見出し画像

令和のショーンKは中国にいたという話

今日は少し前のニュースなんですが、とても気に入ったので取り上げます。

中国で大学教授の任についていた人物が、経歴の詐称を告発され解雇されたという話なのですが、驚くのはその実態です。

男の名は郭偉。江蘇科技大学に2023年から勤務し、教授、首席科学家、博士生導師(博士の指導資格を持った人らしい)を務めていました。

彼の経歴には、なにやら凄そうな文字がずらっと並びます。

・1994年 陕西省理科高考状元(大学入試の成績トップ)
・西安交通大学で学士・修士取得
・米国・日本(カリフォルニア大学、九州大学など)で博士号取得
・ドイツ国立研究機関勤務
・SCI論文170本以上
・国際特許68件
・ロシア工程院に「外籍院士」として所属

しかし、同大学院の学生からはまともな指導をしてもらえないと不満の声が上がったり、ネットではこの人物の経歴に矛盾があるのではないか、という指摘がいつのころからか相次ぎました。この人、本当にそんな立派な人なのか?という疑問が出されたわけです。

そして最近になって本格的に調査が入ったところ、彼の経歴のほとんどが詐称、もしくは裏付けが不可能な信憑性の乏しいものであるということがわかりました。

その調査でわかった経歴の実態もなかなかです。まず、本人は大学入試主席どころか、大学に通ってすらいなかったそうです。つまり高卒です。

論文の実績とされていたものは、査読もろくになく、パクリ論文でも載せてしまうような学術雑誌(いわゆるハゲタカジャーナル)に投稿されたものか、あるいは同姓同名の他人によるものを自分の業績と偽っていただけでした。

大学に来る前は、ナノ材料や先端技術を名乗る企業をいくつも立ち上げたり関わったりしていたとされています。学者というよりは、「技術系の経営者」、あるいは「研究者風のビジネスマン」のような装いでした。

ただその企業活動の中でも訴訟や信用問題が度々起こっており、当時から胡散臭い人物ではあったようです。いわば「科学ゴロ」とでもいうのでしょうか。

しかしその「科学ゴロ」が、いったい何をどうやったのかバレるまでは大学教授の座を得ていたというのですから、むしろ感心や畏敬の念さえ湧いてこようというものです。

我が国にもかつてショーンKという逸材がいましたが、彼のような「経営コンサルタント」という正解のないふわっとした分野・肩書きではなく、科学という厳密性が何よりも重んじられる場で同じことをやってのけたという点では、その「凄み」はこちらのほうが一歩勝る印象です。

ちなみに同人物はすでに解雇されており、刑事事件として訴訟され取り調べを受けている最中のようです。なんというか、頑張れよと思います。

+++++

いや、大学教授としての給料や科研費を不正に受け取っていたという意味ではれっきとした犯罪だし、騙された大学や彼のもとで「指導」された学生には気の毒ではあるんですが、どうしてもこの事件のことを考えると微笑みが止まりません。

なんかこう、この事件が「俺たちの知っている中国」を体現しているような事件のような気がするからです。

ここから先は

778字
この記事のみ ¥ 300
Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

月額マガジン「中国を言葉にするマガジン」の読み放題版はこちらからどうぞ。購読期間中は1000以上の有…

中国を言葉にするマガジン 読み放題版

¥800 / 月

いただいたサポートは貴重な日本円収入として、日本経済に還元する所存です。