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小説『魔法少女なんてごめんですけど!』 第6話

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第6話 二匹の正体なんて知りたくないんですけど!


 銀行強盗事件から一週間後。
 珍しく早めに仕事が終わった金曜の夜、芽衣子は自室の床に座り、正面に浮かぶ二匹を睨みつけていた。

「……いい加減、ちゃんと話してもらいましょうか」
「話ってなにッピ?」
「ボクらの正体ッポ?」

 芽衣子はため息をつきながら言った。

「銀河のはるか彼方から来たとか、悪の組織を追ってきたとか……本当のところを聞きたいの」

 ピーとポーは顔を見合わせ、珍しく少し神妙な面持ちになった。

「仕方ないッピ……ここまで来たら話すッピ」
「メイコには知る権利があるッポ」

 二匹はくるくる回りながら、語り始めた。

「ボクらは銀河連邦の特殊捜査機関所属だッポ! 悪の組織『ダーク・ネビュラ』を追って、何十もの星系を渡ってきたのッピ!」
「で、地球に来たきっかけは?」

 すると二匹は急に生き生きとし始めた。

「それが大事件だったッピ! 五十年前、アタシたちがこの星の大気圏に突入した瞬間、地上でものすごい光と爆発が起きたのッピ! 夜空が真っ昼間みたいに明るくなって、巨大な雲みたいなのが上がってたッピ! 絶対にあの組織の新型兵器のテストに違いないと思ったッピ!」

 いつもより饒舌に語るピーに、追随するポー。

「そうそう! ボクも見たッポ! とんでもないエネルギー反応があったッポ! だから間違いなく『ダーク・ネビュラ』が地球に潜伏していると確信したんだッポ!」

 しかし、二匹の語った話は――芽衣子は無言で二匹を見つめた。

(……それって水爆実験……? いや、時期的に水素爆弾の実験か……)

「戦略的爆発ッピ!」
「そうそう! 組織の新しい兵器実験に違いないッポ!」

 完全に盛っていた。
 ピーとポーはさらに勢いづいて続ける。

「それからすぐに、戦える現地人を探し始めたッピ! でも、なかなかオーラの強い人が見つからなくて……五十年間、ずっと探し続けてきたんだッポ……」
「日本に来てからは特に大変だったッピ! オーラが強い人はいるんだけど、みんな『忙しい』とか『面倒くさい』とか言って協力してくれないのッピ!」

 芽衣子はこめかみを押さえた。

「……それって、完全に私のことじゃん」
「メイコは特別だったッピ! 今までで一番強いオーラを持ってるッピ!」
「だから全力で説得したッポ!」

 芽衣子はこめかみを押さえたまま叫んだ。

「説得じゃなくて強制でしょ!」

 二匹は揃って頰を膨らませた。

「メイコが協力してくれないと、地球が危ないんだッピ!」
「組織がいつ大規模な作戦を始めるか分からないッポ!」

 芽衣子はこめかみから手を放し、虚ろな目で二人を見た。

「……で、結局」

「うんッピ?」
「どうしたのッポ?」

 芽衣子は静かに、しかしはっきりと言った。

「その『悪の組織』って、本当に地球にいるの? 五十年以上探して、表立った動きもなし……もしかして、最初からいなかったんじゃないの?」

 ピーとポーは一瞬固まり、慌てて否定した。

「そんなことないッピ! きっと近くに潜んでるッピ!」
「メイコがもっと強くなれば、組織も恐れて姿を現すはずだッポ!」

 芽衣子は天井を仰いで、深い深いため息をついた。

「……いつまで魔法少女を続けろって言うの。私はもう、本当に限界なんだけど」

 部屋には、いつもの叫び声ではなく、重く長いため息だけが残った。
 ——ピーとポーの正体を探った夜は、芽衣子の受難リストの項目を、また一つ増やしただけだった。

 

 その夜、ニュース速報が流れた。

『謎の黒い光、県内上空で観測』

 ピーとポーが同時に固まった。

「……今の、ダーク・ネビュラの反応ッピ?」
「いや、たぶん花火ッポ。ヤツら、そんな簡単に正体を出さないッポ」

 ポーの言う通り、花火だ。
 なんと言おうと花火だ、と芽衣子は祈る。

「……頼むから花火であって」


終わり


芽衣子の疲労が大きいので、ここで終わりにします。
…というのは嘘で、強制的に魔法少女にされたOL、マスコットキャラ。
そして、一向に出てこない敵に振り回されるという話です。

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