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「人の行く裏に道あり」渋滞を避けて出会った,湊線の魅力

■ なぜ湊線へ?

お正月,初詣のために茨城県ひたちなか市の酒列磯前神社(さかつらいそさきじんじゃ)へ向かいました。

酒列磯前神社は,広葉樹がトンネルのように続く参道,海が見える鳥居,そして神々しい拝殿が魅力で,いつ訪れても清々しい気持ちになります。

しかし,この日はあいにくの大渋滞。駐車場に入る列は一向に進まず,一体いつになったら参拝できるのやら…。

結局,後日出直すことにして,引き返しました。

翌朝,名案が浮かびました。

「道路が混んでいるのなら,電車で行けばいいんだ。湊線(みなとせん)に乗って磯崎駅から歩こう。久しぶりに湊線の旅も楽しみたいし…」



■ 「ひたちなか海浜鉄道」と「湊線」について

「ひたちなか海浜鉄道」が会社名で,「湊線」(みなとせん)が路線名です。

茨城県ひたちなか市の勝田駅から阿字ヶ浦駅までの全11駅を結ぶ,全長14.3kmの路線です。

茨城の住民は,「湊線 」と呼ぶことが多いです。




■ 勝田(かつた)

湊線の起点は,JR勝田駅。

JR勝田駅

乗り場は,JR勝田駅の1番線で,ホームの端っこにあります。

こちらが,旅の入り口です。

ひたちなか海浜鉄道のホーム

まずは窓口で「湊線1日フリー切符」(¥1,000円)を購入しました。

時刻表を見ると,概ね30分に1本運行されており,思いのほか使い勝手が良さそうです。


湊線の見どころの一つが,各駅の名所や名産品をモチーフにしたデザイン文字の「駅標」です。

勝田駅だけは,ひたちなか海浜鉄道のシンボルカラーであるオレンジ色で,車両と社名ロゴが描かれています。

イラスト入りの駅標

ホームにある,驚くほど長い木のベンチに腰かけて,列車の到着をわくわくしながら待っていると,

長すぎるベンチ


カラフルな車両が入ってきました!


車体には,沿線の観光スポットである「国営ひたち海浜公園」の大観覧車や那珂湊の反射炉,船などが描かれています。






■ 車内の様子

一歩足を踏み入れると,車内はまるで昭和へタイムスリップしたかのよう。

懐かしい書体の運賃表や注意書きが並び,座席の近くにはプラスチックのごみ箱が置かれています。

ノスタルジックな車内


プラスチックのごみ箱

次は,正面の窓をご覧ください。

まっすぐに伸びる線路の先の,知らない世界へ行ってみたい。そんな旅情をかき立てられます。

まっすぐな線路


周囲には高い山はなく,車窓には稲刈りを終えた,のどかな田園風景が広がります。

柔らかな日差しが車内に降り注ぎ,まるで春のような暖かさです。

稲刈り後の田んぼ




■ 金上(かねあげ)

工機前を通り,2つめの停車駅,金上に到着しました。

勝田から金上までは,「勝って金(運)が上がる」と言われており,縁起の良い区間です。

このため,勝田から金上までの「縁起のいい切符」(¥150)も販売されています。

金上の駅標


わずか数分で次の駅に着くため,駅舎やユニークな駅標を見逃すまいと,大忙しです。




■ 那珂湊(なかみなと)

