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混ざり季 春/初夏 〜雨上がりの風〜

混ざり季(まざりぎ)とは、辞書には載っていない言葉。

季節が交代する、その境目でだけ起きる微細な混色。冷えとぬくもり、桃色と若草色が、同じ空気にほどける刹那。

桜が咲いて散る時間よりも、もっと短い。

季節が“移る”のではなく、“混ざる”一瞬の美しさを、詩にしました。

それでは、賞味期限の短い特別な景色を――どうぞ、ご賞味ください


四月の終わり。

昨日の夜から、朝。
学校に着くまで、ずっと雨だった。
強く、迷いのない降り方で、
街の色をすべて濡らしていった。

靴先を気にしながら歩いた通学路も、
空を見上げる余裕はなかった。

それが、お昼休み。

外に出ると、
まるで何事もなかったみたいに、空は晴れている。

光は、もう春のやわらかさを越えて、
「夏に向かうぞ」とでも言いたげな強さで、
地面をまっすぐ照らしている。

それでも、足元には水たまり。
さっきまでの雨が、まだそこに残っている。

空だけが先に進んで、
地面は、少し遅れてついていく。

そのとき、風が吹いた。

ひと筋、強く。

乾ききらない空気をかき分けて、
水たまりの表面を揺らして、
木々の葉を一斉にざわつかせる。

まるで、
春をさらって、そのままどこかへ運んでいくみたいに。

私は立ち止まる。

季節は、静かに変わるばかりじゃない。
ときどき、こんなふうに、
勢いよく背中を押されることもある。

春の名残と、
夏の気配が、
同じ風の中でぶつかって、ほどける。

混ざり季は、
どちらを選ぶかを決めないまま、
ただ、前へ進ませる。

まだ、水たまりは残っている。
でも、空はもう、次の色をしている。


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