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2026年7月 | 育てることは、決め続けること。


6月30日。

田んぼは、まだ「緑の田んぼ」と呼ぶには少し寂しかった。

ドローンで種をまいてから約3週間。

目を凝らせば、確かに稲は育っている。

でも空から見ると、まだ土の色の方が目立つくらいだった。

それが7月末。

同じ場所を空から見ると、田んぼには緑が広がっていた。

たった1か月。

でも、その間にやったことを振り返ると、

「よくここまで育ってくれたな」

と思う。

7月も色々あったから。


また、水を入れるところから

7月1日。

強制落水を終えた田んぼに、入水を再開した。

水が入ってくると、同時に動き始めたものがある。

スクミリンゴガイ。

通称、ジャンボタニシ。

出てくる。出てくる。

この日だけで、バケツ2杯近く回収した。

水を入れればジャンボタニシも動く。

でも、稲を育てるには水が必要。

この時点で、もう

「水を入れる=安心」

ではなくなっていた。

数時間作業して家へ戻ったあと、今度は大雨。

「これ、まずいかも」

と思って田んぼへ戻ると、予想どおりだった。

水は水路から畦を越え、あふれ入り始めていた。

慌てて入水を停止する。

翌日雨が止むと、元休耕田の水位はまた減っている。

一方、水持ちがいいはずの通年田も、思った以上に水位が下がっていた。

「これはおかしい」

そう思って畦を歩いていると、聞こえてきた漏水の音。

モグラの穴だった。

またか。

水を張ったからこそ分かることがある。

漏れている場所。

水の流れ。

田んぼごとの水持ち。

元休耕田と通年田。

隣り合っているのに、同じようにはいかない。

止水板を少し開けたり、小さい止水板を外してみたり。

雨が降りそうなら通年田への入水を止め、元休耕田には少しずつ水を入れ続ける。

そんなことを毎日繰り返しているうちに、6日目くらいからだったと思う。

「このくらいなら大丈夫」

という感覚が、少しずつ分かるようになってきた。

それぞれに合わせて入水をした2つの田んぼ
左:元休耕田 / 右:通年田


誰かが教えてくれるわけではない。

自分の田んぼを毎日見たことで覚えていく感覚だった。


やっと水をためたのに

7月11日。

元肥を散布してもらう予定になっていた。

それまでに、できるだけしっかり水を張っておこうと思っていた。

ところが前日の10日。

「明日、除草剤も一緒の日に散布するので、水を抜いておいてください」

と連絡が入った。

えっ。

頑張って水をためたのに、水を抜くの?

