「社員に考えてほしい」と言いながら、社長が答えを出していないか
前回は、
「ファシリテーターは、ただの司会ではない」
というテーマで書きました。
参加者から意見を引き出し、論点を整理し、次の行動につなげる。
ファシリテーターとは、会議を進行する人ではなく、**「考える場をつくる人」**だと書きました。
今回は、会議についての最後の記事として、社長自身の話し方について考えます。
1.「どう思う?」の前に答えを言っていないか
「社員には、もっと自分で考えてほしい」
経営者からよく聞く言葉です。
ところが会議になると、
「私はこう思っているんだけど、みんなどう思う?」
と、社長が先に自分の考えを話してしまうことがあります。
一見、意見を求めているように見えます。
でも、社員は本当に自由に考えられるでしょうか。
社長が先に方向性を示せば、
「自分ならどうするか」
ではなく、
「社長の考えにどう合わせるか」
を考え始めます。
社員が考えないのではなく、考える前に答えを渡してしまっている。
そんなこともあると思います。
2.社長の一言には力がある
社長にとっては、単なる一つの意見でも、社員にとっては違います。
社長の発言には、役職も権限もあります。
だから社長が、
「今回はA案かな」
と言ったあとに、
「私はB案です」
と言うのは、意外と難しい。
社長本人に圧力をかけているつもりがなくてもです。
だからこそ、社員に考えてほしい場面では、
社長が先に答えを言わない。
これは大切だと思います。
3.少し待つ
まず社員に聞く。
「営業としてはどう思う?」
「製造から見るとどう?」
「この案の問題点は何だと思う?」
そして、少し待つ。
沈黙すると、つい社長が答えを言いたくなります。
その方が早いからです。
でも、
早く答えを出すことと、人が育つことは同じではありません。
社員に考えてほしいのであれば、考える時間も渡す必要があります。
毎回答えを渡しておいて、
「うちの社員は自分で考えない」
と言うのは、少し違うのではないでしょうか。
4.それでも社長が決めることはある
もちろん、社長は何も言ってはいけない、という話ではありません。
会社の方針や大きな投資、人事など、最終的に社長が判断することはあります。
社員の意見を聞いたからといって、すべて多数決で決める必要もありません。
大切なのは、社員に考えてもらったうえで、最後は責任を持って決めることです。
そして、できれば、
「なぜそう判断したのか」
まで伝える。
何を見て、何を考え、何を基準に判断したのか。
それを伝えることで、社員の中にも少しずつ、
「会社としての判断基準」
が蓄積されていきます。
5.会議は、社員が判断する練習の場
会議は、単に報告をする場ではありません。
社員が考え、意見を出し、判断する練習の場でもあります。
社長がすべて考え、すべて決める。
その方が短期的には早いかもしれません。
でも、それを続けていれば、
社長がいなければ何も決まらない会社
からは抜け出せません。
「社員が考えない」
「幹部が決められない」
「何でも社長に聞きに来る」
そんな状態なら、社員だけを見るのではなく、
社員が考え、判断する機会を会社としてつくってきたか
も考える必要があります。
会議は、会社の縮図です。
会議を変えることは、会社の仕事の進め方を変えること。
そして「脱・社長依存」を目指すなら、
社長がその場にいなくても、考え、判断し、行動できる会社
をつくっていく必要があります。
会議についての記事は、今回でいったん終わりにします。
次回予告
次回からは、少し趣向を変えます。
「難しそうな経営理論を、現場の言葉で考える」
そんなシリーズを書いてみたいと思います。
「組織論」
「組織行動論」
「管理会計」
「制約理論」
言葉だけを見ると少し難しそうですが、実際の会社で起きていることに置き換えると、意外と身近な話です。
次回は、
「組織論って、結局どういうこと?」
から始めます。
実際の会社の例や簡単な図も使いながら、できるだけ分かりやすくお伝えします。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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井口大成|製造業専門"脱・社長依存"コンサルタント/株式会社サンアローズ
