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兄の遺したパソコン

私の兄は、36歳で亡くなりました。
兄は生前、私に言っていたことがありました。

「自分が死んだ時は、これをA子に渡して欲しい」

これとは、兄が使っていたVAIOのパソコンで、A子とはその当時兄が付き合っていた女性です。

実際その時が来てみると、どうすればいいのか、
かなり悩みました。と言うのも、A子さんと兄はかなり前に別れていたことと、そのパソコンはその時には壊れかけていたからです。

A子さんはとても綺麗な女性で、何で兄と付き合ってるんだろうと、とても不思議なくらい、本当に美しい人でした。

でも、兄とA子さんは多分共依存で、別れたり、よりを戻したりを繰り返していました。

兄もA子さんも激しい性格で、大きなケンカをすると、兄の家の近所の方から110番され、私の家から兄の家まで3時間弱かかるのに、私が警察から呼び出されたりしていました。それも一度や二度ではありませんでした。

いつも彼女から別れを切り出し、兄の気持ちの整理がつく頃になると戻って来ては、また付き合っていました。

A子さんからも、私に相談に乗って欲しいと連絡が何度もあったのですが、その頃私は、この2人の事で夜眠れなくなっていて、カウンセリングを受けていました。カウンセラーからは必ず断るように強く言われていたので、正直(相談に乗るのは)無理だと思うと言って断りました。

その後暫くして、兄とA子さんはやっと、本当に別れました。
そして兄は住んでいた家を引き払い、私と母の住む家に戻ってきました。

兄が亡くなった時の携帯からは、A子さんの番号は消えていたし、A子さんは美人で一見優しそうだけど、正直、色々と怖かったので、パソコンを渡すのを諦め、その後私は住んでいた家の引越をしました。

引越をして何年か経ってからのこと、最寄り駅にあるマッサージのお店で、マッサージをしてもらっていました。

マッサージが終わって、レジの所に行って会計をしようとして顔を上げたら、そこには、

A子さんがいました。

マッサージ店の店員としてそこに立っていました。
どうしようと一瞬思ったのですが、他人の空似だと自分に強く言い聞かせて、知らないふりをして、会計をしその場を離れました。

A子さんは、本当にそぉっと、そぉっと、私の事を見ていました。

そのマッサージ店は、全国展開をしている所で、住所などは登録していたので、多分そこのシステムを使えば、私の家の住所もわかる筈だし、名前も登録されていました。

A子さんは、兄が死んだことを知っているのかも分からないし、A子さんが当時住んでいた所から通える場所でもないし、何故そのマッサージ店で働いていたのかはわかりません。

でも、そのマッサージ店には、それから一度も行ってません。

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