ギリシャ:地下鉄に乗らなかった話
行く前から言われてた。
「ギリシャ、気ぃつけや」って。
世界一周中の訪れたギリシャはアテネでの話。
僕はちゃんと警戒した。
荷物は前に抱えて、路地は避けて、
夜は早めに宿に戻って。
そしてバスキングした。
何も起きんかった。
唯一の被害は、チップが少なかったことである。
治安やなくて、経済が危なかった。
命は無事、財布は無風。
盗られるも何も、そもそも入ってへんかった。
「ギリシャ危ない」って聞いて身構えてた僕が、
実際に受けたダメージが「今日も薄いな」やった。
で、ギリシャを出てから聞いた。
「アテネの地下鉄、危ないらしいですよ」って。
ヨーロッパ人でも、手ぇ切られてカバン持っていかれるらしい。
手。切られる。
カバンと一緒に、手の一部が。
僕、地下鉄に一回も乗ってへん。
危ないところ、通ってなかった。
だから何も起きんかった。
それだけの話やった。
つまり僕の警戒は、なんの役にも立ってない。
荷物を前に抱えてたのも、路地を避けてたのも、
全部ちゃんとやってたけど、
危険は、僕が行かなかった場所のほうにあった。
避けたんやない。
すれ違わんかっただけや。
旅で無事に帰ってこれた人が語る「気をつけてたから」は、
たぶん半分くらい嘘やと思う。
残りの半分は、たまたま乗らんかった電車の話や。
スターダックトニー
51歳。軽トラに宝箱を積んで、まだ旅の途中です。
乗らなかった電車の話を、これからも書いていきます。
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