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2025年12月25日に行われた、#JAXA の #H3ロケット 打ち上げ失敗原因究明状況報告について

当初の報道はシンプルだった

2025年12月22日、日本のH3ロケット8号機は打ち上げに失敗した。原因は、第2段エンジンが2回目となる最終燃焼で正常に再着火せず、直後に停止したことにより、搭載されていた測位衛星「みちびき5号機」が実用にならない軌道に取り残されたとされた。

しかし、その後に行われた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の記者会見は、この表層的な説明の奥に、はるかに深く、複雑で、そして緊迫した実像があることを明らかにした。

表面上の不具合の裏に、もっと深刻な本質が隠されていた

テレメトリデータに刻まれ、宇宙の縁から撮影された映像によって浮かび上がる「調査の記録」だ。手がかりが示しているのは飛行の最終局面ではなく、はるか以前に発生した激しく異常な事象であり、通常であれば何事もなく通過するはずの飛行フェーズが、致命的な失敗の始点へと変わった瞬間だった。



1. エンジンは使命を果たそうとした存在だった

第2段エンジンの早期停止がミッション失敗の直接原因であったことは事実だ。しかし、調査の結果、そのエンジン自体が問題の発端ではなかったことが明らかになっており、むしろ、その挙動は極限状況下での健闘と評価されている。

本当の異常は、衛星フェアリング、つまりロケット先端部が機体から分離した直後に始まった。テレメトリデータは、第2段の液体水素(LH2)タンク圧力が急激に低下し始めたことを示している。その結果、エンジンに最初の燃焼指令が送られた時点で、推進剤は著しく不足した状態にあった。入口圧力が異常に低く、ターボポンプには十分な供給力がかからない状態だった。

JAXA関係者が「極めて厳しい条件」と表現した通り、エンジンは認定された運用範囲を大きく外れた状態で作動していた。データによると、限界まで踏ん張っていたことがはっきりと示されていた。

・初回燃焼は、通常の燃焼圧力の約80%で着火し、その後タンク圧力の低下に伴い約65%まで低下した
・低圧を補うため、液体水素ターボポンプは定格を40%以上超える回転数で回転した
・性能低下を検知した誘導制御系は、燃焼時間を計画より27秒延長する指令を出し、エンジンはこの延長燃焼を完遂した

JAXAの評価は明確だ。第2段エンジンは、救える可能性がある限りミッションを守ろうと動作し続けた。原因ではなく、別の場所で始まった問題の最初の犠牲者だった。

Credit: JAXA

2. ロケットを押し戻した1.5秒間の謎の力

調査の核心となったのは、衛星分離部に搭載された加速度計のデータだ。このデータは、異常が発生した瞬間を正確に示している。時刻はT+225秒。衛星フェアリング分離のタイミングだった。

Credit: JAXA

図にあるように、通常の飛行、たとえばH3のTF2やF5では、フェアリング分離は約0.1秒で収束する鋭い衝撃として記録され、その後、約18Hzの機体固有振動が小さく現れる。正常な挙動だ。

しかし8号機のデータは明らかに異なっていた。調査チームは二つの異常を特定した。

1つ目は持続的な加速度だ。

火工品による通常の衝撃の直後、加速度計は下向きの大きな加速度を約1.5秒間記録した。瞬間的な衝撃ではなく、一定の力が継続して加わる「準静的」な荷重だった。ロケットの上昇を押し返し、得た速度を奪おうとする力だった。

2つ目は異常な振動だ。

この持続的な力の後、機体は振動を始めたが、その周波数は18Hzではなく6〜7Hzだった。これまでの飛行では観測されていない低周波振動で、振幅は大きく、減衰は急激だった。

この高精度解析により、調査の焦点は大きく変わった。JAXAが「機械特性の変化」と表現した通り、機体の構造状態そのものが変化したことを示す強い証拠が得られた。


3. 機体カメラが捉えた異様なデブリ

テレメトリが時間軸を示した一方で、機体搭載カメラの映像は決定的な視覚証拠を提供した。このスライドは、H3・8号機が正常なフェアリング分離がされていなかったことを示しているかのように見える。

