メーカーの販促費を売場に引き込む — サプライヤー共同のインタラクティブ動画
多くの小売の現場に、メーカーさんから提供された商品紹介動画が眠っています。サイネージで流して、ECの商品ページに貼って、それで終わり。
もったいないな、と感じる方も多いのではないでしょうか。問題は3つあります。
ひとつ目は、一方通行なのでお客様の疑問に答えていないこと。作られているのは「メーカーが伝えたいこと」であって、「お客様が知りたいこと」ではないケースが多いのです。
二つ目は、効果が測れないこと。再生数は出ても、それが売上にどう効いたのかを説明できません。
三つ目は、メーカー側にも次の一手の材料が残らないこと。動画を作った、配った、で終わってしまいます。
一方で、メーカーさんには販促予算があります。小売には売場とお客様がいます。この2つが噛み合っていない状態が、そのまま放置されているわけです。
動画を「売場のメディア枠」として捉え直す

リテールメディアという言葉が、ここ数年ですっかり定着しました。棚前のサイネージ、アプリのバナー、レシートクーポン。小売が持つ顧客接点をメディアとして販売する、という考え方です。
インタラクティブ動画は、このメディア枠のなかで、いちばんデータが取れる形式だと考えられます。
理由は単純で、視聴者が能動的に選択するからです。
通常の動画で取れるのは「何秒見たか」。インタラクティブ動画で取れるのは「何を知りたかったか」。この差は、メーカーさんに提供する価値として、かなり大きいはずです。
具体例:塗料カテゴリの1本

冒頭でお客様に聞きます。「何を塗りますか。室内の壁、木製の家具・ウッドデッキ、鉄部(門扉・フェンス)」。選択に応じて、それぞれに適した商品の実演パートへ分岐します。ここに複数メーカーの商品を並べます。
さらにその先で、もう一度聞きます。「重視するのはどれですか。とにかく安く、匂いが少ない、耐久性」。ここで初めて、具体的な商品名が提示されます。
この動画は、お客様にとっては「相談できる売場」であり、小売にとっては「お客様の意思決定プロセスの記録」であり、メーカーさんにとっては「自社商品がどんな条件で選ばれた・選ばれなかったのか」のデータになります。
同じ1本が、3者に対してそれぞれ別の価値を持つわけです。

取れるデータの例を挙げてみます。
用途の選択比率からは、カテゴリ内の需要構成が分かり、棚割や発注の材料になります。
重視点の選択比率からは、価格訴求と機能訴求のどちらが効くかが分かります。
商品提示後の離脱が多ければ、提案が刺さっていないというPOP文言の見直し対象になります。完走後のEC遷移からは、店頭からECへの動線を実測できる、数少ないオムニチャネルの実証データが得られます。
ビジネスとして成立させる3つの型

ここが本題です。運用の型はいくつか考えられます。
協賛型は、小売が動画枠を作り、掲載メーカーから販促協賛費を受け取る形です。分岐データをレポートとして還元します。リテールメディアの標準的な形です。
共同制作型は、メーカーが撮影素材と商品知識を提供し、小売が構成とインタラクション設計を担当する形です。制作費を折半して、データは共有します。中堅メーカーさんと組みやすい形です。
メーカー主導・小売は場を提供という型は、メーカーが自社で制作し、小売はQRの掲出場所と分析の場を提供する形です。小売側の工数がいちばん軽い形です。
現実的には、場を提供する形から始めてデータの価値が確認できてから協賛型へ移行するのが手堅いといえます。いきなり協賛費の話から入ると、動画そのものの価値がまだ証明されていないので、商談が進みません。
応用:取引先ごとに出し分ける
hihahoには、視聴者ごとに個別のURLを発行して、氏名や会社名を動画の中に差し込む「パーソナライズド動画」の仕組みがあります。
これを商談用に転用すると、こんなことができます。商談資料としてのインタラクティブ動画を、取引先ごとに社名入りで発行する。誰がどこまで見て、どの項目に関心を示したかを営業側が把握する。提案内容(価格帯や想定什器)を取引先ごとに出し分ける。
バイヤー向けの新商品提案や、自社のPB商品を他チェーンへ卸すときの提案ツールとしても機能します。「送りっぱなしの提案書」を「反応が返ってくる提案書」に変える、というイメージが近いかもしれません。
始める前に整理しておきたいこと

データや素材の扱いなど運用前の条件を整理4点だけ、先に決めておくことをおすすめします。
データの取り扱い
誰のデータで、どこまでメーカーに開示するのか。個人が特定されない形の集計値にとどめるのが基本線です。ここを曖昧にしたまま協賛費の話を進めると、後で必ず揉めます。
素材の二次利用可否
メーカー提供素材を再構成することが契約上の許諾範囲内かどうか、事前確認が必要です。
公平性への配慮
特定メーカーだけが有利になる分岐設計は、他社との関係に響きます。選択肢の並び順まで含めて、説明できる根拠を持っておきたいところです。
効果測定の指標
「再生数」を目標にすると、必ず形骸化します。EC遷移率や、該当カテゴリの店舗別売上前年比あたりを見るべきです。
おわりに
インタラクティブ動画を「販促ツール」として見ると、コストの話にしかなりません。
「売場でお客様が何を考えているかを記録する装置」として見ると、メーカーさんに対して売れる資産になります。

同じ1本でも、どちらの立て付けで社内を通すかで、到達点がまったく変わります。もし販促やバイヤーのお立場で企画を上げるなら、ぜひ後者で組み立ててみてください。
まずは1カテゴリ、1メーカー、1本から。データが出てから交渉すればいいのです。御社なら、どのカテゴリから始めますか。
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スプライングローバル株式会社
