母を知らない少女は、誰を母と思って育ったのか--「あなたは、私の光の人・・」【ラブロマンス派のあなたへ】
母を知らない少女は、誰を母と思って育ったのか
――会ったことのない人を、人は愛することができるのだろうか
生まれたときから、母の記憶がない。
声も知らない。
抱かれた感触も覚えていない。
それでも周囲から、その人の話を聞きながら育つ。
そのとき、母は現実の人なのでしょうか。
それとも、語り継がれる物語になるのでしょうか。
歴史小説『Lost light 失われた光』の第10話で登場する壹與(いよ)は、母は生み別れ、母である日向姫(ひむかひめ)を知らずに育ちます。
では、彼女は誰を母と思って生きたのでしょうか。
日向姫と壹真(いっしん)の“禁じられた恋”の末に生まれた娘の壹與。
ネタバレを避けつつ今回は、いよいよ物語の核心に迫っていきます。
壹與の中の母は、記憶ではなく言葉から作られた
壹與には、日向姫と過ごした思い出がありません。
今みたいに写真や動画がなかった時代のことです。
母の姿は、父の壹真や周囲の人々が語る言葉の中にあります。
強い女王だった。
人々を救った。
未来を願っていた。
壹與にとって日向姫は、実在した母であると同時に、あまりにも大きな伝説です。
娘として母を慕う気持ちと、後継者として母を意識する気持ち。
その二つは、壹與の中で複雑に重なっていきます。
母の代わりになった人はいたのか
壹與を育てたのは壹真です。
食事を与え、言葉を教え、守り、叱り、成長を見届ける。
それは乳母や女官たち、そして父の役割であると同時に、母の不在を埋める役割でもあります。
けれど彼女たちや壹真は、日向姫の代わりになることはできません。
壹與もまた、壹真を母とは呼ばないでしょう。
それでも、母から受け取るはずだった“ぬくもり”の一部を、壹真から受け取って育ったのだと思います。
壹與にとって母は、会いたい人であり、越えなければならない人
壹與は母を慕いながら、同時にその存在の大きさに苦しむかもしれません。
卑弥呼の娘。
偉大な女王の後継者。
母ならどうしたか。
母のようになれるか。
周囲から期待されるが故のプレッシャー。
会ったことのない母に比べられながら生きることは、壹與にとって重い運命です。母を愛しながら、母とは違う自分にならなければならない。
16歳になり、思春期の娘は反抗期で、父に対する嫌悪感を抱いたかも知れません。
これらが壹與の不安と共に、成長へと繋がって行きます。
本当の母は、血ではなく光として残った
壹與は日向姫の記憶を持っていません。
記憶がない・・・。
けれど、日向姫が守ろうとしたものを受け継いでいます。
それは、
人を鎮める力。
国を思う心。
誰かの未来を守ろうとする意志。
壹與の中で母は、顔や声ではなく、受け継がれた光の存在として、
あるのかもしれません。
この感情を聴くなら――「Light of Mine」
「Light of Mine」の光は、壹與にとって、知らない母から届く光にも聞こえます。
姿を覚えていなくても、自分の中に何かが残っている。
その光をたどることで、壹與は母の存在を感じます。
母を知らない少女が、母の光を受け継ぐ。
「あなたは、私の光の人・・」
その静かなつながりが、壹與の物語の始まりです。
本編へ
壹與が日向姫について語る場面だけでなく、壹真の表情にも注目してください。
壹與が母を知ろうとするたび、壹真は愛した日向姫を思い出します。
母を知らない娘と、母を忘れられない父。
二人の間で、日向姫は記憶と物語の両方として生き続けています。
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