正常な5号機と比べると、分離後の8号機の映像には、不規則で反射性のある物体が第2段近傍に残っている。これはカメラのノイズではなく、物理的な破片や構造物の変位を示唆するものだ。異常は分離直後から現れており、失敗の起点がフェアリング分離にあることを強く裏付けている。

Credit: JAXA

4. 衛星の最後の姿は白い霧だった

最も印象的な証拠は、フェアリング内部に設置された前方カメラの映像だ。このカメラは、フェアリング分離後の衛星状態を確認し、その後の分離を記録する役割を持つ。

Credit: JAXA

5号機と8号機を、衛星分離指令が出された瞬間で比較すると違いは明確だ。

・5号機では、衛星が計画通り分離し、はっきりと視認できる
・8号機では、衛星の姿は確認できず、画面全体が白く霞んだガス状の物質で満たされている

JAXAは、この白い像を、損傷した液体水素タンク、あるいは衛星自身から放出されたガスが太陽光に照らされたものと仮定している。ペイロードを放出すべき瞬間に、機体が宇宙空間へ漏出していた可能性を示す、象徴的な一枚だ。H3プロジェクトマネージャーは、映像の解析は現在も継続中であり、結論には至っていないと述べている。


5. 衛星はどこへ行ったのか

第2段が最終燃焼を実行できなかったことで、「みちびき5号機」は不安定で減衰する軌道に置かれた。最終テレメトリの解析により、ミッションの結末が示されている

Credit: JAXA

衛星分離指令は送信されたが、分離スイッチによる確認信号は得られなかった。ただし、軌道解析の結果、分離の有無に関わらず結果は同じだったと結論づけられている。第2段と衛星のいずれも、地球へ再突入する軌道にあった。

JAXAの報告書は、第2段およびみちびき5号機が、打ち上げ後約4時間、2周回以内に大気圏へ再突入し、燃え尽きた可能性が「極めて高い」としている。宇宙開発におけるリスクの大きさを改めて突きつける結論だ。


複雑な真実へと続く手がかり

H3・8号機の失敗調査は急速に進展している。単なるエンジン不具合から、フェアリング分離という一見すると通常の工程で発生した重大な機械的事象へと、調査の焦点は移った。

1.5秒間の逆向き加速度、想定外の低周波振動、後方カメラが捉えたデブリ、そして、衛星があるべき場所に広がった白い霧。これらの証拠は一本の線としてつながり始めている。

JAXAの技術者たちは明確な手がかりを得た。一方で最も難しい作業はこれからだ。分離という単一の事象が、逆向きの力、構造破壊、ガス漏出を同時に引き起こしたメカニズムを再構築することだ。

しかし、この失敗は終わりではない。
むしろ、次を研ぎ澄ます。

すべてのデータは残った。
すべての異常は記録された。
すべての映像が理解を深める材料となる。

この失敗は、次の飛行の不確実性を減らす。
設計余裕を強化する。
損失を知見へと変える。

宇宙開発はこの積み重ねで前進する。
失敗そのものを恐れるのではない。
起きた失敗を素早く分析し、原因を特定し、設計や運用に反映させる。
その結果、同じ失敗が再び起きる前に次の改善へ進む。

つまり、
宇宙開発の前進を決めるのは「失敗しないこと」ではなく、
「失敗を次に活かすまでの速さ」だ、という意味だ。

H3・8号機はミッションを達成できなかった。
だが、日本の打ち上げ能力を前進させたと信じている。


参照
JAXA報告書
「H3ロケット8号機 打上げ失敗に係る調査状況」
2025年12月25日
文部科学省公開資料
https://www.mext.go.jp/content/20251225-mxt_uchukai01-000046593_002.pdf


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