Claude × Skills/Projectsで、ブランド戦略の社内研修資料を全部作らせてみた
はじめに——「研修資料を作る時間がない」問題
「消費者に選ばれる確率を最大化するにはどうすればいいのか」——マーケターなら一度は向き合う問いです。
『確率思考の戦略論』を読んで以来、「ブランドの重心」や「ブランド・エクイティ・ピラミッド」といったフレームワークをチームに浸透させたいとずっと思っていました。
でも現実には、研修資料を作る時間がない。スライドを1から構成して、図解を描いて、ワークショップ用のExcelも作って……となると、業務の合間にやるには重すぎます。
そこで試してみたのが、Claude(Anthropic社のAI)のCoworkモードを使って、研修に必要な資料を一式まるごと作るというアプローチです。
結論から言うと、PPTX研修スライド・ワークショップ用Excel・図解入りワークシート(PPTX&HTML)まで、ほぼ会話だけで完成しました。
この記事では、実際にどんな成果物ができたのか、Claudeにどう指示を出すと精度が上がるのか、そしてどこに人間の判断が必要だったのかを共有します。
今回作ったもの(研修スライドテンプレートはダウンロード頂けます)
テーマは「ブランド戦略の言語化」。『確率思考の戦略論』で紹介されている「ブランドの重心」と「エクイティ・ピラミッド」を軸に、社内チームが自社ブランドの戦略を言語化できるようにするための資料一式です。

Claudeとの会話で生成し、最後はClaude in PPT(ClaudeでPPTXを直接操作できる機能)で見た目を仕上げています。
今回の記事では、研修スライドを中心に紹介します。作成したテンプレートは下記からダウンロード頂けます。
そもそも何を教える研修なのか
Claudeに指示を出す前提として、「何を伝えたいか」は人間側で持っている必要があります。ここだけ簡単に触れておきます。
ブランドの重心
ブランドが市場で構造的に有利なポジションを取るために、3つの条件が重なる一点を見つけるフレームワークです。

Consumer Value(消費者価値) ——
消費者の本能レベルの欲求に刺さる価値があるか。
Company Edge(自社の強み) ——
その価値を、自社ならではの強みで実現できるか。
Competitive Defense(競合防御) ——
競合が真似しにくい構造的な障壁を持てるか。
この3つが重なるところが「勝ち筋」の核=重心です。売上の源泉であるプレファレンス(選ばれる確率)を構造的に高めるポジションとも言えます。
ブランド・エクイティ・ピラミッド
重心を見つけた後、それを顧客接点に落とし込む設計図として使うフレームワーク。Who → What → How の3段構成で、ブランドのコンセプトを明文化します。

Who(頂点) ——
誰に届けるか。戦略ターゲットとコアターゲット。
What(中段) ——
何を届けるか。機能的便益・情緒的便益・RTB。
How(底辺) ——
どう届けるか。プロダクト施策・コミュニケーション施策。
上段ほど変えにくい「不変の核」、下段ほど柔軟に入れ替えられる「可変の実行層」です。
Claudeでどう作ったか
全体の進め方
一気に「全部作って」とは頼みません。1つずつ成果物を完成させて、次に進むやり方で進めました。
大まかな流れはこうです。
① 研修スライド(PPTX 18枚)を作成
② ワークショップ用Excel(4シート)を作成
③ 図解ワークシート(HTML版)を作成
④ 図解ワークシート(PPTX版)を作成
⑤ Claude in PPTで最終的な見た目の仕上げ
ClaudeにはSkillsという機能があり、PPTXやExcelの生成に特化したスキルを読み込ませることで、レイアウトやデザインの品質が格段に上がります。
さらに自分で作ったカスタムスキル(社内スタイルのデザイン定義など)を読ませれば、トンマナにも合わせられます。
そして、Coworkで生成したPPTXはClaude in PPTで最終調整しています。
テキストの微修正、レイアウトの微調整、フォントサイズの統一など、「あとちょっとここだけ直したい」をPowerPoint上で直接Claudeに指示できるのが便利でした。
指示するときの4つの工夫

