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961.エッセイ∣都市風景∣三宮・加納町のバー


豆腐好きな友に合わせ、大豆料理中心の店で会食。

その後、二軒目へ。

加納町から北野へと向かう途中。
右手に、見覚えのある店の外観があった。

十年以上前だろうか。

「僕は、神戸に来たら、ここに寄るんだ」

そう言って、香川出身の先輩に連れてきてもらったバー、「宙」。

友に、
「今日は、北野じゃなくてもいいか」 と聞き、そのまま扉を開けた。

カウンターには先客が三人。
カップルと、四十代くらいの男性。

カップルは間もなく会計を済ませ、男とマスター、それに私たちだけになった。

「ここ、十年振りなんです」

ジン・トニックを注文したあと、マスターにそう伝えた。

話しているうちに、香川の先輩の名前が出た。マスターもママも、よく覚えていた。

そこから隣の男性も加わり、話が拡がる。彼が飲んでいた季節のカクテルが気になり、同じものを頼んだ。

二杯目。
ピオーネとラムのカクテル。

それを待つ間、ふと懐かしくなって、先輩にメッセンジャーを送った。

履歴を見る。
最後に連絡したのは、二年半前だった。

すぐに返事が来た。

今、「宙」にいること。
マスターもママも、先輩を懐かしんでいること。

とても喜んでいるのが、短い文面からでも分かった。

そこから何度も、メッセージが行き来する。

二杯目を飲み終え、三杯目のエスプレッソ・マティーニが置かれても、まだラリーは続いていた。

十年以上前、先輩に連れられて座った店。

今夜は、別の友とここにいる。

店は残り、そこにいる人もいて、
会わなくなった人とも、ふと繋がる。

そんな夜もある。

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