次は,1913年(大正2年)開業の歴史ある「那珂湊駅」です。

「関東の駅百選」にも選ばれている駅なので,途中下車してみることにしました。


モチーフ入りの駅標


昔ながらの駅標


ホームには猫の絵がずらりと飾られています。木組みの屋根が美しい長いホームは、いつまでも眺めていたくなります。

猫の絵


木組みの屋根


「あれっ,ベンチに猫のぬいぐるみ?」
と思って近づいてみると…,

「あっ,動いた!」
本物の猫でした。

駅猫ミニさむ
ミニさむの指定席

こちらの猫は,那珂湊の駅猫「ミニさむ」。

先代の駅猫「おさむ(黒猫のタンゴの宮川おさむさんにちなんで命名)」が天国へ召され,その妹分です。

ミニさむは,日々,駅の見守りや町のパトロールに励んでいるとのこと。

改札を通り,駅の待合所へ向かうと,列車の模型の展示,鉄道グッズやご当地グルメ「那珂湊焼きそば」の販売などがあり,見ているだけで楽しくなります。

車両の模型の展示

そこで,銀色の車体に「ケハ」と書かれた模型が目に留まりました。

「キハ」,「クハ」は見ることがありますが,「ケハ」は初めてです。

案内ボランティア方に尋ねてみると,
「これは日本初のステンレス製気動車です。軽油で動いていたから,軽油の『ケ』をとってケハと言うんですよ」
と教えていただきました。

さて,待合室では,帽子をかぶり,赤い洋服を着たシニア世代のマダム達が,ベンチに腰かけ,ギターを弾きながら歌を歌っていました。

その優しい歌声は,BGMのようにしっとりと場の雰囲気に馴染み,心が癒されました。

さて,こちらは駅舎正面です。

入り口の自動販売機には,この地域らしいアンコウの模型がちょこんと置いてあります。

1913年開業 那珂湊駅

駅舎を出て,案内板に従って少し歩くと,鉄道車両が展示されているエリアがありました。


(敷地内に入ることはできなかったので,道路側から撮影しました)

 



敷地外の道路から眺めると,車両が並ぶ中でひときわ異彩を放つ,シルバーの車体を発見!

これこそが,先ほど模型で見た「ケハ601」です。

車体の表面にある凹凸が,まるで「洗濯板」のように見えました。

かつて軽油で走っていたこの車両,一体どんな乗り心地だったのでしょうか。

ケハ601




干し芋の作り方が描かれている


レールで作ったフェンス


踏切内を走る車両


那珂湊は,駅構内も周辺の町並みもレトロで,つい長居したくなる魅力がありました。




■ 磯崎(いそざき)

いよいよ今回の目的地,酒列磯前神社へ向かうため,磯崎駅で下車します。

ちなみに,神社名は「さかつらいそき」と濁りませんが,駅名は「いそき」と濁ります。

磯崎駅の駅標


磯崎駅

駅から神社までは,歩いて10分ほど。前日の大渋滞が嘘のようにスムーズに参拝を済ませることができました。

神社の素晴らしい景観については,また別の機会に詳しくご紹介したいと思います。



■ 阿字ヶ浦(あじがうら)

湊線の終着駅,阿字ヶ浦に来ました。

あじがうらの「う」が消えていた


阿字ヶ浦駅と鉄道神社

阿字ヶ浦駅の最大の特徴は,引退した車両「キハ222」をご神体として祀った「鉄道神社」があることです。

キハ222を祀った鉄道神社


キハ222(青)の後ろにはキハ2005(赤)が続く

青い車体のキハ222は,北海道の羽幌炭鉱で使用されており,赤い車体のキハ2005は,北海道の留萌線を走っていました。

キハ222は,「現役期間 ディーゼル車 全国1位」を記録し,しかもその間ずっと「無事故」だったという伝説を持っています。

その実績から,長寿や交通安全,受験合格のご利益があるのだとか。

また,鉄道には「連結」がつきものなので,縁結びや商売繁盛の神様としても親しまれています。

まさに、ご利益満載のパワースポットです。

阿字ヶ浦駅




ところで,ひたちなか海浜鉄道には,ここ阿字ヶ浦駅から「国営ひたち海浜公園」付近まで路線を延ばす計画があるそうです。

地方鉄道の廃線ニュースが多いなか,明るい話題に嬉しくなります。

ひたち海浜公園まで路線が伸びる予定


■ おわりに

今回,お正月の渋滞をきっかけに,急きょ鉄道の旅へと切り替えました。

移動手段を変えたことで,初詣がスムーズにでき,車では見落としていた景色に出会い,湊線の魅力にも触れることができました。

人の行く裏に道あり花の山

混雑する場面を避け,あえて違う道を選んだ先には,素晴らしい発見がある。そんなことを実感した新春のひとときでした。



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