混ざり季 春/初夏 〜木陰のやすらぎ〜
混ざり季(まざりぎ)とは、辞書には載っていない言葉。
季節が交代する、その境目でだけ起きる微細な混色。冷えとぬくもり、桃色と若草色が、同じ空気にほどける刹那。
桜が咲いて散る時間よりも、もっと短い。
季節が“移る”のではなく、“混ざる”一瞬の美しさを、詩にしました。
それでは、賞味期限の短い特別な景色を――どうぞ、ご賞味ください
私は、木陰にいる時間が好きだ。
ちょうど今くらいの季節。
公園の木の根元に立つと、
冬の名残をかすかに引きずった光が、
目を覚まし始めたみたいに差し込んでくる。
葉のあいだをすり抜けた光は、
地面にやわらかな模様を描く。
風が吹くたびに、陰と光がざわざわと揺れて、
その揺れが、そのまま頬に触れる。
少し冷たくて、少しあたたかい風。
何も主張しないのに、ただ気持ちいい。
日向に出れば、
薄手のパーカーやカーディガンの中に、
うっすらと汗を感じるくらい。
それでもまだ、逃げ場としての木陰がある。
本を開いて、
ページをめくる音だけが、時間を進めていく。
このまま、いつまでもここにいられそうな気がする。
けれど、それも長くは続かない。
やがて空気は重くなり、
風はぬるく、まとわりつくようになって、
日向は、ただ強いだけの場所になる。
だからきっと、今は“休息”なのだ。
季節が移り行く、その途中にだけある、
ほんのひとときのやさしさ。
変わってしまうからこそ、
この時間は、こんなにも心地いい。
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