股関節の柔軟性を上げたら、ストライドが伸びていた
柔軟性、ただの怪我予防だと思っていませんか。実はストライドの長さにも関係しているというデータがあります。
どんな研究か
2025年、Applied Sciences 誌に掲載された研究です(Qin et al., 2025)。大学の陸上競技選択クラスを受講する学生56名を対象にした、8週間のランダム化比較試験です。
実験群(28名):通常の授業に加えて、週3回、股関節の機能的トレーニング(動的ストレッチ+活性化エクササイズ)を実施
対照群(28名):通常のカリキュラム(ランニング中心の授業)を継続
測定:股関節可動域(ROM)、機能的動作評価(FMS)、50m走、立ち幅跳び、長座体前屈、姿勢の評価
対象は陸上競技を専攻する選手ではなく、体育の授業を受ける一般の大学生である点は先に断っておきます。
わかったこと
① 股関節の可動域が、複数方向で有意に増加
8週間の介入後、実験群は股関節の屈曲・伸展・左右の内旋・外旋のすべての方向で、可動域が有意に増加しました(すべてp<0.001)。対照群には、同期間で有意な変化は見られませんでした。
② ストライド長の増加は、股関節伸展の可動域の改善と関連
論文の結果部分では、ストライド長の増加は股関節伸展の可動域の改善(男性:2.50±0.76度、p<0.01)と直接関連しており、これはハムストリング-臀筋の運動連鎖の最適化を反映しているとされています。
③ 実際の運動パフォーマンスも向上
50m走のタイムは有意に短縮し(-0.26秒)、立ち幅跳びも有意に向上しました(+0.08m、いずれもp<0.05)。機能的動作評価(FMS)でも、ハードルステップ・アクティブストレートレッグレイズ・ロータリースタビリティといった項目で、対照群より有意に大きな改善が見られています。
なぜ柔軟性がストライドに繋がるのか(論文の考察より)
論文の考察部分では、静的・動的ストレッチの組み合わせが、股関節周囲の結合組織の柔軟性(粘弾性)を改善した可能性、そして機能的な動作パターンの練習が神経筋の協調性・固有受容感覚のコントロールを向上させた可能性が挙げられています。ただし著者ら自身、これらのメカニズムを直接測定したわけではなく、既存の生理学的原理に基づく推測であると明記しています。
この研究の限界
対象は単一の大学の学生56名という、比較的小規模かつ均質なサンプルです
対象は陸上競技を専攻する選手ではなく、一般の大学生(体育の授業の受講者)です
8週間という比較的短い介入期間であり、長期的な効果の持続性は分かっていません
機能的動作評価(FMS)のテストは、通常のプロトコル(ウォームアップなしで行う)とは異なり、5分間のウォームアップ後に実施されており、スコアがやや高く出ている可能性があると著者ら自身が指摘しています
まとめ
8週間の股関節機能的トレーニングにより、股関節の可動域(特に伸展)が有意に改善した
この可動域の改善は、ストライド長の増加と関連していた
実際に50m走のタイムと立ち幅跳びの記録も、有意に向上した
ただし対象は一般の大学生であり、介入期間も比較的短い
柔軟性を上げることは、単なる怪我予防だけでなく、実際に走る動きそのものにも繋がっている可能性がある、というのが今回のデータでした。
参考文献
Qin, L., Hu, S., Xu, D., Wang, H., Xuan, W., Lu, T., & Gong, X. (2025). The Effect of Hip Joint Functional Training on Speed, Flexibility, and Related Performance in Physical Education in College Students. Applied Sciences, 15(20), 11037.
https://doi.org/10.3390/app152011037
