大陸みたいなもの
「あれは何だ」
「扉みたいなものです」
よくホラー映画やファンタジー、魔法が出てくるような映画を見ていると、外から来た登場人物に対して、現地の住民が何かを説明する場面がありますよね。
そういう時によく使われるのが、「〜みたいなもの」という表現です。
たぶん、ぴったり当てはまる言葉がないのだと思います。
全く同じものではない。でも、相手に説明するためには、相手が知っている何かに置き換えるしかない。
外国語を勉強する時にも、これと似たところがあるように思います。
例えば単語帳では、
Kontinent = 大陸
と覚えることができます。
でも、本当に同じものなのでしょうか。
少し前にドイツの人たちと話している時に、少し違和感を感じたことがありました。
今日はそのことについて書いてみたいと思います。
「アジア」とはどこなのか
以前、授業で「アジアとは何か」というテーマを扱ったことがあります。
その時に私は、アフガニスタンや中東、近東などについて、あまり「アジア」という感覚を持っていないという話をしました。
すると、
「でも地理的にはアジアでしょう」
という反応が返ってきました。
その時、私は少し驚きました。
もちろん、考えてみればその通りです。
ただ、私の中で「アジア」という言葉から連想されるのは、東アジアや東南アジア、中国、日本、韓国などでした。
アラブ圏や中東を同じ「アジア」という一つの言葉で捉える感覚が、あまりなかったのです。
そこで、自分の中でも地理的な分類と文化的なイメージが混ざっていることに気づきました。
自分では地理について話しているつもりでも、実際には文化的な「アジア」のイメージについて話していたわけです。
こういうことは外国語で話していると、たまに起こります。
大陸はいくつあるのか
もう一つ気になったのが、「大陸」という言葉です。
私は日本で、世界には六つの大陸があると習いました。
ユーラシア大陸、アフリカ大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、オーストラリア大陸、南極大陸です。
ところが、ドイツでは一般的に、
ヨーロッパ、アジア、アフリカ、北アメリカ、南アメリカ、オーストラリア、南極
という七大陸で整理されています。
つまり、日本では一つのユーラシア大陸として習ったものが、ヨーロッパとアジアに分かれています。
もちろん、地面そのものが変わるわけではありません。
違っているのは、世界そのものではなく、世界の整理の仕方です。
私はここが結構面白いなと思いました。
「Kontinent=大陸」でいいのか
ドイツ語では「大陸」を Kontinent と習います。
私もずっと、
Kontinent = 大陸
とそのまま覚えていました。
別に翻訳として間違っているわけではありません。
でも、「=」で完全に同じものだと思ってしまうと、少し問題が出てきます。
日本語で「大陸」と聞いた時に思い浮かべる世界の分け方と、ドイツ語で「Kontinent」と聞いた時に思い浮かべる世界の分け方が、必ずしも同じではないからです。
単語の意味は対応していても、その言葉の背景にある教育や知識、世界の整理の仕方まで同じとは限りません。
今回私が感じた違和感も、「大陸」と「Kontinent」という言葉そのものの違いというより、その後ろにある分類の違いだったのだと思います。
そして、これは外国語を勉強する時には結構大事なことなのではないかと思います。
外国語は置き換えるだけではない
外国語を勉強していると、
Hund = 犬
Haus = 家
Kontinent = 大陸
というように、単語と単語を対応させながら覚えていきます。
最初はそれでいいと思います。
というか、そうしないと覚えられません。
ただ、勉強を続けていくと、その「=」が少しずつ怪しくなってきます。
使える場面が違ったり、意味の範囲が違ったり、その言葉から連想するものが違ったりします。
今回の「大陸」のように、学校で受けてきた教育まで関係してくることもあります。
外国語で話す難しさというのは、単語や文法を知らないということだけではないのだと思います。
同じ世界を見ていても、その世界をどう分けて、どう名前をつけてきたのかが違う。
そして、自分では同じものについて話しているつもりでも、実は少し違うものを頭の中に思い浮かべていることがあります。
異文化コミュニケーションの面白いところは、こういうところなのかもしれません。
言葉がうまく通じなかった時。
何か違和感を感じた時。
すぐに「相手が間違っている」と考えるのではなく、自分がどういうふうに世界を整理してきたのかを一度考えてみる。
そうすると、外国語だけではなく、自分自身の考え方についても少し分かることがあります。
そう考えると、
「Kontinentは大陸です」
と覚えるより、
「Kontinentは、大陸みたいなものです」
くらいに考えておいた方が、外国語としては案外正確なのかもしれません。

