【夫のこと|エピソード16】夫の中の鬼、私の中の鬼〜救うのをやめて、守ると決めた日〜
帰宅した翌日、私は昨夜から
胸に溜まっていた問いを夫に
投げかけました。
義母から聞いた、
あの壮絶な過去の話を。
話し始めた瞬間から、
彼の顔は明らかに歪んでいきました。
全身から溢れ出す「聞きたくない」という拒絶のオーラ。
それでも、知ってしまった以上、
このまま「普通」を装い続けることはできなかった。
私は彼の言葉が気持ちが聞きたかった。
私の話が終わると、
彼は吐き捨てるように言いました。
「この話はしたくはない」
「最低の親だから。嫌いなのは変わらない。ただ、孫には会わせてあげたいと思っているから、連れて行っているだけだ」
とても冷たい、怒りに満ちた声。
その言葉を最後に、彼は
自分の心のシャッターを
下ろしてしまったように見えました。
同じ毒親の被害者でも、
私は「向き合うこと」で
自分を変えようとし、
彼は「切り離すこと」で
自分を守ろうとしている。
それは決して間違いじゃない。
ただ、その決定的な違いが、
私たちの間に深い溝を作りました。
(同じ……毒親の被害者なのに)
彼の中に、自分と同じ痛みを
見つけられると思っていたのかも
しれません。
わかりあい、手を取り合って
「自分たちは連鎖を止めよう」と
言い合える幸せな未来を、どこかで
期待していた。
けれど、現実はちがいました、
夫の変化は加速し、家の中には、
二人の夫が同居するようになりました。
子供たちを慈しむ「優しいパパ」の顔。
そして、かつての義父を彷彿とさせるような、理不尽に子供を怒鳴りつけ、威圧する「毒親」の顔。
その落差は、子供が成長するほどに激しさを増していきました。
あまりに理不尽な理由で子供を
追い詰める夫に、私はたまらず
詰め寄ったこともあります。
『あなたは、一体どんな父親になりたいの?』
『自分がされたことを子供にする親になるの?』
彼は何も答えず、ただ冷たい沈黙が
続くだけでした。
(この人には、もう私の言葉が
届かないのかもしれない……)
失望と、諦めと、やりきれない思い。
複雑な感情の中で過ごしたある日、私はある決意を固めました。
夫が子供を傷つける側へと回って
しまうのなら、せめて私だけは、
何があってもこの子たちの味方でいよう。
夫の理不尽から、この子たちを
守れるようになろう。
親からの愛は、二人からもらうのが一番なのはわかっている。
でも、それが叶わないのなら。
私だけは、
私が母から一番欲しかった愛を、
この子たちに渡そう。
私は夫を救おうとするのをやめました。
一人で子供たちを守るため、
夫の中の鬼と、
そして
私自身の中に潜む鬼と戦う。
そう、覚悟を決めました
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