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なぜ産科医が、物語を書くのか


産科医をしていました。  
名前も、勤め先も、ここには書きません。
代わりに、数字をひとつだけ。
これまで、七千回以上、人が生まれる瞬間に立ち会ってきました。

立ち会うたびに、決めていたことがあります。
生まれた子に、最初の「はじめまして」を言うのは、医者ではなく、
お母さんであってほしい、ということです。
だから私は、七千回以上、その言葉を譲ってきました。
譲った側の記憶は、あまり語られません。
カルテにも、残りません。

その代わりのように、手紙をいただいてきました。
診察室で。
退院の日に。
何年も経ってから、ふいに。
数えてみたら、五百通を超えていました。
夜中に読み返すと、そこには、
医学書に載っていないことばかり
書いてありました。
うれしかった朝のこと。
挫けそうだった夜のこと。
言えなかった本音のこと。

この手紙たちを、私ひとりの引き出しにしまったまま終わらせるのは、
違う気がしました。
それが、産科医が物語を書く理由です。

これから、ここで、ふたつの物語を連載します。

どちらも、実体験に基づく創作――
フィクションです。
登場する患者さんも、出来事も、特定の
誰かではありません。
何人もの記憶と、五百通の手紙と、七千回の朝を、ほどいて、編み直したものです。
事実そのものではなく、事実の中にあった体温だけを、持ってきました。

ひとつめは『七千回の、はじめまして』。
医者の側から見た物語です。
毎週月曜、朝七時に。  
ふたつめは『院長先生、朝のお話です』。
ベッドの側から見た物語です。
切迫早産で入院したひとりの女性が、
毎朝、食堂で院長の少し変な話を聞くところから始まります。全十一話。
毎週木曜、朝7時に。
こちらは、最後まで、ずっと無料で置いておきます。
挫けそうな朝に、何度でも読み返してもらうためのものだからです。

週に二度、朝を届けます。
月曜の七時と木曜の七時。
フォローしておいていただくと、
その朝に、届きます。

朝は、必ず来ます。
それだけは、七千回、確かめてきました。

#七千回のはじめまして #産科医 #朝は必ず来る #エッセイ #院長先生朝のお話です #南そら

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