圧縮と解凍
資料作り
先日、チームで蓄積してきた定性データを(無理やり)定量的に変換し、それを基にして課題の洗い出しをするという難易度高めの資料を作っていた。
一旦、仮の完成版まで持っていけたので、クライアントに見せたところ「もっと簡潔にならんの?」と言われた。まあよくあるお話だ。
もちろん、短い資料は良い。
それはボクも異論はないけれど、短いことでわかりづらくなってしまう資料も多い。
文章を短くするということは、情報を「圧縮」するということだ。
たとえば「戦略」という言葉の意味は「特定の目的を達成するために、中長期的な視野で人やモノなどの資源をどう使うかを決める大方針や全体計画のこと」だ。だがそれを全部説明すると長くなるから、ボクたちは「戦略」という二文字に圧縮する。
そして、圧縮した情報は「解凍」しなければ正しく読み出すことができない。資料の厄介なところは、部分的に圧縮してあるところと、圧縮してないところがあることだ。そして、どこを圧縮するかはだいたい立場の強い人が勝手に決め、立場の弱い側は圧縮されているところを自分で探し当てなければならない。
コンテクスト
圧縮が上手くいくためには条件がある。
それは、送り手と受け手のコンテクストがある程度共有されていることだ。
ここで言うコンテクストとは単なる「文脈」という意味合いだけじゃなく、その人が持っている知識や経験、これまでの経緯、置かれている環境、人間関係、暗黙の前提など、さまざまなものを含む。
つまり、言葉を使うときには、どんな人に向けて発する言葉なのかによって、どこまで圧縮するかを調整しなければならない。
件のクライアントは、それを考えずに自分だけのコンテクストで「短く=圧縮」してほしいというからこちらが困ったのだ。ボクは(彼のコンテクストを知らない)外部の人が読む想定でその資料を作っているからだ。
文字化け
コンテクストは、圧縮ファイルを解凍するためのソフトウェアのようなものだ。
いつだって圧縮は一方的だ。
送る側が圧縮し、受け取る側がそのファイルを解凍する。
送り手がどんなフォーマットで圧縮したのか教えてあげないと、受け手は上手く解凍することができない。
つまり、送り手が圧縮した情報を、受け手が同じように解凍できるとは限らないのだ。そしてややこしいことに、文章はセンテンスによって圧縮フォーマット(コンテクスト)が異なっていたりする。
そしてもっとややこしいことに、フォーマットが異なるのに解凍できてしまったりする。読めてしまう程度に文字化けして。
会社では、立場が上の人ほどこれが起きやすいように思う。
だいたい上司ってのは、自分が持っているコンテクストを部下に説明しない生き物だ。そして、部下も自分と同じ解凍ソフトを持っていると思い込む生き物だ。
簡潔に伝えること
上司(やクライアント)が思っているような資料を作るのは難しい。
それは、依頼主の圧縮フォーマット(コンテクスト)とその資料を読む人の圧縮フォーマットと、そして作成者自身のフォーマットを合わせなければならないからだ。
依頼主と作成者のフォーマットが合っていないと「もっと簡潔にならんの?」になるし、依頼主と資料を読む人のフォーマットが合っていないと変な文字化けが起きる。
簡潔に伝えることは難しい。
しかしその要因は、多くの場合(立場の上の人が)「自分と相手が同じ解凍ソフトを持っていると思い込んでいる」ことから来るのだ。
