見出し画像

「バーテンダーとお客さんの絆」

昼前に、古いお客さんから電話がかかってきた。

バーテンダー見習いの頃からのお付き合いだから、もうかれこれ35年になる。



「〇〇病院に来てんねんけど、昼飯食べへんか?」



その病院は店のすぐ近く。

行きたかったけど、あいにく急ぎの鍵作成が入っていて「店から離れられないです💦」と答えた。



すると――

「んじゃ、ちょっと顔出すわ」



そう言って、お店まで来てくれた。




もう70歳になる社長さん。


これだけ長い付き合いになると、もはや“お客さん”というより“身内”のような感覚だ。



病院に行っていたというから心配して根掘り葉掘り聞いてみたけど、今回は大したことがなくてホッとした。

何年か前に脳梗塞で倒れているから、余計に気になる。



自分が年を重ねるのと同じように、お客さんもまた歳を重ねていく。

バーテンダーという仕事柄、35年も顔を合わせ続けるということは、それだけ長い間お酒を飲んできたということでもある。



知り合った頃は、夕方からウイスキーストレートを何杯か飲んでミナミの街へ。

そして夜中にまた当時働いていたバーに帰ってくる。

ほぼ毎日そんな生活だった。



――そりゃ身体にガタもくる。




そんな事をリペアショップで話していると、店の前に自転車が止まった。



おじさんがチラッとこちらを見て、前の八百屋へ入っていく。



「おい、あいつ前の八百屋に行くのに、あんなとこに自転車止めていったぞ」

「入ろうと思ったけど、誰か居たから先に八百屋に行っただけですよ💦」

「ほんまか?怒ってきたろか?」

「大丈夫ですって💦」



どうして仲良くなる人って、揉め事を好む人ばっかりなんだろう…。



案の定、八百屋から出てきたおじさんはうちの店へ入ってきた。

鍵を作りに来たらしい。



「ね?言った通りでしょ?」

「…すまん。商売の邪魔してるかな?」



怒ったり凹んだり、相変わらず忙しい人だ。

全然気にしなくていいと伝えて、検査の時間まで他愛もない話をした。



ほんとに優しい人。

ただ……歳も歳だし脳梗塞の既往もあるんだから、いい加減に穏やかになって欲しい。

簡単に血圧上げるんじゃない。

心配するやろが。




検査を終えたあと、バーにも寄ってくれた。



「昼間は悪かったな。ちょっと飲んで帰るわ」



昔から変わらない。

頼むのはいつもブラントンとマッカラン。



あぁ、やっぱりこの人らしいなと思った。



幸せな時間をありがとうございました。

どうか、いつまでも元気でいて下さい。

いいなと思ったら応援しよう!

きんや この記事があなたのどこかに残るなら、これ以上の喜びはありません。読んでいただきありがとうございます