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夫がおるのに別の男の顔を思い出す夜のきみへ

「あの人、目が優しいなって思ってしまった」

土曜の夜9時。洗い物しとる旦那の背中を見ながら私はさっき職場の男の顔を思い出しとった。

俺は今まで1万件を超える相談を聞いてきた。夫がおるのに別の男の顔がふっと浮かんでそのたびに罪悪感で自分を責める既婚女性の話はこの5年で本当に増えたんよ。マッチングアプリで再会した昔の同級生。職場の隣の席の男。SNSでフォローしてくれた誰か。名前も職業も違うけどみんな同じセリフを口にするねん。

「私、こんな女やったんかな」

これは半分本当で半分嘘やねん。


洗い物しとる背中で別の男の顔が浮かぶ日

まずなんでこんな夜が来るのかっていう話をさせてほしいねん。

夫と付き合って結婚して子供もおる。仕事もある。友達との予定もある。何も足りへんはずやのにある日突然、職場の男が笑った瞬間に胸がざわつく。あの人私のこと見てた気がする。そんな一つの視線を家に持って帰って夜に洗い物しとる旦那の背中を見ながら思い出す。

これはきみが軽い女に堕ちたわけやないんよ。

民間の既婚男女向けの意識調査で見た数字がある。30-40代の妻の3割前後がこの1年の間に夫以外の男性に胸がざわついた経験があると答えとる。10年前は2割弱やった。この10年で1.5倍に増えとるねん。もう一つ別の民間の家庭生活リサーチを見ると結婚5年以上の女性のうち5割超が夫との会話が業務連絡だけになったと答えとる。

Xを開けば「夫は嫌いやないけど別の男の顔が浮かんでしまう」「不倫まではせんけど想像だけで済ませとる」の投稿が毎週数千から数万リポストで流れとるんやわ。恋愛のはずやった結婚が長い時間の中で家事分担のペアに変わっていって、そこに女としての自分を置く場所がなくなっていくねん。

なんでこうなるかというと結婚が「終わり」やなくて「途中経過」になった時代やからやわ。20代で結婚しても平均寿命は90歳近い。あと60年、同じ人と目を合わせて生きていくというのは実は人類の歴史の中でも新しい話や。夫と結婚した瞬間に女としての自分がスイッチオフされるわけやない。むしろ40代の今の方が若い頃より人を見る目が細かくなっとるんよ。

犯人捜しやない。夫が悪いんやないしきみが変わったわけでもない。ただ今の時代の夫婦関係の中に女として揺れる場所が用意されてへんだけの話やねん。

Instagramを開けば同世代の女性が起業して輝いとる姿が流れてくる。TikTokを開けば20代の女性が30過ぎたら独身は詰みと語っとる動画が流れてくる。そんな中で家事と育児と仕事で1日が終わっていくきみは、自分がまだ女として通用するのかそれとももうただの母親と妻でしかないのかが分からんくなっとる。この見え方に押されて職場の男の一言が普段の10倍の重さで響く時代の空気が今の家庭には流れとるんよ。

俺のところに相談に来る既婚女性を見とる限り、この時代の空気をひとりで抱えたまま私は薄情な妻やと自己嫌悪を溜め込む人が本当に多いんやわ。まずこの空気を1回だけ頭に入れてほしいねん。

40代主婦Aさんの話をさせてほしい

もう少し具体的な話をしたいんよ。俺の相談に来た42歳の主婦Aさんの話やねん。

夫は真面目で優しい。子供は中学2年と小学5年。パート勤めのAさんは去年の秋に転職して事務員として働き始めた。そこで隣の席になったのが45歳のバツイチの男やった。

最初は雑談の相手やった。仕事の話。子供の話。天気の話。それが3ヶ月続いた頃にその男が飲み会の帰り道でぽろっと言うたんよ。

「Aさん、笑うとき目が細くなるね」

たったそれだけ。触れてもへん。手も繋いでへん。ただその一言が3日間頭から離れんかった。夫と目を合わせて話す時間が週にどのくらい残っとるかをAさんは初めて数えたんよ。20分もなかった。

そこからAさんの中で何かが目覚めたんやわ。朝に鏡を見る時間が長くなった。仕事帰りに口紅を塗り直すようになった。その男から昼休みに来るLINEを楽しみに待つようになった。金曜の夜には彼と2人で残業になるように仕事の段取りを組む自分に気づいたんよ。

