「お祭りには、たどり着けなかった」
今日こそ、やってやる。
そう心に決めていた。屋台でビールを飲みながら、焼きそばを食べて、イカゲソを頬張る。子どもたちにはお小遣い2000円。でも私の心の中では——無限に使ったろう、と燃えていた。
先週のお祭りはつむぎのお昼寝で途中帰宅。今日こそリベンジのはずだった。
体操教室が終わった。
はなとお友達のイズナちゃんが「広場で遊ぼう」と言い出した。まあ少し遊んでからお祭りへ、という流れだろうと思っていた。鬼ごっこ、かくれんぼ、大人も混じって走り回る。楽しい。でも時間が経つ。
「お祭り、行かないの?」
恐る恐る聞いてみた。
「うん、行かない」
え。
気を取り直して、もう一人のお友達えみなちゃんとの合流の段取りを進めた。えみなちゃんは習い事の合間、15時に合流できる予定だ。場所はお祭り会場で——そのはずだった。
スーパーに自転車を止めて、いよいよお祭りへ出発という瞬間。
「行きたくない」
イズナちゃんが言った。
アイスが食べたいらしい。かき氷はどう?と聞いたが、お祭りのかき氷ではなく、イオンのアイスがいいという。スタバがいい。マックがいい。話がどんどん展開していく。
急いでスタバを見に行ったら、案の定席がない。お祭りで大混雑しているイオンで席が空いているはずがない。
そして会議が始まった。三者会議だ。子どもたちとパパの。
「お祭り、本当に行かないの?」
ここで私が気づいてしまった。はなに聞いてみると「お祭り行かなくていい」と言い出した。
さっきまでお祭りに行きたいと言っていたはずなのに。これは協調性なのか、友達の意見に流されているのか。でも彼女たちの世界では、それが今日の正解なのかもしれない。
結局、三階のフードコートでサーティワンアイスクリームを食べることになった。
サーティワンでは、スーパーマリオのコラボアイスが出ていた。試食してみると意外においしかったらしく、それに決定。ミニサイズがあったので、一人で食べさせることができた。心配性の私としては合格だ。
アイスを食べながら、子どもたちがこそこそ話をしていた。
えみなちゃんが今日合流する。えみなちゃんはマックのハッピーセットのマリオフィギュアをすでに7回もやっていて、でもまだ大好きなロゼッタのフィギュアを持っていない。イズナちゃんはロゼッタを持っている。
「えみなちゃんが来たらロゼッタがあると喧嘩になっちゃうから、しまっといた方がいいよね」
二人がそんな話をしていた。
隣にいたえみなちゃんのパパと目を見合わせた。笑いをこらえるのが大変だった。状況をよく分かっているな、と心底感心した。子どもたちは子どもたちなりに、ちゃんと相手のことを考えている。
15時、えみなちゃんが合流した。
「さあ、お祭り行こうか?」
もう一度聞いてみた。
「公園がいい」
三人の意見が一致した。お祭りは完全に消えた。
パパ三人は無言で顔を見合わせた。全員が心の中で同じことを思っていたはずだ。本当に行かないのか。
そして全員が心の中でもう一つのことも思っていた。三人の女の子が公園で仲良く遊べるか。喧嘩になったら面倒なことになるぞ、と。
結局まだ、私はお祭りの屋台飯にもビールにも、イカゲソにも辿り着けていない。あきらめないぞ。まだ15時過ぎだ。
子どもと一緒にいると、お金を使う時間がない。欲しいものはあるけれど、服は試着してから買いたい。ゴルフ用品もサイズが心配だ。だからこういうお祭りの時こそ、屋台でパーっと使いたい。
子どもと行く予定は、子どもが決める。それが分かっていても、懲りずに期待してしまう。
