天邪鬼な猫が毒舌解説🐱 技術士第二次試験 R3 II-1-2「宇宙機のトライボロジー」|0301 航空宇宙システム
科目コード:0301 航空宇宙システム
#1 吾輩🐱は令和を生きる、天邪鬼な猫である【無料】
吾輩は令和を生きる、天邪鬼な猫である。
明治の文豪が書いた、あの有名な猫と一緒にされたくはない。
だが、十二支に入れなかったことだけは、いささか心残りである。
まあ、よい。
鼠のごとき小賢しい輩と同列に並べられるより、
こうして高みから人間どもの滑稽な営みを眺めているほうが、吾輩の性には合っておる。
さて。
今日も今日とて、人間どもは「技術士」の称号を求め、頭を悩ませているらしい。
しかも今回の相手は、
宇宙で動く機械の「擦れ」である。
空気もほとんどなく、温度も厳しく、地上とはまるで勝手の違う場所へ機械を送り込んで、
「なぜ歯車が擦れるのか」
「なぜ摩耗するのか」
「どうすれば長く動くのか」
と頭を抱えておる。
自分から宇宙へ機械を放り込んでおいて、実に忙しい生き物よ。
#2 今回の人間の悩み――技術士第二次試験 R3 II-1-2【無料】
今回の題目は、これである。
宇宙機器に関わるトライボロジーの概要について、真空トライボロジーとの差を明確にしつつ説明したうえで、宇宙環境において曝露状態で使われる機構部品に用いられる代表的な潤滑剤の種類とその特徴をまとめ、選定に当たっての留意点を述べよ。
なるほど。
人間どもが問われているのは、単に、
「油を差せば滑ります」
という話ではない。
宇宙という特殊な環境で、
何が摩擦や摩耗を引き起こすのか
どのような潤滑方法があるのか
何を基準に潤滑剤を選ぶのか
を説明せよ、という問題である。
つまり、
「宇宙で機械を動かすなら、どうやって擦れと付き合うのか?」
という話だ。
猫からすれば、
「そもそも宇宙へ持っていかなければよいではないか」
と言いたいところだが、それでは試験にならぬ。
#3 そもそも「トライボロジー」とは何ぞや【無料】
「トライボロジー」などという難しげな名前を付けているが、恐れることはない。
ざっくり言えば、
摩擦・摩耗・潤滑など、接触して動く表面の現象を扱う学問・技術分野
である。
たとえば自転車のチェーンを考えてみよ。
金属同士が動けば、擦れる。
擦れれば、摩耗する。
摩擦が大きければ、動かしにくくなる。
そこで油などを使って、摩擦や摩耗を抑える。
これが、身近なトライボロジーである。
ところが人間は、この機械を宇宙へ持っていこうとする。
すると話が面倒になる。
地上では空気があり、温度も比較的扱いやすく、潤滑剤の選択肢も多い。
しかし宇宙では、そう簡単にはいかぬ。
#4 真空トライボロジーと宇宙機器のトライボロジーは同じではない【無料】
ここが今回の問題の肝である。
「宇宙=真空なのだから、宇宙トライボロジーと真空トライボロジーは同じだろう」
と思った者。
残念ながら、人間らしい早合点である。
真空中では、地上の大気中とは異なる摩擦・摩耗現象が生じる。
たとえば、潤滑剤の蒸発や材料表面同士の凝着などは重要な問題となる。
しかし実際の宇宙機は、
「真空の箱」に入っているだけではない。
宇宙環境では、ミッションや軌道によって、
温度変化
放射線
原子状酸素
紫外線
微小重力などの環境
長期間の曝露
打上げ時の振動や衝撃
周辺機器へのコンタミネーション
など、複数の条件を考えなければならぬ。
つまり、
真空トライボロジーは重要な土台だが、実際の宇宙機器では、それに宇宙環境特有の条件が重なる。
ここを押さえておくのだ。
#5 宇宙で機械を動かすと、何が困るのか【無料】
