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水風呂に入った選手ほど、24時間後の"キレ"が落ちなかった

運動後の水風呂、なんとなく入っていませんか。

実はこれ、「効く部分」と「効かない部分」がはっきり分かれることが、52本のRCT(ランダム化比較試験)を統合したメタ解析でわかっています。今回はそのデータを、できるだけ正確に紹介します。

どんな研究か

2022年に Sports Medicine 誌に掲載された
システマティックレビュー・メタ解析です
(Moore et al., 2022)。

対象:運動習慣のある成人
(スポーツ選手、または定期的に運動をしている人)

方法:激しい運動(高強度運動、または筋肉に負荷の
かかる伸張性運動)の後、冷水浴(CWI)を行った
群と、何もしない(受動的回復)群を比較

分析対象:52件のランダム化比較試験

見ている指標:筋パワー(ジャンプ・スプリント
・10秒未満の無酸素性パワーをまとめたもの)、
筋力、持久力、筋肉痛(DOMS)、主観的な回復感、
血中クレアチンキナーゼ(CK、筋損傷の指標)

先に断っておくと、この研究の対象は陸上競技の短距離選手に限定されたものではありません。チームスポーツの選手や、運動習慣のある一般の方も含まれています。

わかったこと

① 瞬発的なパワー(ジャンプ・スプリント)の回復には効果あり

高強度運動の24時間後、水風呂に入った群は、
パワー系のパフォーマンス(ジャンプ・スプリント・無酸素性パワー)の回復が、
入らなかった群より有意に良好でした
(効果量0.22、p=0.046、エビデンスの質:中程度)。

数値としては大きなものではありませんが、
統計的に意味のある差として確認されています。

② 一方で「筋力」には効果なし

同じ24時間後の時点で、静的な筋力(等尺性筋力など)の回復には、水風呂による有意な効果は見られませんでした(p=0.64)。

論文の考察では、水風呂は「重いものを持ち上げる力」よりも「伸張-短縮サイクルを伴う動的なパワー動作」により良い影響を与える可能性がある、と述べられています。運動後に筋肉や腱にこわばりが残ると、それを補うために余計なエネルギーが使われますが、冷水による水圧と冷却が炎症や腫れを
抑えることで、このこわばりが
軽減されるという仕組みが考えられています。

③ 筋肉痛と主観的な回復感にも良い影響

高強度運動後24時間の時点で、水風呂は筋肉痛(DOMS)の軽減(効果量-0.89、p=0.003)と、主観的な回復感の向上(効果量0.66、p=0.001)にも関連していました。

血中クレアチンキナーゼ(筋損傷の指標)についても、24時間後に有意な低下が見られています(効果量-0.85、p=0.03)。

④ 「何分・何度がベストか」は、
実ははっきりしていない

ここが今回いちばん伝えたいポイントです。

同じ論文では、水温や浸水時間を変数にした分析(メタ回帰分析)も行われていますが、パワーの回復効果に関しては、水温も浸水時間も有意な影響は見られなかったと明記されています。

一方で、クレアチンキナーゼの除去や持久系パフォーマンスについては、「より短時間・より低温のほうが効果的」という用量反応関係が別途示されています。つまり、「短く冷たいほうがいい」というのは指標によって話が違うということです。「スプリント力の回復に何分・何度がベストか」については、この論文からは断言できません。

この研究の限界

対象者の多くは男性(44研究が男性のみ、女性のみは4研究)で、女性アスリートへの当てはめには注意が必要

冷水浴という性質上、参加者を「盲検化」できない(自分が冷水に入ったとわかってしまう)ため、プラセボ効果の影響を完全には排除できない

陸上競技の短距離選手だけを対象にした研究ではない

まとめ

高強度運動後の水風呂は、瞬発的なパワー(ジャンプ・スプリント系)の回復には統計的に有意な効果が確認されている

一方で筋力そのものの回復には明確な効果は見られていない

筋肉痛の軽減や主観的な回復感の向上にも関連している

ただし**「何分・何度がベストか」はこの研究からは断言できない**

対象は運動習慣のある成人全般であり、陸上短距離選手限定のデータではない

「水風呂=なんとなく体にいい」ではなく、少なくとも瞬発力の回復に関してはデータの裏付けがある、という話でした。

参考文献

Moore, E., Fuller, J.T., Buckley, J.D., Saunders, S., Halson, S.L., Broatch, J.R., & Bellenger, C.R. (2022). Impact of Cold-Water Immersion Compared with Passive Recovery Following a Single Bout of Strenuous Exercise on Athletic Performance in Physically Active Participants: A Systematic Review with Meta-analysis and Meta-regression. Sports Medicine, 52(7), 1667–1688.

https://doi.org/10.1007/s40279-022-01644-9

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