【クリエイター図鑑】☆が増えるほど、俺はダメになる
★★★『本体』
時刻は深夜二時。
【クリエイター図鑑】、今日の朝九時には投稿したい。
原稿は、まだ一文字も書いていない。
この企画を前に、俺は「おっぱいリレー」に逃げていた。逃げた先もなかなかだが、新作の執筆に苦戦している俺への、神様の仕組んだ巧妙な罠かもしれない。
画面には、青い星屑をまとった自分のイラストが光っている。No.YO1。名称、宵月ユウ『本体』星は三つ。分類は「ピカンチダブル型」
え?みんなARASHI好きじゃん。
「……我ながら、いい仕事してるな」
コーヒーを啜る。無糖。舌が焦げるほど熱い。
ノリで項目を埋めていく。好物、コーヒー無糖。鳴き声、「We are ARASHI」天敵、G完全体。必殺技はもちろん──
「レイバンしか勝たん、っと」
ここまでは、よかった。魔が差したのはこの一行だ。
進化条件の欄に、俺はこう打ち込んだ。
「下にスクロールすると覚醒する」

ふふ、と鼻で笑う。カードゲームあるあるだ。誰も本気にしない。自分ですら本気にしていない。
だから、指がスマホの画面を下へなぞったとき、それが自分の指ではないと気づくのに、たっぷり三秒かかった。
ぬるり、と画面が滑る。
でも、俺は画面に触れていない。両手でマグカップを握っている。
なのに、確かに下へスクロールした。
部屋の蛍光灯が、ぶつっと落ちる。
代わりに、机の上のスマホから青白い光が噴き上がった。星屑だ。カードの中の星屑が、画面の外へこぼれてくる。
「え、ちょ、まっ」
光が俺の全身を舐める。指先が痺れ視界がにじむ。眼鏡の奥で世界がぐにゃりと歪んだ。
誰かが、この物語を、下へスクロールしている。
そんな確信だけが、はっきりとあった。
★★★★『ち〇かわ』
視界が、やたらと低い。
俺は自分の手を見ようとして──前足を見た。
まるっこい。もふもふしている。肉球がある。
「……は?」
声も出したつもりが、口から出たのは「ウラーアッカー」という謎の鳴き声だった。
机の縁に映る自分の姿は、丸くて白い獣だった。眼鏡だけはかろうじて残っている。首元には十字架のネックレス。名称、宵月ユウ『ちんかわ』星は四つに増えていた。
進化していた。それも、下品な方向にではなく、あろうことか「かわいい」方向に。

「うそだろ、これじゃ原稿が」
キーボードに乗っかっても、体重が軽すぎてキーが沈まない。
締切まで、あと六時間。
俺は決意した。獣になろうが、書く。
丸い体でキーボードによじ登り、腹ばいになって、全体重で一文字ずつ押していく。「あ」を打つのに三秒。この調子だと原稿完成は来世だ。
そのとき、また来た。
ぬるり、と背後の空気が滑る感覚。
誰かが、スクロールしている。
「やめっ、やめてくれ! これ以上進化したら俺は──なんとかなれーッ‼」
ピンチのときは勢いと気合。それが宵月ユウという生き物の唯一の必殺技だった。
だが気合では、物理法則は覆せない。
体が、また光り出す。今度の光は、金色だった。
★★★★★★『ちび創作の勇者』
気づいたら、スタバにいた。
深夜三時。当然、閉まっている。なのに、なぜか店内。
俺は人間に戻っていた。いや、戻ったというより、進化していた。No.YO3、宵月ユウ『ちび創作の勇者』星は六つ。分類が変わっている。
「衝動散財型」
いやな予感しかしない。
進化条件の文字が、宙に浮かんで見える。さっきまで「下にスクロールすると覚醒する」だったはずのそれが、書き換わっていた。
「課金すると覚醒する」

「……おい、待て。誰が課金なんか」
言い終わる前に、自分の口が勝手に叫んでいた。
「ベンティのキャラメルマキアート、エクストラショットで‼」
頼むつもりなんて、なかった。トールで十分だった。というか店は閉まっている。誰もいない。なのに手はスマホを取り出し、モバイルオーダーの決済ボタンを、意思とは無関係に連打していた。
ピロン。決済完了。ピロン。また一杯。ピロン。豆も買った。ピロン。タンブラーも。
「やめろ! 俺の金が! 無駄遣いすると鬼嫁に殺される‼」
天敵の名を叫んでも、指は止まらない。散財が、進化の燃料になっている。買えば買うほど、体が熱を帯びていく。
このままではいけない。俺は震える手で、進化の仕組みを理解し始めていた。
スクロール、そして課金。誰かが──画面の向こうの誰かが、俺を進化させている。
そしてたぶん、その誰かは今、次を読むために、指を動かそうとしている。
やめてくれ。次はまずい。
次に進化したら、俺は、たぶん、人間ですらなくなる。
っとその前に、次にバトンを渡す方は…(嫌な渡し方だな)
😎 迷探偵マツさん
予想では仮面ライダーWに変身してくれると思います😆
😍 たび. さん
カワうるさい顔で素敵な作品を量産されてる、憧れの存在です😊
🤩 ゆうねこさん
四コマ以外にもマルチに活躍されている本物のクリエーターです😊マジで神😻
(暗転)
──ここから先は、あなたの「課金」で覚醒します。
※8月16日 9:30 よりタイムセール開始
進化条件:課金すると覚醒する。
彼を最終形態にするかどうかは、あなたの指先にかかっています。
★★★★★★★★★『オープンエロ』
覚醒した。
ぱふぱふ、するであろう手が光っていた。
もっと具体的に言うと、乳首が、少し見えている。
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