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掌篇小説『女心と正月メイク』/シロクマ文芸部/お遊び企画「お正月」

   お正月に恵美にプロポーズしようと思っていた。ところが、突如、ぼくの気持ちは彼女から離れた。夕暮、道を歩いていて、ふと水たまりを見つけた足が何喰わぬ顔で暗く深い水たまりをよけてカーブを描いたように。
「惠美は別人になってしまったのか」
   ぼくの脳裡に、懊悩の森が針葉樹の成長を越え広葉樹が支配を広げるように、出来上がった。森は苦渋に満ちた表情を晒し、恵美は平静を保っていた。
    だが、ぼくには分っていた。
   去年、ぼくたちは、市川の法華寺に初詣に行った。しかし、今年はどうしても成田山に行きたいと我儘をいう。二日に出かけた。参拝客が多すぎて、彼女の顔さえよく見られなかった。しかし帰り道、ぼくはちらりと見た。彼女はアイラインの色を変えたのだ。ぼくの好んだ涼やか黒から、赤味をおびた賑やかなブラックに。それは、ぼくに言わせれば、まるでリオのカーニバルだった。
    二日後、恵美はメールで別れを告げてきた。
     彼女が、勤務先の常務取締役の子息に見そめられ、お正月元旦に見合いをし、結婚に至った経緯を、ぼくは十日後に知った。その息子の課長はブラジル支社から東京本社に戻って来るのだということも。<了>


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