工夫①:構造→中身の順番で指示する
最初から細かい文言を指定するより、まず全体構成を決めてから中身を詰める方が精度が上がりました。
研修スライドでは、最初に「ブランドの重心とエクイティ・ピラミッドを解説する社内研修資料を18枚前後で」と伝え、Claudeが出した構成案をレビューしてからGO。構成レビューを1ステップ挟むだけで手戻りが激減します。
工夫②:図解は参考画像を1枚渡す
ピラミッド図を作る際、最初のアウトプットは各段が均等な台形の積み重ねで、ピラミッドというよりレンガの壁みたいでした。
マズローの欲求階層説の画像を参考で渡し、「このようなきれいな三角形にしてほしい」と伝えたら一発で自然な形に。言葉だけで伝えるより画像1枚の方がはるかに速いです。
工夫③:フィードバックは具体的に
「もっときれいにして」では改善の方向が定まりません。「上から1段目がWho、2段目がWhat、3段目がHow。
Brand Characterと市場定義の層はいらない。3段構成にして」のように、何を残して何を削るかを具体的に伝えると一発で通ります。
工夫④:カスタムスキルで社内トンマナを再現
社内スタイル(ダークネイビーのヘッダーバー、Noto Sans JPフォント、白背景ベース)を定義したスキルファイルを使いました。
これにより、生成されるスライドが最初から社内資料のトンマナに合っていて、毎回色やフォントを指定し直す手間がなくなります。
成果物:図解ワークシート(PPTX 10枚)
研修で学んだフレームワークを、自社ブランドに当てはめて記入するための実践用ワークシートです。こちらもClaude in PPTで最終仕上げを行っています。
Part A:ブランドの重心(スライド1〜6)
表紙 → ベン図概要 → Consumer Value記入 → Company Edge記入 → Competitive Defense記入 → サマリー(3条件を統合し、重心を一文で言語化する)
Part B:エクイティ・ピラミッド(スライド7〜10)
ピラミッド概要図 → Who記入 → What記入 → How記入
各スライドには、書くべき内容を引き出す問いかけ(ガイド)と入力欄が入っています。PowerPointで直接テキストを打ち込むだけで、戦略ドキュメントとして完成する設計です。
ワークショップで使う場合は、Part Aを前半60分、Part Bを後半60分の計2時間が目安。参加者はマーケ・開発・営業など3〜5名の異職種混合がおすすめです。
やってみて感じたこと

Claudeが得意だったこと
スライド・Excelのファイル生成はSkillsを使えばレイアウト・配色・フォントまで整った状態で出力されます。
手作業で1枚ずつ作るのとは比較にならないスピード。フレームワークの構造化も得意で、「こういう概念を伝えたい」と言えばスライドの構成案・見出しの切り方・伝える順番を提案してくれます。壁打ち相手として優秀です。
そしてClaude in PPTでの仕上げが思った以上に使えました。
Coworkで生成した叩き台を、PowerPoint上で「ここのフォントを揃えて」「この図をもう少し右に」と直接指示できるので、最後の微調整がスムーズ。生成→仕上げの流れが一気通貫でClaude内で完結します。
人間が判断すべきだったこと
「何を伝えるか」の設計——フレームワークの選定や、どの要素を残して削るか(5段ピラミッドを3段に簡略化する判断など)は人間にしかできません。
図解の「自然さ」のジャッジも、参考画像を渡して具体的にフィードバックしないと直らない場面がありました。
一番の学び
「何を作るか」を決めるのは人間の仕事で、「どう作るか」はAIに任せられる。
研修の目的設定や「5段ピラミッドは複雑すぎるから3段に絞る」といった取捨選択は、業務文脈を知っている人間にしかできません。
でもそれが決まれば、18枚のスライド構成を考え、図解を描き、Excelシートを設計し、HTMLのUIを実装するところまでClaudeが担ってくれます。
体感としては、資料の「制作」にかかる時間の8割くらいをAIに渡せた感覚です。
浮いた時間を「何を伝えるべきか」の設計に使えたことで、研修の中身そのものの質も上がったと思います。
おわりに
「研修資料を作りたいけど時間がない」は、たぶん多くのマーケターが感じている課題だと思います。自分自身、フレームワークは頭に入っているけど資料化する余裕がなくて、結局チームへの浸透が進まない……という状態がずっと続いていました。
Claude Cowork × Skills × Claude in PPTを使ってみて実感したのは、資料の「制作」をAIに委ねることで、自分は「何を伝えるか」の設計に集中できるようになるということです。
マーケターの本分は資料作りではなく、戦略を考え、チームを動かすこと。AIはそのための時間を作ってくれるツールだと感じました。
