夫だよ、タカシ。本当に大切な時には、タカシはその踏切なんて、へっちゃらだから」
おばあもそうだったんだよ。
そう教えてくれたおばあは、もういない。
そうだ、僕は。
踏切の向こうに行きたいんだ。
危険なのは、踏切その場所だけなんだ。踏切の向こう側に行きたいから、僕はそこに立っている。大切なのは、踏切が開くのを待つことではない。
目的地に辿り着くことだ。
「いろはさん」
僕は、踏切の向こう、彼女の目を見つめた。
踏切警報機は鳴っている。
鳴っているのは、僕の側だけだ。
彼女にとっては、何てことないディナーのひとときでしかない。
「僕と、結婚してください」
心の中の踏切は、霧のように消えていった。
田原にかさんの毎週ショートショート、35回目の参加です。
オーディションとは?
頭にもやがかかって、うまく言語化できないのが最近の悩みです。常に一人で頭を捏ね捏ねしているのが原因なのか、気圧が問題なのか、何とも分からない状況です。
文章を書いては消しを繰り返しているので「あれ?この文章はさっき書いたっけ?」「読み返すとここのつながりおかしくなってるな?」とかが頻発してしまいます。文章自体はいくらでも出てくるのですが、そのうちの九割くらいが不要な言葉で、何を書いているのだろうと悩むことしばし。
構成力と、その構成を遂げられるだけの表現力が必要ですね。
足りないものが多すぎるな、と思う昨今です。
面白いと感じた方は、スキやコメント等、よろしくお願いします。
作者の励みになります。
それでは、また来週のショートショートで。
