R8予備論文(憲法)
主観 B~C
設問⑴
1 私的団体に対する本件補助金の交付が憲法89条(以下法名省略)に反しないか。「公の支配」の意義が問題となる。
⑴ 同条の趣旨は、公権力の監視が及ばない場合、公金その他公の財産の適正な行使を把握することができないことにある。そこで、「公の支配」とは、監督権を有することをいうものと解する。
⑵ 本件補助金の交付対象となる団体は、A市の行政組織 の一部ではなく、自主的に組織・運営されている私的団体であり、A市がその活動に対して指示 をしたり、その人事に関与したりすることはない。そのため、A市は、上記団体に対し監督権を有しない。
⑶ したがって、本件補助金の交付対象となる団体は「公の支配」に属さないため、本件補助金の交付は89条に反する。
設問⑵
1 要綱8条1号は、本件補助金の交付を受ける団体の表現の自由(21条1項)に反し、無効とならないか。
⑴ア 政治的行為を行うことも表現の自由に含まれるところ(猿払事件参照)、法人の基本的人権については、性質上私人を対象としているものを除き保障される(八幡製鉄所事件参照)。
イ 本件補助金の交付を受ける団体が政治的行為をすることも表現の自由として保障される。
⑵ 要綱8条1号により、本件補助金の交付を受ける団体は政治的行為をすることを禁止されているため、表現の自由に対する制約が存在する。
⑶ア もっとも、表現の自由といえども絶対無制限ではなく、公共の福祉による合理的で必要やむを得ない限度の制限を受けることがある。そして、要綱8条1号による制限が上記限度の範囲にあるかは、当該規定の目的のために制限が必要とされる程度、侵害される権利の性質及び内容、具体的制限の程度、態様等を較量して決する(よど号ハイジャック記事抹消事件参照)。
イ 子ども食堂を運営する団体の中には、選挙期間中であるか否かを問わず、その団体 名を示して、子育て支援に積極的な公約を掲げている公職の候補者や政党を応援してきた団体がある。A市としては、このような団体に本件補助金を交付することは、あたかもA市が当該候補 者や政党を支援しているかのような誤解を与えかねず、特に子ども食堂を利用する子どもの保護者に対し、その投票に関する意思決定に影響を与えるおそれがあると考えたため、要綱8条1号により政治的行為を禁止したのである。そして、選挙権がこれを行使する本人の意思決定に基づくべきものであることに鑑みると、要綱8条1号の目的は正当であって、必要性も認められるようにも思われる。しかし、投票に至る意思決定は千差万別であるから、上記おそれは観念上の想定に過ぎない。そのため、必要性は認められない。
要綱8条1号は団体の政治的行為を禁止するものであるが、当該行為が民主主義社会において国政に関与する上で重要なものであることは周知の事実である。そして、同号は政治的行為の内、中核的なものを禁止しているため、制約として過剰である。
ウ したがって、要綱8条1号は上記限度を逸脱するものである。
よって、要綱8条1号は、21条1項に反し、無効である。
設問⑶
1 B寺に対する本件補助金の交付は政教分離規定(20条1項、89条)に反しないか。
⑴ 政教分離規定は国と宗教との関係の絶対的分離を理想とするものであり、89条は上記要請を財政面から確保するものである。しかし、国と宗教との関りには種々の態様があり、その完全な分離を達成することは困難である。政教分離規定は、国と宗教との関わり合いが、我々の社会的・文化的諸条件に照らし、信教の自由の確保という制度根本との関係で相当とされる限度を逸脱することを許さないことを趣旨とするものである。そこで、本件補助金の交付が上記限度を逸脱するか否かは、交付の対象、当該交付に対する一般人の評価等諸般の事情を総合的に考慮し、客観的に判断するものと解する(空知太神社事件参照)。
⑵ 宗教法人B寺が運営する子ども食堂は、子どもの保護者がB寺の檀家であるか否かにかかわらず、誰でも利用することができるとしており、一般人の視点からしてB寺に特別の便益を与えると評価されるものではない。子ども食堂は、B寺の敷地内にある集会施設を使用しているが、当該集会施設は、本堂のような宗教施設そのものではなく、一般的な集会施設と変わるものではない。もっとも、食事をする部屋の壁には、B寺の住職が仏典から引用した仏の教えや人生の導きとなるような名言や標語が掲示されているが、これはB寺の性質上必然的に伴う宗教性の反映に過ぎない。食事の際には、手を合わせて、「いただきます。」等の挨拶をするよう指導がなされているが、かかる行為は宗教的意義の希薄な世俗的行為であり、それ以上に、食事の前後にお祈り等をすることもない。子どもやその保護者に対してB寺が主催するお祭りその他の宗教行事の案内がなされることがあるが、これら行事への参加は子ども食堂を利用するための条件ではなく、上記お祭り等の宗教行事は習俗的行為の一環として行われるものである。A市内には、このようなB寺と同様のやり方で子ども食堂を運営するキリスト教の教会などの宗教法人が複数あり、A市としては、それらのいずれも本件補助金の交付対象とする予定であるため、特定の宗教に対し特別の便宜を供与するような事態は生じない。
⑶ したがって、B寺に対する本件補助金の交付は上記限度を逸脱するものではない。
よって、B寺に対する本件補助金の交付は政教分離規定に反しない。
自己評価
設問⑶→設問⑵→設問⑴の順番で解いた。
設問⑴は「公の支配」が問題となることは気づいたが、具体的な内容までは思い出せず、でっちあげの規範(しかも雑)を作出した。時間もギリギリで当てはめもあまり良くない。
設問⑵は団体の表現の自由(政治的行為)の問題として検討した。正当化の当てはめの部分(特に具体的制限の態様、程度)の検討が不十分である。
設問3は政教分離について総合考慮で検討した。問題文中のほぼ全部の事情を当てはめで使うことができたので、まあまあ良かったのではないかと思われる。一部事実に対する評価が変であったり、どう評価すべきか分からなかったところもある。
