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なぜ、YAMAHA HS5なのか?

自分のツボを押さえる

今回は、オーディオの話です。
私は小さい頃から音楽が大好きでしたが、歌が上手いわけでもなく、楽器ができるわけでもありません。でも、音楽が好きなことに変わりはないので、自然とオーディオ趣味に力を入れるようになりました。
社会人になって収入を得るようになると、オーディオ趣味はだんだんエスカレートしていきます。無駄に当時の評判の良い製品を導入しては、納得いかずに買い換える。ときどき、必要以上に高額な機器にも手を出しますが、結局納得いかずに手放して違う製品を買う。これの繰り返しでした。もちろんそれだけでは事足りず、一本数万円のケーブルを何本も買ったり、よくわからないアクセサリー類に大金を投じたり、オーディオラックに凝ってみたり。
でも、それらの機器やアクセサリーは、現在ひとつも手元に残っていません。手元に残しておいてもよかったと思えるものも無くはなかったのですが、今のスタイルを考えると手放してよかったのだと思えます。
オーディオに疲れたのかもしれませんし、使いこなせてなかったのも間違いないでしょう。でも、手放してよかったと思える一番の理由は、自分自身のツボをちゃんと押さえれてなかったのだと思います。

YAMAHA HS5には、スピーカースタンド K&M 26772を使っています

そんな私が行き着いたスピーカーが、YAMAHA HS5というモニタースピーカーです。このスピーカーを軸にシステムを組んでいます。
HS5は2013年に登場以来ベストセラーを続けているのですが、販売が開始されて12年も経ちます。さすがに、いまさら感があるかもしれません。今主流になりつつあるDSPも内蔵してません。でも、個人的には決っして古さは感じません。それどころか、今でも優秀なスピーカーだと考えています。

HS5はパワードスピーカーです。70W(LF: 45W/4Ω, HF: 25W/8Ω)のアンプが一本のスピーカーに内蔵されています。それなのにペア3万円台と価格はとても手頃。音楽制作用としての基本性能が高いのに低価格で、とても評判が良い定番スピーカーの一つです。これをリスニング用として使っているわけです。
音楽制作のためのモニタースピーカーがリスニングに適しているのか?音の粗探しみたいになって音楽が楽しくないのではないか?そう思う方は少なからずおられると思います。しかし、決してそんなことはありません。要は、自分が求めるものをそのスピーカーが持っているかどうか、つまり自分のツボを押さえれているかどうかです。それがわかっていないと無駄に散財することになるのだと思います。まさに昔の私です。
自分のツボには、音質だけでなく見た目や質感の好み、ブランドイメージも含まれます。人によってはツボを押さえるために、それなりにお金がかかる場合もあるでしょう。でも、音に関しては必ずしもそうとは言い切れません。
私がHS5の音で気に入っているのは、中高域のキレの良さと抜けの良さ、そして軽快さです。これが楽器や声が持つ音のスピード感に近く感じられるのです。まさに、これはまさに私の押して欲しいツボでした。
このスピード感は、比較的小口径の5インチウーファーであることも大きいのでしょう。ただ、他のメーカーの同クラス製品のすべてが同様の軽快さを持ち合わせているわけではないので、ヤマハならではの音作りなのかもしれません。

パワードスピーカーはアンプが内蔵されています。それはオーディオマニアの視点では、いろいろなアンプと組み合わせる楽しみが減るのかもしれませんが、私にとっては最適のパワーアンプが内蔵されている事は、メリット以外の何物でもありません。機材もケーブルもコストも減らせるし、場所も取りません。スピーカーとの組み合わせに悩まされることもないのです。

フラットが良いわけではない

モニタースピーカーはフラットな音だと良く言われますが、全てがそうではありません。HS5も決してフラットなスピーカーではありません。HS5は中高域に対して低域はどうしても弱いのです。これは多くのユーザーの方が指摘しています。逆に、中高域の特定の帯域はちょっと強めに感じます。普通ならそれは欠点になり得ます。でも、それがこのスピーカーの特徴になっているのでしょう。私が気に入っている中高域のキレの良さも、そこに関係があるのかもしれません。となると、フラットではないことは決してマイナスではないということになります。
実際、周波数特性をフラットにすると、音楽がつまらなくなると主張される方もおられます。それがどういう理由でそう感じるのか、専門的な知識があるわけでもないので私には説明できませんが、HS5の音とメーカーが公開している周波数特性を見比べても「確かにそうかもしれないな〜」とは思ってしまいます。適度なアクセントが特有の音色を生み出すのでしょう。

自分は、どの部分の感度が高いのか?

