秋の乾燥で頬がつっぱるのはなぜ、30代女性が湿度計を置いて分かった保湿の順番
九月に入って一週間ほどしたころから、朝、顔を洗ったあとに頬がつっぱるようになった。両手で頬を押さえて、化粧水を手に取るまでの三十秒がもたない。夏のあいだ、こんなことはなかった。
六月にデパートのカウンターで肌診断を受けたとき、水分が足りていないと言われている。冷房の部屋で乾いている、と。だから乾いていること自体は知っていたはずなのに、夏の朝はつっぱらなかった。九月になって急に、という順番が分からなかった。肌が変わったのか、三十歳になった年の秋だからか。最初に浮かんだのはそのふたつで、どちらも根拠がない。
最初にやったのは、化粧水を足すことだった。夜の化粧水を二度づけにして、朝もいつもより多めに手に取った。三日続けて、朝のつっぱりは変わらなかった。足しても戻らないなら、足りないのは化粧水ではないのだと思った。
肌ではなく、空気だった
調べた。化粧品の広告ではないところで読みたかったので、済生会のサイトにあった秋・冬の肌トラブルのコラムを開いた。書いてあったのは三つで、湿度が低下する秋から冬にかけては皮膚が乾燥しやすいこと、角質層の水分量が三十パーセントを下回ると肌が乾燥すること、その水分の約八割を守っているのがセラミドという角質細胞間脂質であること。それから、室内の湿度を六十パーセントくらいに保つことを勧めていた。
読んで、私は自分の部屋の湿度を知らない、と気づいた。六年住んでいて、温度は気にしていたのに、湿度を数字で見たことが一度もない。夏は冷房を除湿で回していたし、湿気が多いのは肌で分かった。秋になって、その湿気が抜けたことを、私は頬で先に知って、数字ではまだ知らなかった。
湿度計を買った( https://a.r10.to/hPdSw0 )。九百九十九円。手のひらに収まる大きさで、温度と湿度が並んで出る。届いた日の夜、机に置いて見たら四十七パーセント。翌朝は四十四だった。コラムが勧める六十からは、十五以上も下にいた。正直に書くと、この数字がどのくらい正確なのかは分からない。二台並べて比べていないから。ただ、朝と夜で三下がる、加湿器を置くと十上がる、という動きは見えるので、私の部屋の中で比べるぶんには足りている。マイナスは、数字が見えると見すぎることで、最初の二日は一時間おきに机の端を見ていた。
湿度が分かった時点で、疑問はほとんど解けていた。肌が急に弱くなったのではない。夏のあいだ空気に含まれていた水分が、九月に入って減った。頬は同じ頬で、周りの空気が変わった。三十歳だから、という説明は、少なくとも今回は要らなかった。
六月にカウンターで言われた水分不足は、冷房の部屋の話だった。あのときは冷房の風が当たる場所を変えて、夜の美容液を一本足した。今回は空気の水分そのものが減っていて、足す先が肌ではなく部屋になる。同じ「水分不足」でも、原因が違えば戻す場所が違う。六月と九月で、私は同じ言葉を二回聞いて、二回とも別のことをすることになった。
戻したのは、部屋の湿度
いちばん先に変えたのは、肌に塗るものではなくて、部屋のほうだった。加湿器を置いた( https://a.r10.to/hPrVir )。三千九百八十円。卓上の大きさで、上から水を入れる。1Kなので寝室も机も同じ部屋で、夜はベッド脇の棚に、在宅の日の昼は机の隅に移す。置いた夜の湿度は五十六、翌朝は五十三だった。六十には届かないけれど、四十四よりは、ずいぶん近い。
マイナスもある。水は二日に一回入れることになって、タンクを洗う手間が増えた。それから机の隅に置くと、朝、その周りの紙が少し湿る。手帳は反対側の端に移した。置き場所が決まるまでに三日かかった。
