脱輪コスプレイヤー救出作戦
見るも無惨様
いやー。台風が来ておりますね🌪️
梅雨にもこの流れで入るのでしょうか?
雨といえば、先日愉快な事件がありまして…
岡山県には用水路が多い。
晴れの国岡山。
古くから雨が極端に少ない土地でありながら、岡山平野を中心に米や綿花、い草の生産が盛んだった。その農業を支えてきたのが、網の目のように張り巡らされた用水路だという。
田んぼも多く、自然も豊か。
都会では味わえない景色がそこにはある。
しかし。
雨の日だけは話が別だ。
用水路は突如として凶悪な罠へと変貌する。
想定を超える雨量に排水が追いつかず、水面と道路の境界線が消える。
フェンスも何もない道路では、どこまでが道でどこからが用水路なのか分からなくなるのだ。
こうして岡山の梅雨には、
用水路へ落ちた車たちが並ぶ。
ある意味、風物詩である。
県外の人が聞けば笑うかもしれないが、岡山県民は割と本気で用水路を警戒している。
あいつらは本当に人を食う。
先日。
四月だというのに岡山は大雨に見舞われた。
例のごとく用水路は冠水し、見事な落とし穴へと進化していた。
仕事帰り。
自宅へ向かう細い道路を走っていると、対向車が突然視界から消えた。
いや、正確には消えていない。
片輪だけが側溝に落ち、斜めに傾いて動けなくなっていた。
私はハザードを焚き、車を路肩へ寄せる。
「大丈夫ですか?」
運転席から女性が降りてきた。
そして私は思わず二度見した。
こんな土砂降りの日に見る格好ではない。
黒いスーツ。
白いシャツ。
特徴的な帽子。
どこかで見たことがある。
なんだっけ。
なんだっけ。
ああ。
鬼舞辻無惨だ。
「大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫です。ごめんなさい。本当にすみません」
流暢な受け答えだった。
どうやら鬼ではないらしい。
「とりあえずJAFを呼びましょう。危ないので、降りられる人は車から降りてください」
すると。
車内から次々と人が出てきた。
炭治郎。
善逸。
義勇。
鬼殺隊だった。

どうやらコスプレイベントか何かの帰りらしい。
必死に用意したであろう衣装は雨でびしょ濡れになり、皆かなり落ち込んでいる様子だった。
そこへ事故に気付いた若い青年たちが駆け寄ってきた。
そして。
鬼舞辻無惨。
炭治郎。
善逸。
義勇。
私。
という、なかなか情報量の多い現場が完成した。
青年たちも若干困惑していた。
「この人数なら何とかいけそうですね」
私は青年たちへ声を掛ける。
「お兄さんたち、ちょっと手伝ってもらえますか?」
全員が快く協力してくれた。
「お姉さんは運転席へ。アクセルを軽く踏んでください。ただし道路へ上がったらすぐブレーキで」
男四人で車体を持ち上げる。
軽自動車とはいえ重い。
だが、本気になった男四人は意外と頼もしい。
掛け声と共に押し上げる。
ガコン。
無事脱出。
車は何事もなかったかのように道路へ戻った。
鬼舞辻無惨様は何度も頭を下げながら目的地へと走り去っていった。
世界を恐怖に陥れた鬼の始祖も、側溝には勝てないらしい。
その後。
手伝ってくれた青年たちへコンビニでコーヒーを奢り、その場は解散となった。

家へ帰り、シャワーを浴びる。
ふと今日の出来事を思い出す。
見るも無惨様たちは無事に帰れたのだろうか。
炭治郎たちは風邪を引かなかっただろうか。
まぁ、いい。
鬼殺隊なら、たぶん大丈夫だろう。
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