小説『魔法少女なんてごめんですけど!』第4話
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第4話 休み中の魔法少女なんてごめんですけど!
黒薔薇のメイとして三度も無理やり出動させられてから、初めての休日。
朝霧芽衣子・二十四歳は、ベッドの中で天井をぼんやり見つめながら決意した。
「……今日は絶対に外に出ない。面倒ごとには関わらない。変身もしない」
そのために昨日、ネットスーパーで食材を注文しておいた。
外に出れば、またピーとポーに変なところでオーラを見つけられて強制変身——そんなリスクを避ける作戦である。
午前十時。インターホンが鳴り、ネットスーパーの荷物が届いた。配達員になけなしの笑顔で対応し、荷物を受け取る。
「ふふ……これで今日は家でゆっくり料理できる」
珍しくエプロンを着け、キッチンに立った芽衣子は上機嫌だった。
普段はろくに料理をしないが、出来ないわけではない。作る気が起きないくらい、疲れていたのだ。
久しぶりに丁寧に野菜を切っていると、後ろからいつもの声が聞こえてきた。
「メイコ、今日はご飯作ってるのッピ?」
「ボクも手伝うッポ!」
「……手伝わなくていいから、そこで大人しく浮いてて」
しかし二匹は言うことを聞かない。
キッチンの上をふわふわ飛び回りながら、興味津々で鍋を覗き込む。
「すごいね、メイコ! 包丁とか上手に使ってるッピ!」
「ピー、うるさい」
「フルネームで呼んでほしいんだけど……ピーナ・ピーアス・ピーパルクって呼んでほしいッピ!」
「うるさい。今日は休みなんだから静かにして」
「メイコは冷たいッポ。秘密を共有している仲なのにッポ」
「……うるさい。三枚におろすぞ」
芽衣子は包丁を突きつけながら脅すと、二匹は「ピッ!」「ポッ!?」と鳴いて、後退りした。
その様子にため息をつきながらも、久しぶりに煮物と焼き魚、味噌汁を作り始めた。
音楽を小さく流し、料理に集中していると、少しだけ心が落ち着いてくる。
ただ、二匹は相変わらずだった。
「メイコのオーラ、今日はちょっと優しい色してるッポ」
「この煮物、いい匂いッピ! 味見させてッピ!」
「ダメ。熱いから。……ていうか、あんたたち食べられるの?」
「食べられないけど、雰囲気は味わえるッポ!」
完全に意味不明だった。
改めて聞かなかったことにして、料理を再開した芽衣子だった。
昼過ぎ、ようやく料理が完成した。
テーブルに並べたご飯を前に、芽衣子は小さくガッツポーズをした。
「久しぶりのまともな食事……生き返る……」
しかし箸を手に取った瞬間——
「メイコ、ボクにも少しだけ見せてッポ!」
「アタシもッピ! すごいオーラが出てるッピ!」
二匹が鍋やお皿の周りをぐるぐる飛び回り、邪魔しまくる。
芽衣子は箸を置いて、深い深いため息をついた。
「……あんたたち、本当に疲れないの? 私はもう限界なんだけど」
「メイコが元気になるのがボクらの喜びだもんッピ!」
「今日も『黒薔薇のメイ』として活躍してほしいッポ!」
「今日は活躍しない。絶対にしないから!」
結局、食事中も二匹に『黒薔薇のメイ』と連呼されながら、芽衣子は一人でご飯を食べた。
食後、ソファに座ってぼんやりテレビを見ていると、ピーとポーが左右から寄ってきた。
「メイコ、今日は本当に変身しなくていいのッピ?」
「静かな一日でいいのッポ?」
芽衣子はクッションを抱きしめながら、力なく微笑んだ。
「……たまには、こういう日があってもいいでしょ。私はただのOLなんだから。魔法少女なんか、なるつもりなかったんだよ」
二匹は少し沈黙した後、珍しく優しい声で言った。
「わかったッピ……今日はゆっくり休んでね」
「でも、もし何かあったらすぐ呼んでねッポ」
その言葉に、芽衣子は少しだけ胸が温かくなったような気がした。
——でも、次の瞬間。
「やっぱりフルネームで呼んでほしいッピ!」
「……やっぱりウザい」
芽衣子はクッションで顔を隠しながら、小さく笑った。
魔法少女なんて、ごめんだけど。
でも、今日だけは……少しだけ、この二匹(?)も悪くないかも、と思った休日だった。
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