見出し画像

ショートショート「丁寧な宇宙人」

宇宙人から手紙が届いた。
それは独りよがりな詩のような形をとっていたが、要約するとこのようなことになる。
「貴方たちの人工衛星とそれに乗った金色のレコードを、確かに受け取りました。伝えにくいのですが、この星のほとんどの住民はそれを侮辱のメッセージと受け取り、中には宇宙戦争を提唱する者もいます。しかし、幸いこの星は私たち少数の上級民によって成り立っていますので、ご心配には及びません。ええ、あのレコードは素晴らしい。評価星10では物たりません。これほどの上質な音楽を聞かせていただけることは、私たちにとってまさに光栄と言えるでしょう。追加のレコードが欲しいので、貴方たちの時間感覚で1ヶ月後にお訪ねします。貴方の素敵な火星人より。」
写真もいくつか入っていた。ピースだのシェーだののポーズをとった、いかにも異星人らしきフォルムのやつが写っている。

宇宙人たちは1ヶ月より少し遅れて、本当にやってきた。人類側としては初めての宇宙人との接触だ。宇宙的規模で見ればほんの少しの遅刻を責めるなど、何をどう考えても悪手甚だしいだろう。
どこかでもう見たことがあるような宇宙船の扉が開き、彼らは出てきた。お父さん、お母さん、お子さん三人。穿った見方をしなければ、誰が見てもそう受け取るだろう。(訳註:この「穿った」が本来の意味なのか、誤用での意味なのか、誰か教えてくれませんか?)

例のことが起こるまで、特に特筆すべき事項は起こらなかった。やはり穿った見方をしなければ、日本に憧れた外国人を日本人たちは温かくもてなしました、という類の話とそうそう変わらない。彼らは写真通りの容姿だったし、性格をとっても、あの手紙から想像された淡い影に綺麗にピントが合わさったといった感じである。


しかし、とうとう事件は起こる。宇宙人帰星前日の夕食会で、彼らはうっかり口を滑らしてしまったのだ。
「名残惜しいけれど、明日でとうとうおわかれですね。最後に一つだけお願いがあります。お土産のレコードを積む時は急いでくれると嬉しいです。一週間後には、この星は超巨大地震とコアの大爆発で粉々になりますから。」
「は?」
「え?」
「この星とは、つまりこの星ですか?」
「ん?あ、え、あえ、あっ!!!!」
その時の宇宙人の狼狽ぶりと来たら、本当に文字通り狼狽していてあまり特徴がなかったので特に書くこともない。土下座やら何やらしまくって、同席していた各国のお偉いさん方もその場では止めたが、市民の不安までは止まらなかった。

とりあえず地球人たちは宇宙人のそれを侮辱もとい宣戦布告と捉えたので、両者了解で宇宙戦争になった。30秒で終わらせる!とどちらかの陣営の誰かが意気込んだが、開戦後3秒間で地球人口の1割が削られてしまったため、残りの9割のほとんどは捕虜になることを選んだ。幸いにして、宇宙人たちは捕虜を傷つけるほど残忍ではなかったため、人類が滅亡することもなく、少々狭苦しい宇宙船に乗せられて彼らの星に運ばれた。地球はほとんど無人となった後、彼らの言葉通り、勝手に爆発して木っ端微塵になった。

まあ、この金の像に関する話を至極簡単にわかりやすくまとめるとこういうことになる。
一瞬で終わった宇宙戦争の原因、この星と地球人との友好の架け橋、うっかり口を滑らして旅行先で死刑になった間抜け。彼らを表すのに何という言葉を使えばいいのか、僕たちはまだ答えを見つけられていない。
けれどまあとりあえず、5体の彫刻たちは、彼らが愛した金のレコードを両手に抱えて微笑んでいる。

いいなと思ったら応援しよう!