六年間、この部屋の空気に手を入れたことがなかった。温度はエアコンで動かしていたのに、湿度は季節に任せていた。夏の除湿は、湿度を下げる方向にしか使っていない。上げる方向の道具を、この部屋は一つも持っていなかった。湿度計を机の端に置いたままにして、見るのは寝る前に一度と朝に一度だけ、と決めた。一時間おきに見ていた二日間で分かったのは、数字は見るたびに変わるのに、頬のつっぱりは朝にしか出ない、ということだった。見る回数を減らしたら、数字のほうが意味を持ち始めた。
肌に塗るもので変えたのは二つで、外したものが一つ。
外したのは、朝の洗顔料。夏の朝は皮脂が気になって、洗顔料で洗ってから化粧水にしていた。八月にクレンジングをジェル一本にしたときも、朝はそのままだった。九月からは、朝はぬるま湯だけにした。頬がつっぱるのは洗ったあとの三十秒で、そこで落としていたのは皮脂ではなく、夜のあいだに戻っていた水分のほうだったのだと思う。ぬるま湯だけにして二日目の朝、つっぱりが軽かった。三日目はなかった。四日目は少しあった。消えたとは、まだ言わない。洗顔料の容器は捨てていない。出社の日の朝、日焼け止めを厚く塗る前に使うことはある。外したのは毎朝の習慣のほうで、物のほうではない。
戻したのは、夜の化粧水。ハンドプレスに五分かける、というやり方は二十七歳のころから変えていない。変えたのは中身で、セラミドが入っているものにした( https://a.r10.to/h54uNx )。二千五百円、百ミリリットル。無香料で、とろみが少ない。正直なところ、つけた瞬間の「効いている感じ」はほとんどない。手に取ると水に近くて、五分押さえているあいだに入っていくのが分かるだけ。百ミリリットルは、五分の量だと一か月半くらいで終わると思う。
もう一つ戻したのは、朝の頬だけに塗るクリーム( https://a.r10.to/h5oQdQ )。二千四百円で、二十五グラム。スクワランのもので、指先に米粒ほど取って、頬の高いところだけに伸ばす。朝の化粧水のあと、日焼け止めの前。夜はナイトリペアからクリームまで工程があるので足さず、朝の、いちばん乾く時間だけに足した。マイナスは、二十五グラムが小さいこと。指で取るタイプで、朝の急いでいるときに蓋を開けるのが少し面倒。
夏に減らしたものを、増やしたのではない
八月に、スキンケアを引き算した記事を書いた。九日間の休みに、クレンジングを一本にして、化粧水を一本にして、美容液とクリームを棚で待たせた。あのときの向きは「落とすものを減らす」で、今回の向きは「水分を戻す」だ。反対に見えるけれど、私の中では続いている。夏に減らしたのは、肌に必要のなかった工程で、今回戻したのは、空気が持っていかなくなった水分のほう。増やしたのではなく、季節に持っていかれたぶんを、部屋と朝の頬に戻した。
一週間の記録は、こうなった。朝のつっぱりは、七日のうち三日がなくて、二日が軽くて、二日は変わらず。湿度は夜に五十五前後、朝に五十二前後。加湿器を置く前の四十四に戻った日は、水を入れ忘れた土曜だけ。
七日のうち変わらなかった二日は、どちらも前の晩に湯船に長く浸かった日だった。関係があるかどうかは、まだ分からない。九月の終わりまで、湿度と朝のつっぱりを手帳の端に並べて書いてみる。自炊の時間と寝た時刻の隣に、もう一列増える。数字を並べておけば、来年は化粧水を二度づけしていた三日を飛ばせる。
四つで九千八百七十九円。化粧水を二度づけしていた三日間、私は自分の肌を疑っていた。湿度計の九百九十九円で分かったのは、肌のほうは何も変わっていないということだった。
頬がつっぱるのはなぜ、という疑問に、私は最初「年齢」と答えかけた。答えは湿度だった。これから毎年、九月の第二週にこの数字を見て、加湿器の水を入れ始める。年齢のせいにする前に、机の端の小さい画面を見ればいい。それだけのことが、三十歳の秋に分かった。
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