「公開リハビリ騒動〜乱入する小さな勇者たち〜 」

「……という訳で。本日、公開リハビリ決行でーす。」
ニックの明るすぎる宣告がリビングに響く。
「ちょ、待て待て待て!!マジでやるのかよ!?!?」
ショウは顔面蒼白。
ストレッチマットの上に横たえられ、
覚悟を決めきれないまま固まっている。
シンは腕を組み、淡々と言う。
「約束だからな。サボっただろ。」
「一日だけだろぉぉぉ!!」
「 “なるべく頑張る、多分” の結果がこれだ。」
「だからぁぁぁーーーー!⋯多分⋯って⋯
     言ったじゃんかぁぁぁーーーー!
      努力はしたぁぁぁーーーー!!」
シンが深いため息混じりに
「お前なぁ〜⋯その ”多分” っての⋯やめろ!
     頑張る!で止めろ!⋯全然、言い訳になってねぇ〜ぞ!」
ぐうの音も出ない。
そして――
グイ、と脚が持ち上げられる。
「いっっっっっだぁぁぁぁぁぁーーーー!!」
ショウの絶叫が響いた。
ーーその瞬間。
バタバタバタッ!!!
「兄ちゃんをいじめるなぁぁぁーーーーー!!」
乱入。
チビ達三人が全力突撃。
シンの腕や背中をペシペシ叩きながら、
必死でショウを守ろうとする。
「ダメなのぉぉぉーーー!!」
「いたいのイヤなのぉぉぉーーー!!」
「兄ちゃん泣いちゃうぅぅぅーーー!!」
シンは一瞬固まった。
ニックは吹き出しそうになりながらも、慌ててフォロー。
「ちょ、ちょっと待ってねぇ〜!
     いじめてる訳じゃないよぉ〜!」
シンも真面目な顔で言う。
「別にイジメてる訳じゃねぇ〜ぞ。
     必要な事なんだよ。
      治してやってるんだ⋯」
ショウは涙目で叫ぶ。
「うぅぅぅぅ⋯。シンーー!!
    もっと優しくしてくれよぉぉーーーー!
     マジでぇぇぇーーー!!
      痛いんだってぇぇぇーーー!
      俺⋯泣くぞぉぉぉーーー!
      イイのかぁぁぁーーーー?」
完全に情けない兄。
しかしシンは優しく、でも真っ直ぐにチビ達へ話す。
「ショウ⋯お前は⋯黙れ!!
    だよなぁ〜?
     痛くて自分じゃ動かせねぇ〜。
     でもな……動かせねぇ〜と、ずーっと痛いまんまなんだぞ。
      可哀想だろ? 痛いまんまじゃ……。」
チビ達がぴたりと動きを止める。
ショウタンが、潤んだ目で聞いた。
「痛いまんま……可哀想……。ニィニ……なおしてんのぉ〜?」
「あぁ。そうだ。
    だからな……応援してやれ。
     頑張れ〜!!ってな。」
ーー少しの沈黙。
それから――三人は一斉にショウの元へ。
ナデナデ、ぽんぽん。
「頑張るのぉぉぉーーー!」
「痛い痛い……とんでけぇぇぇぇーーーー!!」
「応援してる!兄ちゃん!頑張れーーーー!」
ショウは苦笑い。
目の端に涙を溜めたまま、チビ達の頭を優しく撫でる。
「ありがとな……。
     兄ちゃん……頑張るからな。
      勇気もらった……大丈夫だ……!」
シンが小さく笑う。
「よし。じゃあ続きいくぞ。」
「え、今の感動の流れで止めねぇの!?」
「止めねぇ。」
再び脚が持ち上がる。
「いだだだだだだだぁぁぁぁぁ!!!」
でもさっきとは違う。
ショウの両手は、チビ達の小さな手をぎゅっと握っている。
「頑張れぇぇぇーーー!!」
「痛いの飛んでけぇぇぇーーー!!」
その声に押されるように、ショウは歯を食いしばった。
「……っ、くぅぅぅ……!!」
やがて。
「……よし。今日はここまでだ。
     よく、頑張ったな⋯偉いぞ⋯」
シンの一言に、全員が安堵。
ショウはマットに崩れ落ちる。
「……生きてる……俺……。」
ニックがタオルを差し出しながら言う。
「ほらねぇ〜。終わればスッキリでしょ〜?
    偉い、偉い!流石〜お兄ちゃん!」
ショウは少し息を整え、ゆっくり頷いた。
「あぁ……ちょっと……軽い……かも……。」
チビ達がぱぁっと笑う。
「なおったのぉ〜?」
「兄ちゃんすごいーーー!」
「えらいーーー!」
ショウは照れくさそうに笑う。
「まぁな。兄ちゃんだからな。」
シンはその様子を見て、静かに呟いた。
「守られてんな、お前。」
ショウは小さく答える。
「……うるせぇ。」
でもその顔は、どこか誇らしげだった。
公開リハビリは大騒動だったけれど。
あの日、ショウは知った。
公開リハビリなんて、恥の上塗りじゃねぇ〜か!って
最初は思ってたけど⋯悪くない⋯かも⋯
痛みは怖い。
でも――ひとりじゃないなら、耐えられる。


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