大いに気に入って愛用しているYAMAHA HS5ですが、ペア3万円程度のスピーカーですから完全なわけがありません。
プロが使うモニタースピーカーは基本的に音をチェックするために、楽器一つ一つの細かな音まで聴き取りやすいものがほとんどです。いわゆる解像度が高いと言われる部分です。HS5も例外ではありません。しかし、その解像度は適度なもののように感じます。正直なところ、HS5は一つ一つの細かな音を事細かに明確に描き出す、というところまでは行っていません。あくまでも「ほどほど」です。でも、これが私にはちょうど良いのです。
解像度が高すぎると、音の輪郭を強調しすぎて音楽が不自然に感じる場合も少なくありません。細かな音はある程度ちゃんと聴こえて欲しいけど、聴こえすぎて欲しくない。つまり、これは私の細かな音に対する感度がほどほどだということでもあります。だから、そこは「ほどほど」でよいのです。

自分のツボは、自分の感度が高いところでもあります。逆にそうでないところの感度は決して高いわけではありません。感度が低いところは力を入れなくても良いわけです。場合によっては無視したって構いません。自分はどの部分が感度が高いのか?それを見極めれれば、スピーカー選びはとてもラクになるはずです。

HS5の欠点は?

低音がある程度出る方が好みな私にとって、低域が弱いのは完全に欠点と言えるでしょう。セッティングなど使いこなしで多少カバーはできますが、それでも同クラスの他のメーカーと比べると低域はあまり出ていません。例えば、ドラムやベースの低音は軽めだし、ピアノの低音も重厚感に欠けます。そして、少々低音のディティールに欠ける印象です。
しかし、それも音量を上げるとあまり気にならなくなります。ただ、その音量は近所から苦情が出るレベルに近いものです。つまり、実は低音はある程度出て入るけど、中高域に対して相対的に出力レベルが低いと言えると思います。
YAMAHA HSシリーズにはサブウーファーが別売りで用意されているので、それを使う前提なのかもしれません。ただ、サブウーファーは場所も取る上に、超低域の処理がやっかいです。賃貸ではリスクが大きいので、私は現時点では導入していません。ただし、別の方法で低域対策をしています。そのおかげで、私にとってのHS5の大きな欠点はかなり改善しました。それに関しては、また別の機会に書こうと思います。

HS5は「ちょうど良い」

HS5は、8畳間にはちょうど良いサイズです

HS5は価格を大きく超えた性能を持ったスピーカーです。あまりコスパが良いという表現は使いたくありませんが、一般的にはコスパが良いスピーカーとして認知されていると思います。ただ、それは「安い割に良い」ではなく「安いのに良い」ということだと思っています。

サイズもとても扱いやすく手頃です。デスクトップには少々大きいかもしれませんが、私のような純粋なオーディオシステムとしての使い方でしたら、ちょうど良いように感じます。現在8畳の洋室で使ってますが、小さすぎる感じはありません。HS5でも部屋の方が限界が来るような音を出す事は十分に可能です。おそらく上位モデルのHS7やHS8だったら完全に音が飽和してしまうでしょう。
上位モデルの方が周波数特性もフラットに近くなり、低音の再生能力もグッと上がりますが、HS5独特の中高域のキレとスピード感も失われるかもしれません。HSシリーズはツィーターは共通ですがウーファーの大きさが違うので、小口径ウーファーならではの良さがHS5にはあると考えているのです。

もともとロックが大好きな私ですが、今ではジャズもクラシックもワールドミュージックもよく聴きます。そんな様々な音楽をHS5は気持ちよく聴かせてくれます。それは、音楽制作用のモニタースピーカーとして設計されているので、基本的には余計な演出や色付けが少ないからだと思います。
そして、サイズも含めて性能が「ちょうど良い」のです。部屋に対して程よいサイズ感と、それに合う性能と音質。そしてデザイン。主張しすぎる事なく、でもモニターらしい精悍さを備えたデザインは適度な存在感があります。高級感はあまりありませんが決して安っぽくもありません。この「ちょうど良さ」が大きな魅力なのです。

オーディオはあくまでも音楽を楽しむためのツールです。そういう意味では、音楽に没頭できる良さをHS5は持っているように感じます。つまり、オーディオのことをあまり考えなくて済むのです。
もちろん、導入してしばらくは「もっと良くなるのではないか」と使いこなしに奮闘していました。しかし、今はすっかり落ち着き、音楽に没頭できています。使いこなしのために使ったお金も労力も、オーディオに没頭していた頃と比べると微々たるものです。

HS5はもともと、プロユースのスピーカーです。そういう点でも長く安心して使える製品だと思います。導入してまだ3年ほどですが、このスピーカーに飽きる事はありません。むしろ、そのポテンシャルに驚かされることもしばしばです。HS5との付き合いは長いものになっていくのは間違いありません。


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