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まぶしくないのに、夕方になると目の奥が重い。繊細さん(HSP)の『ちらつき疲れ』

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オフィスの天井灯の下で、一日を過ごす。まぶしい、とまでは言えない。明るさを下げても、夕方になると目の奥が重く、頭のあたりまで引っ張られる。廊下の白い光も、店舗の天井も、まぶしさより先に、その重さが残ることがある。

まぶしいわけではないのに、夕方になると目の奥が重い

医学的に定義された言葉ではありませんが、ここではわかりやすく「ちらつき疲れ」と呼んでみます。診断名ではありません。目では追いきれない速さの明滅が、照明の側にあるかもしれない、という話です。

重くなりやすい場を並べると、こうなります。

  • 一日中、同じ天井灯の下にいる

  • 画面の明るさはすでに絞っている夕方

  • 白く均一な廊下や店舗の照明の下

光量をいじっても残るなら、明るさ以外の軸を見た方がいい。

光には、明るさのほかに「速さ」がある

光には、どれだけ明るいか、という軸がある。まぶしさ、デスクの明暗差、レンズの色。こちらはすでに別のところで書いてきました。この記事で扱うのは、光が時間方向にどれだけ速く点いたり消えたりしているか、です。

照明工学では、この時間的な明滅をちらつき(フリッカー)と呼び、ストロボ効果と並べて定義しています。CIEの技術ノート(TN 006:2016)が、その用語の置き場です。人体影響の基準ではありません。

https://cie.co.at/publications/visual-aspects-time-modulated-lighting-systems-definitions-and-measurement-models

人工光のちらつきが生物にどんな影響を持ちうるかを概説した総説もあります。Ingerら(2014)です。影響が議論されている、というところまでで、ヒトの健康被害が確立した話ではありません。

https://doi.org/10.1371/journal.pone.0098631

1989年のオフィスで、頭痛と眼精疲労が半減した実験

Wilkinsらは1989年、オフィスワーカー159名で二重盲検クロスオーバーを行いました。従来型の蛍光灯(100Hz、変調度43〜49%)を高周波点灯(32kHz、変調度7%未満)に替えると、頭痛と眼精疲労の発生率が半減した、という報告です。

https://doi.org/10.1177/096032718902100102

その条件の蛍光灯を、その指標で測った結果です。現代のLEDやディスプレイに同じ数字が当てはまるとは書かれていません。数値つきで確かめられていることの上限は、いまのところこの実験です。

あの蛍光灯の話を、いまのLEDやスマホに重ねない

1989年に起きたことは、起きた。いま天井にあるLEDや、手元のスマホに、同じ数字を載せる材料は揃っていません。

欧州委員会の科学委員会(SCHEER, 2018)は、通常使用のLEDについて、健康な一般集団への直接的な健康被害の証拠はない、と書いています。用量反応関係の情報は不足している、とも書いています。証拠がない、と、安全が証明された、は違います。

https://health.ec.europa.eu/publications/potential-risks-human-health-light-emitting-diodes-leds_en

Kim(2021)は、240Hz PWMの有機ELでも、通常の視距離(約30cm)ではちらつきは事実上検知されない、と報告しています。検知されないことと、誰も不快にならないことは、同じではありません。

https://doi.org/10.1080/15980316.2021.1950854

Wuら(2023)は、有機ELのPWM周波数を1920Hzまで上げても、直流(DC)調光にしても、35分の読書では視覚疲労に統計的な有意差は出なかった、と報告しています。35分の話です。長時間でも差がない、とは言えません。

https://doi.org/10.1002/sdtp.16308

明るさを絞る操作と、点滅の比率で明るさを変える操作は、同じ「調光」でも中身が違います。蛍光灯の実験を、いまの画面にそのまま載せる話ではありません。

製品の基準はある。人体への安全証明ではない

日本の電気用品安全法(省令附表第8号 / JIS C 8105-1:2010+Amd.1)には、照明のちらつきについて、(a) 100Hz以上かつ光出力ピークの5%以下の幅落ち部位がない、または (b) 500Hz以上、という基準があります。製品として出すときの規格です。人体影響の安全規定ではありません。この製品は体に優しい、とも読めません。

IEEE Std 1789-2015 は、周波数と変調度で低リスク域を示した推奨実践です。強制規格ではありません。これを満たせば症状が出ない、という書き方はされていません。

https://doi.org/10.1109/IEEESTD.2015.7118618

カメラを照明に向けると、縞が見えることがある

スマートフォンのカメラを天井灯やデスクライトに向けると、縞模様や動く横縞が見えることがあります。可視のちらつきを見つける簡易な手がかりです。

カメラのシャッター速度と照明の明滅が干渉して見えるものです。縞が見えたら危険、見えなければ安全、という判定には使えません。健康影響をこれだけで測るものでもありません。

感覚処理感受性と、ちらつきの感じやすさをつなぐ査読研究はない

気質から、ちらつきの感じやすさを説明する文章はあります。感覚処理感受性(SPS)とちらつきの感じやすさを直接結びつけた査読研究は、見当たりません。無いことを、「弱い」「強くない」のどちらにもしません。

片頭痛や光過敏では、ちらつきを伴う光が誘因になりうる、という報告があります。Karanovicら(2011)は、片頭痛患者でちらつきコントラスト感度が高いと報告しています。

https://doi.org/10.1177/0333102411398401

Haighら(2012)は、片頭痛での皮質過興奮と視覚的忌避の相関を報告しています。片頭痛の話です。HSPと同一視はしません。

https://doi.org/10.1177/0333102411433301

夕方の重さをちらつき一つに決めつけないほうが、席を動かす、明るさを変える、という次の手に戻りやすいことがあります。効果を保証するものではありません。

👉 光の環境を選び直すときの道具はこちら

https://hsp-sotto-kurasu.pages.dev/categories/?id=light

夕方は天井灯を消して、デスクライトの面の光に切り替える。カメラで縞が出た灯りの下なら、席を動かす。光の側の操作は、そのあたりまでです。


HSP(Highly Sensitive Person)は病気や障害ではなく、心理学で語られる気質のひとつです。

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