【読書記録 -177】メンタルが強い人がやめた13の習慣
「やめた」ではなく「しない」
ボクはメンタルが弱い。
すぐくよくよするし、他人に発してしまった一言や、周囲の人の何気ない反応などをいつまでも覚えている。混雑しているお店や電車が苦手で、隙あらば自分の部屋に籠ろうとする。
にもかかわらず、会議などでは他人の意見に同調せず、正論で突破しようとする。自分が正しいと信じることをなかなか曲げようとしない。
ボクはそんなメンタルともう数十年にわたって付き合っている。
さて、本書『メンタルが強い人がやめた13の習慣』は、ブックオフで購入した本だ。価格は242円。

著者のエイミー・モーリンは、アメリカの心理療法士だ。そして、多くの心に悩みを抱える患者と向き合ってきただけでなく、モーリン自身も母親や夫との死別を経験している。
ブックオフの書棚で本書の背表紙を見たとき、ボクはこの本を「(13の習慣をやめることで)メンタルが強くなる方法を紹介した本」かと思って手に取った。
しかし、読み進めていくと印象が違うことに気が付いた。
この本には、メンタルを強くするための方法は書かれていない。書かれているのは「メンタルが強い人がしない13のこと」だ。
それは、原題を調べてみるとわかる。
『13 Things Mentally Strong People Don't Do』
「足す」のではなく「引く」
多くの自己啓発書は、何かを「足す」ものが多い。
今の自分に何かを足して、理想の自分へ近づいていこうと啓発するものだ。
将来の目標を持とう。
仲間を作ろう。
成功体験を積み重ねよう。
しかし、モーリンのアプローチは逆だ。
メンタルが強い人が「何を足しているのか」ではなく「何をしないのか」を見ているのだ。
ボクはオペレーションを最適に保つための最善の方法として「5S」を挙げることが多い。この「5S」の考え方はビジネスだけでなく、日常生活やメンタル維持にも非常に役立つプロセスだ。
5Sで最初にすることは「整理」だ。
整理とは、必要なものと不要なものを分け、不要なものを捨てることだ。
つまり、最初にやるべきことは「足す」ことではなく「引く」ことなのだ。
個人の頭の中を5Sする
まずやるべきは、自分でコントロールできることと、コントロールできないことを分けることだ。そして、自分ではコントロールできないことへの執着を捨てるのだ。
過去の経験まで捨てる必要はない。
過去への執着は捨てても、そこで得た経験は、必要なときに取り出せるように「整頓」しておけばいい。
本書には心理学の研究だけでなく、ミルトン・ハーシーやリチャード・ブランソンなど、さまざまな人物のエピソードが登場する。それはかなりの量だが、だいたい心理学とは関係なさそうに見えるものばかりだ。
それは、著者のモーリンが自身の過去の知識や経験を(捨てるのではなく)「整頓」し、Indexを付け、必要なときに取り出せるようにしているからだろう。
そう考えると、個人における5Sはこんなふうになるだろう。
整理=コントロールできないものへの執着を捨てる。
整頓=経験や知識を取り出しやすく並べる。
清掃=並べたものにIndexを付ける。
清潔=保存したり取り出したりするルールを決める。
しつけ=その状態が維持されているかCheckする。
本書を読んでいるとそんなことを感じる。
観察から始まるCAPD
もうひとつ、ボクはオペレーションの最適解を出す際に「CAPDサイクル」を回すことを勧めることが多い。
「CAPDサイクル」とは、一般的に言われる「P(Plan)→D(Do)→C(Check)→A(Action)」をPlanから始めるのではなく、Checkから始めようというフレームワークだ。まず、今起きていることを観察することによってActionが決まり、Actionが決まることでPlanが見えてくる。そうすればDoがスムーズに動き始める…そんな考え方だ。
モーリンは本書を書くにあたり、最初に「理想のメンタルの人」を設定したわけではない。自分自身の経験や心理療法士として多くの人と向き合ってきた中で、人を観察するところから始めている。
つまり、彼女はC→A→P→Dをやっているのだ。
まず、今起きていることを観察し、そこから(何を足せば理想の自分になれるのかではなく)「何が今の自分を邪魔しているのか」を考え、「それを取り除くためのAction」を構造化しているように見える。
実際、本書の13項目を眺めてみると、一般的な自己啓発書とは少し違う方向を向いているものがある。
「リスクを取らない習慣」をやめる。
失敗しないようにリスクを避けるのではなく、感情的な怖れと実際のリスクを分け、冷静に評価したうえで行動する。
「過去を引きずる習慣」をやめる。
過去は変えられない。そこにとどまり続けるのではなく、経験から学び、現在に戻ってくる。これはボクが考えるマインドフルネスにも近い。
「孤独を恐れる習慣」をやめる。
「仲間を作ろう」「人とのつながりを増やそう」と言われることが多い中で、一人で過ごす時間を避けず、自分自身と向き合うことを勧める。
「すぐに結果を求める習慣」をやめる。
変化には時間がかかる。すぐに成果が出ないからといって、やめてしまわない。これはボクが考えている「700日理論」にも通じる。
一見すると、まったく違うことを言っているように見えるけれど、そこには共通するものがある。
未来ではなく、今をコントロールする
過去に起きたことは変えられない。
未来に何が起きるのかもわからない。
他人がどう行動するのかも決められない。
そして、努力の成果がいつ現れるのかも、自分では決められない。
どれも自分でコントロールできないことだ。
モーリンが本書で主張しているのは「自分で手綱を握れないものに惑わされてはいけない」ということなのではないだろうか。
未来の成功が保証されるまで待つのではなく、今、取れるリスクを取ろう。過去を現在まで引きずるのではなく、経験として整頓しておこう。いつ成果が出るのかを気にするのではなく、今日できることを積み重ねよう。
自分で手綱を握れるのは「今」だけだ。
だから、今の自分を受け入れ、今、自分でコントロールできることに集中するしかない。
それがモーリンの考える「メンタルの強さ」なのだろう。
参考リンク
Amazon:メンタルが強い人がやめた13の習慣
