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「人生100年時代」の落とし穴——今を生きることの大切さ

「人生100年時代」に惑わされず、今を生きる

「人生100年時代」という言葉が定着しつつある。いつから意識されるようになったのだろうか。おそらく、高齢化が進み、社会保障費の負担が増え、「老後資金は2,000万円必要だ」といった議論が出始めたころだろう。また、医学の進歩によって平均寿命が延び、「健康寿命をどう延ばすか」が課題として語られるようになった時期とも重なる。

では、本当に「100年生きる」ことを前提に人生を設計するのが現実的なのだろうか?

実際、長寿化が進んでいるとはいえ、健康なまま100年生きられるわけではない。年齢を重ねるにつれ、体は確実に変化する。街を歩けば、元気に歩く高齢者もいる一方で、70代で体が思うように動かなくなっている人も多い。平均寿命が85歳まで延びたとしても、その10年前から病気を抱えたり、寝たきりになったりする人は少なくない。つまり、健康で活動的に過ごせる時間は、決して「100年まるごと」あるわけではないのだ。

かつてアメリカの老人介護施設で働いていたとき、人生の最後が必ずしも生き生きとしたものではないことを実感した。どれほど裕福でも、どれほど名声を得ても、人は静かに老いていく。最先端の医療を受けても、老化そのものを止めることはできない。健康寿命を延ばす努力はできるが、完全にコントロールすることは難しいのが現実だ。

だからこそ、「老後のために若いうちに苦労しなさい」という考え方には違和感を覚える。もちろん、将来を見据えることは大事だ。しかし、「老後を楽しむために今を犠牲にする」という価値観が本当に合理的なのかは疑問である。老後に備えることが強調されすぎるあまり、若い時期の楽しみや挑戦が後回しにされる風潮がある。だが、20代には20代の、50代には50代の楽しみ方がある。それぞれの年代でしか味わえない経験があるのに、「老後のために」と今を先送りするのは、むしろリスクではないだろうか。

そもそも、5年後や10年後がどうなっているかは誰にもわからない。であれば、「今できることをしっかりやる」「一日一日を大切に生きる」ことのほうが、よほど確実で意味のある生き方ではないか。なぜなら、人生は最後が良ければそれで素晴らしいとは限らない。きっと、トータルで考えるべきものだからだ。

「人生100年時代」という言葉に惑わされるのではなく、自分のペースで今を楽しむ。そんな生き方こそが、結果的により豊かな未来につながるのではないかと思う。

そして、特に伝えたいのは、子ども時代の大切さだ。子ども時代は、決して将来のためだけの準備期間ではない。むしろ、人生の中でも特別に輝くゴールデンピリオドなのではないか。幼いころに感じた喜びや経験は、大人になってからの幸福感にも大きく影響を与える。もし子ども時代を「将来のための準備期間」と捉えすぎると、その時期ならではの豊かさを失ってしまうかもしれない。だからこそ、子どもたちが「今」を思いきり楽しめる環境を大切にすることが、結果的により良い未来につながるのではないかと考えている。

追記
令和5年(2023年)の簡易生命表に基づく日本人が生きる割合

・男性が80歳まで生きる割合 約 62.2%
・男性が90歳まで生きる割合 約16.6%
・男性が100歳まで生きる割合 約 1.3%

・女性が80歳まで生きる割合 約 81.9%
・女性が90歳まで生きる割合 約34.4%
・女性が100歳まで生きる割合 約 3.7%

80歳まで生きた場合、60歳(初老)からの人生の残り日数は約7300日です。あなたが20歳だとしても、残りは約21900日です。若くして突然亡くなることもあります。どの年齢においても、今をどう生きるかが人生の豊かさに繋がることは言うまでもありません。

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