宇宙空間に機械を出せば、当然ながら、
「空気中で使っていた機械を、そのまま持っていけばよい」
とはならない。
潤滑剤についても同じである。
地上で問題なく使えた油が、宇宙でも同じように使えるとは限らない。
温度が変われば粘度や流動性が変わる。
真空では揮発成分の挙動が問題になる。
材料との相性が悪ければ、摩耗や凝着を招くこともある。
さらに厄介なのが、
潤滑剤そのものが、周囲の機器を汚してしまう可能性
である。
例えば近くに光学センサやカメラなどがあれば、揮発した成分や摩耗粉が付着し、性能に影響する恐れがある。
人間どもは、
「機械を滑らかに動かしたい」
と言いながら、
「そのために使ったものが別の機械を壊す」
という、実に人間らしい二重苦に悩まされるのである。
#6 宇宙用の潤滑剤は、大きく二つの考え方で見る【無料】
さて、いよいよ潤滑剤である。
宇宙環境で曝露される機構部品では、大きく考えれば、
固体潤滑剤
と
液体潤滑剤
という二つの方向がある。
もちろん実際の設計では、材料、機構、温度、荷重、速度、寿命、環境などを踏まえて、より細かく検討する。
だが、試験問題を理解する入口としては、この二つを押さえておけばよい。
では、まず乾いたほうから見てみよう。
#7 固体潤滑剤――「乾いているのに滑る」とは何事か【無料】
固体潤滑剤とは、その名の通り、液体の油ではなく、固体の材料を利用して摩擦や摩耗を抑えるものである。
代表例としては、
二硫化モリブデン(MoS₂)
PTFEなどの固体潤滑性を持つ材料
金や銀などの軟質金属
などが挙げられる。
「油がないのに滑るのか?」
と思うであろう。
滑るのである。
ただし、もちろん万能ではない。
固体潤滑剤には、
摩耗によって性能が低下し、寿命に限界が生じる場合がある。
また、摩耗粉が発生すれば、周囲へのコンタミネーションも問題になる。
つまり、
「宇宙だから固体潤滑剤にしておけば安心」
ではない。
人間よ、そこまで単純なら試験問題にはならぬ。
#8 液体潤滑剤――油を宇宙へ連れていく人間たち【無料】
もう一方が液体潤滑剤である。
油やグリースなどを用いて、接触する表面の間に潤滑膜を形成し、摩擦や摩耗を抑える。
液体潤滑剤には、
長寿命化や低摩擦化を期待できる
という利点がある一方、
宇宙環境では、
蒸気圧
揮発・アウトガス
温度による粘度変化
低温時の流動性
材料との適合性
コンパチビリティ
コンタミネーション
などを考えなければならぬ。
つまり、
「油を入れれば滑る」
という地上の発想を、そのまま宇宙へ持ち込むわけにはいかない。
宇宙で使える油には、
宇宙で使える理由
が必要なのである。
#9 ここまでが無料。だが、答案としてはまだ弱い【無料→有料】
さて。
ここまで読めば、
「真空と宇宙環境は違う」
「固体潤滑剤と液体潤滑剤がある」
「温度やコンタミネーションも考える」
ということは分かったであろう。
だが、技術士試験の答案としては、まだ足りぬ。
なぜなら試験官が知りたいのは、
「知識を知っているか」だけではないからだ。
問題文には、
「真空トライボロジーとの差を明確にしつつ」
とある。
さらに、
「代表的な潤滑剤の種類とその特徴」
とある。
そして最後に、
「選定に当たっての留意点を述べよ」
とある。
つまり、この問題では、
①違いを説明する
②潤滑剤を分類する
③特徴を比較する
④選定条件へつなげる
という流れを作らねばならぬ。
ここから先は、有料の猫缶を食べた者だけに教えてやろう。
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