農業をしていると、予定どおり進めることより、

その時の条件に合わせて予定を変えることの方が多いのかもしれない。

慌てて田んぼへ行き、落水した。

そして翌日。

まず液体の除草剤。

その後、農業用ドローンの散布装置を切り替え、今度は粒状の元肥。

同じ日に、一台のドローンが二つの仕事をする。

昨年にはなかった作業だった。

液体から粒へ。

除草剤散布後、洗浄の様子


短時間で切り替わり、粒が田んぼ全体へきれいに広がっていく。

スマート農業の力を感じる場面だった。

でも、散布して終わりではない。

除草剤を効かせるため、その後3日間は入水をしなかった。

少し休める。

そう思った。


再度入水すると、今度は黄緑色

3日ほどすると、稲の色が少し黄色く見えてきた。

「大丈夫かな」

また不安になる。

確認して、14日の夕方から入水を再開した。

ところが今度は、水の入り方が弱い。

一度帰りかけたものの、どうしても気になって車をUターンした。

田んぼより上流にある水流を変える水門の場所まで見に行く。

すると、田んぼがある方へ流れてくる水量が少なくなっていた。

やっぱり見に来てよかった。

水が最大限田んぼの方へ流れるように調整して、入水を続けた。

そして16日。

田んぼへ行って驚いた。

通年田の水面が、黄緑色になっていた。

最初は一部分。

でも夕方には、水面を覆うように広がっていた。

入水再開で黄緑色に覆われた通年田


すくってみても、よく分からない。

藻という感じでもない。

泡のようにも見える。

とにかく、見慣れないものだった。

少しずつ水が流れるように落とし口を調整し、外へ流れてくれないか様子を見る。

数日かけて、通年田の黄緑色は少しずつ減っていった。

「やっときれいになった」

そう思ったら、今度は元休耕田。

こちらには、土の上を覆うような藻のようなものが広がっていた。

左:数日かけて満水になった元休耕田
右:土を覆う藻のようなもの


隣り合う二枚の田んぼ。

同じ水を使い、同じように管理しているつもりでも、起きることは全然違う。

本当に分からないことばかりだった。


見えるようになると、また問題が見える

通年田の水面を覆っていた黄緑色がなくなり、透明になってきた。

それは嬉しいことだった。

でも、水面がきれいになるということは、

今まで見えなかったものが見えるということでもあった。

まず見つけたのが、これまでで一番大きなモグラの穴。

いつものようにマルチを丸めて押し込むくらいでは、とても塞げそうにない。

翌日、使い終わった肥料袋を持って行った。

まず袋で穴を塞ぎ、その上からマルチや土を入れる。

水がある中での作業はやりにくく、きれいな補修とは言えなかった。

左:通年田で見つけた、これまでで一番大きいモグラ穴からの漏水
右:補修後の様子


それでも、とにかく水が抜けないようにする。

そして、その水の中に見えてきたのが、

ジャンボタニシとピンク色の卵だった。

黄緑色に覆われていた間も、見えないところで動いていたのだと思う。

とにかく多かった。

毎朝田んぼへ入り、暑くなるまで回収する。

ピンク色がほとんど見えなくなるまで、3日かかった。

6月、濁った水の中で何が起きているのか分からなかった時と同じだった。

見えないから、いないわけではない。

今年は、そのことを何度も教えられている。


それでも、稲は育っていた

問題ばかり見ていると、つい忘れそうになる。

稲は育っている。

7月11日に元肥を散布した頃は、まだ小さかった。

ところが月末になると、田んぼ全体に緑が広がった。

7月28日には追肥も散布した。

その後は、さらに勢いが増したように感じる。

溝切りをした場所も、稲に隠れて分かりにくくなってきた。

7月末、緑が広がった田んぼの様子


これまでのように田んぼの中を歩き回れる時期も、そろそろ終わる。

稲の成長は、本当に嬉しい。

でも、成長したからこそ見えてきたものもあった。

通年田には、ジャンボタニシに食べられたと思われる場所がある。

元休耕田にも、稲が少ない場所がある。

こちらは、鳥による被害ではないかと思っている。

遠くから見れば、どちらも緑の田んぼ。

でも近くで見ると、きれいに揃っているわけではない。

二枚の田んぼには、それぞれ違う課題が残っていた。


田んぼには、いろんなお客さんが来る

7月後半になると、鳥の姿も増えた。

何羽も田んぼに入り、何かを食べている。

近づけば、一斉に飛び立つ。

「何食べてるんだろう」

そんなことを思いながら見ていた。

そして、ある朝。

いつものようにジャンボタニシを回収していた時だった。

自作の回収棒が、急に重くなった。

「え?」

と思った瞬間、

棒にヘビが絡みついていた。

うわっ!