Aさんは俺のところに来た時こう言うたんよ。

「私、こんな女やったんかな」

半年前まで自分は良妻賢母のつもりやったAさんが45歳のバツイチの言葉一つで胸が鳴る自分に混乱しとった。夫を裏切りたいわけやない。子供を捨てたいわけでもない。ただ生きてる感じが久しぶりに戻ってきてしもうたんよ。

これはAさんの心が薄いからやない。家の中で10年以上女として扱われる時間が減っていってその分の飢えが職場でぽろっと満たされてしもうただけの話やねん。

Aさんに俺が言うたのはこういうことや。

その揺れは悪や。悪やけど価値ある悪や。なぜかというとその揺れは私はまだ女として生きたいというきみの声やから。ただしその声を聞く相手を間違えると家族を全部失うで。

Aさんの中の揺れの中身は隣の男への恋やなかったんよ。夫との時間の中で自分が女やなくなっとることへの悲鳴やった。この2つを分けて考えな、ほんまに危ない道に踏み込んでいく。俺の相談に来た女性の中にはこの分けができんまま3ヶ月で相手の男と体を重ねて半年後に離婚届を書かされた人もおる。子供の面会権で1年争った末に外の男とも半年で終わって40代半ばで独り身に戻った人もおるねん。揺れの相手と揺れの中身は別物やって知っとくだけで動き方が変わるんよ。

Aさんの場合はこの分けができた瞬間に体がふっと軽くなったって言うとった。私が本当に欲しいのはこの男の腕やなくて家の中の夜10時に夫と目を合わせて笑う15分やったんかもしれん、って気づいたんやわ。気づいた次の日から動き方を変えていった。

明日から動ける3つのこと

じゃあAさんに実際にしてもらった3つの動きを話すわ。

一つ目はその揺れの中身をノートに書き出すこと。あの男の何が良かったのか。何が刺さったのか。10分でええから書き出す。目が優しかった。話を聞いてくれた。私を女として見た。と書いていくうちにAさんは気づいたんよ。ぜんぶ、家の中で夫にしてほしかったことやったんやわ。

二つ目は夫に対して「私、話を聞いてほしいねん」と1回だけ言うこと。恨みや責めやなく事実として頼む。今週の水曜の夜に30分だけと時間まで決めて頼むんよ。夫は最初は戸惑うかもしれん。でもAさんの夫は「あ、そうなん」と言うてその水曜の夜に30分だけスマホを置いて話を聞いたんやわ。

三つ目はその揺れの相手とは仕事の話しかせんと自分の中で決めること。LINEは業務のことだけ。ランチも複数人でだけ。目を合わせて笑う頻度を意識的に下げる。追いかけへん。突き放さへん。ただ距離を作るだけやねん。

この3つを2ヶ月続けたAさんは俺のところに来てこう言うたんよ。

「あの人のことは今はもう思い出さん。夫との夜の会話が少しずつ増えてきた。私は薄情な妻やなかった。ただ女としての私を家の中に置き忘れとっただけやった」

きみの中の揺れは悪と決めつけるもんやない。ただその揺れを不倫という形で吐き出すか夫との関係を作り直す形で使い切るかで5年後の景色は全然違うんやわ。

別の男の顔が浮かぶのはきみが薄情な妻に堕ちたわけやない。ただ家の中で女として扱われる時間が長いこと足りてなかっただけやねん。その飢えを外の男で埋めるか自分の手で家に持ち帰るかはまだきみが選べる話なんやわ。

洗い物しとる夫の背中を見ながら別の男の顔が浮かぶ夜のきみへ。今夜、その揺れの中身を10分だけノートに書いてみてほしいんよ。書いてみると答えの半分は自分の中にあるで。

一人で堂々巡りしとる時間が一番きみを削るんやわ。俺のところに一回話しに来てくれてかまへんで。関連する話をポッドキャストの「お悩みバー」でも喋っとる。夜のドライブや家事の合間に聴いてくれてかまへんで。

▼ お悩みバー(Apple Podcasts): 番組ページ



この記事を読んで、
「自分の場合はどうしたらええんやろう?」と立ち止まってしまった人へ。

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