さすがに大声が出た。

棒を放り投げると、ヘビは逃げていった。

今年の作業を支えているアイテム
左:ジャンボタニシ回収棒 / 右:刈り払い機


田んぼでは、本当にいろんなことが起きる。

笑い話のようだけど、その時は笑えなかった。

草もかなり伸びていた。

これでは、どこにヘビがいるのかも分からない。

これまでは月末に草刈りをお願いしていたけれど、

歩く場所だけでも自分でやってみようと思った。

暑い中、約3時間。

やっても、やっても終わらない。

左:ヘビが出たときの畦の様子
右:自分でできる範囲で草刈りをした様子


結局、全部は刈れなかった。

そして今度は腰が痛い。

「私は一体、何をやってるんだろう」

そんなことまで思った。


育てるって、毎日決めることなんだ

7月を振り返ると、大きな作業だけなら、

元肥と除草剤の散布。

そして追肥。

それだけなのかもしれない。

でも実際の田んぼでは、その間に数えきれないほどの判断があった。

水を入れる。

止める。

抜く。

流す。

穴を塞ぐ。

ジャンボタニシを拾う。

卵を取る。

草を刈る。

そして、待つ。

その一つ一つに、

「今日はどうする?」

という判断がある。

誰かが答えを教えてくれるわけではない。

昨日と同じ判断が、今日も正しいとも限らない。

去年経験したから、今年は分かる。

そう思っていた。

でも、2年目の田んぼは、去年とは違う姿を見せている。

農家さんは、これを毎年やっている。

天候も違う。

水も違う。

害虫も、雑草も違う。

同じ作物を育てていても、毎年同じようになるわけではない。

実際に自分でやるようになって、

日々田んぼを見て、考えて、判断している農家さんの存在を、以前よりずっと大きく感じるようになった。


そして、続けることを考え始めた

もう一つ、7月に考えるようになったことがある。

この挑戦を、これからも続けられるのか。

私は最初から、

「赤字になるなら出来ない」

と言っていた。

農機を持たず、作業を委託しながらお米を作る。

経験のない人でも、できるのかをモデル地として確かめたかった。

昨年はできた。

少なくとも、農機を持たなくてもお米を収穫し、赤字にならないところまではたどり着いた。

今年は、私に続く挑戦者も現れたらしい。

でも2年目になって、分かってきたことがある。

作業を委託できても、田んぼを見ることまでは委託できない。

水の変化。

害虫。

漏水。

草。

昨日と違う田んぼの様子。

それに気づいて、判断して、動く人が必要になる。

「やりたい人ができるモデル」

をと思って始めたけれど、

そう簡単ではないのかもしれない。

さらに今年は、お米の価格について不安になる話も耳にした。

実際にどのくらいの価格になるのかは、まだ分からない。

ただ、これだけ手をかけて育てても、収支が成り立たないのであれば、続けることは難しい。

どちらにしても、

考えなければならないところまで来ている。

今年の収穫が終わった時、

収量と費用と、自分が使った時間。

全部をもう一度並べてみようと思う。

その時に、

この挑戦の次の形が見えてくるのかもしれない。


7月を終えて

6月末。

空から見ても、まだほとんど分からなかった稲。

7月末。

二枚の田んぼには、緑が広がった。

きれいに揃ってはいない。

被害もある。

雑草もある。

これから先も、きっと問題は出てくる。

それでも、

あの小さかった稲が、ここまで育った。

だから私はまた田んぼへ行く。

水を見て、

稲を見て、

その日の答えを考える。

育てるって、毎日決めることなんだ。

7月は、そんなことを教えてくれた1か月でした。


今月の出来事は、「とらこの田んぼ新聞」にもまとめています。

7月の出来事をまとめた「とらこの田んぼ新聞」


📰 7月号の田んぼ新聞(Instagram)はこちら
▶︎ https://www.instagram.com/p/Db0UOUhiWeL/?igsi=NTFqamd0cHpxa3Q4

🎥 7月のショート動画まとめはこちら
▶︎ https://youtube.com/playlist?list=PLdgRRxk3UyiM&si=tcvHxSiyNRSuTKw9


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
7月の記録はここまでです。
8月もまた、田んぼへ行って、その日の答えを探していきます。

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Sky Studio Torako この記録や挑戦に、そっと気持ちを添えていただけたら嬉しいです。