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note予備校:もしも私が男になったら。この小説のメッセージとは…?

目覚めた瞬間、私は違和感に気づいた。いや、気づかざるを得なかった。

枕元に置いたスマホを取ろうと腕を伸ばすと、その腕がやけに太く、力強く見える。指先までの感覚もなんだかいつもと違う。そして、何より――声だ。

「お、おはよう…?」
聞き慣れない、低く響く声が自分の口から出た。

慌てて布団を跳ねのけて自分の体を見る。広い肩幅。がっしりした胸板。そして、下を見れば決定的な証拠が…ある。

「うそでしょ…何これ!?」
鏡の前に飛び込むと、そこには見知らぬ男性の顔が映っていた。だが、目元の感じがどこか見覚えある。そう、これ、私の顔だ。でも――「男版」の。

私、川崎玲奈(かわさきれいな)。高校2年生の女子だったはずが、今はどう見ても男子高校生だ。

「ちょっと、落ち着け…とりあえず、学校には行かなきゃ」
制服のスカートは当然無理なので、押入れの奥から弟のお下がりのジャージを引っ張り出す。鏡に映った自分は、何だか違和感しかない。

家族に見られないよう、こっそり家を出た私は、いつもの通学路を歩きながら頭を整理する。

「あの夢のせい…かな?」
昨夜、妙な夢を見た。夢の中で、謎の声がこう告げたのだ。
「お前の願いを叶えよう。ただし、その代償を払う覚悟はあるか?」
私は覚悟なんて何もしていなかった。ただ「男だったら楽かも」と、冗談半分で答えただけだったのに。

学校に着くと、私は誰にも気づかれないよう教室の前で立ち止まる。だが、タイミング悪くクラスメイトの三浦がやってきた。

「あれ、誰だお前?」
「えっ…いや、その…転校生…?」
「はぁ?転校生なら昨日挨拶あっただろ?」
しまった、どうしよう。このままじゃ不審者扱いされる!と思った矢先、教室の中から親友の綾乃が私に気づいた。

「ねえ、玲奈…じゃなくて、その、え、何で男子に!?」
綾乃はすぐに私だと見抜いた。さすが幼馴染。

「これ…長くなるんだけど、信じてほしいの」
昼休み、綾乃にすべてを打ち明けると、彼女は思ったより冷静だった。
「ふーん、男になるなんて不思議だけど、楽しそうじゃない?」
「楽しそうって…綾乃、本気で言ってる?」
「だってさ、男子って女子よりいろいろ自由でしょ?あ、告白されるか試してみたら?」

その後、男子トイレで洗礼を受け、体育で腕相撲の申し込みを受け、女子からの熱視線を感じる羽目になった。

「ちょっと待て、男子ってこんなに大変なのか…?」
しかも、一日で分かったことがもう一つある。男子として生活すると、今まで気づかなかった視点が見えてくるのだ。女子たちが男子をどう見ているのか、男子同士の独特なノリ、そして、自分がいかに女子のとき「男子に対して理不尽な期待」をしていたか…。

夜、ベッドに横たわりながら、私は深くため息をついた。
「これ、いつ元に戻れるんだろう…」

その時、またあの夢の声が聞こえた。
「この経験を乗り越えたとき、真の願いが見えるだろう」

私の「男生活」はまだ始まったばかりだった――。

翌朝。目覚めるとまた違和感が押し寄せてきた。昨日の出来事は夢ではなかった。低い声、広い肩幅、力強い腕――全部現実だ。

「はぁ…。今日もこの体で過ごすのか」

私は制服代わりの弟のジャージを着て、昨日と同じようにこっそり家を出た。家族にはまだ何も説明していない。いや、説明のしようがない。

学校に着くと、妙な視線を感じた。男子も女子も、私に興味津々だ。昨日の腕相撲でクラスの男子たちから「強い奴」と認識されたらしく、何人かが気さくに話しかけてくる。

「おい、川崎!お前、どこの中学出身だ?」
「え?あ、えっと…」
「ていうか、マジで転校生かと思ったけど、めっちゃ強いじゃん!今度バスケ部来いよ!」

こんなに男子とフランクに話せるのは新鮮だ。だが、同時に女子からの視線も痛いほど感じる。どうやら彼女たちは私を「かっこいい新入生」と思っているらしい。

「川崎くん、ねえ、今度一緒に昼ご飯食べようよ!」
「えっ、いや、あの…」

思わず後ずさりしてしまう。まさか女子たちからこんな風に話しかけられるなんて、昨日までは想像もしていなかった。

昼休み、綾乃に連れられて屋上に向かう。綾乃だけが今の私の秘密を知っている。

「玲奈、男子としての生活どう?楽しんでる?」
「楽しんでるわけないでしょ!」
思わず声が大きくなる。

「だってさ、男子って女子の視線気にしなきゃいけないし、体力勝負多いし、いろいろ面倒すぎるよ…。しかも、なんか最近女子から変なアプローチされてる気がするし…」

綾乃は笑いながら私を見た。
「それ、男子あるあるだよね。でもさ、逆に言えば、玲奈が男子だからこそ気づけることもあるんじゃない?」

私はしばらく考え込んだ。確かに、男子として過ごすうちに気づいたことも多い。女子の時は「男子ってこうあるべき」なんて簡単に言っていたけど、実際にその立場に立つと、それがいかに大変なことか分かった。

「もしかして、これって…試練なのかな」
綾乃が頷く。
「そうかもね。でも、玲奈がこの試練をどう乗り越えるかで、本当に大事なものが見つかる気がする」

それから数日、私は男子としての生活を少しずつ受け入れていった。

体育ではクラスの男子たちに混ざってバスケをし、腕相撲で勝負を挑まれ、昼休みには女子たちと会話をする。「男らしさ」や「かっこよさ」なんて曖昧なものに向き合いながら、私は徐々に新しい自分を理解していった。

だが、一番の試練は――やっぱり恋愛だった。

放課後、校舎裏に呼び出された。相手は同じクラスの美咲(みさき)。明るくて誰にでも優しい、みんなの人気者だ。

「川崎くん、ずっと気になってたんだ。私、川崎くんのこと好き…かも」

「えっ!?……ちょ、ちょっと待って!」
美咲の顔が真剣すぎて、冗談とは思えない。私は焦りながら言葉を探す。

「その、嬉しいけど…えっと…僕は…いや、私は…」
言いかけて、ハッとする。自分が「男」であることを完全に忘れていた。

美咲は続ける。
「川崎くんって、なんか不器用だけど優しいし、他の男子とは違う感じがするんだよね。それが好き…」

私はその言葉にドキッとした。男子としての生活は不慣れだけど、美咲はそんな私をちゃんと見てくれていたのかもしれない。

家に帰り、鏡を見つめる。自分の中で、何かが変わり始めているのを感じる。男子として過ごすことで、自分がいかに「他人を勝手に決めつけていたか」に気づかされた。

あの夢の声が言っていた「真の願い」とは、一体何なのだろうか?

私はまだ答えを見つけられないまま、また一日が終わろうとしていた――。

その夜、私はまたあの夢を見た。闇の中、どこからともなく聞こえる声。

「お前は何を学び、何を望む?」

「私は…何を望むんだろう?」と、心の中で問いかける。だけど、その答えはまだぼんやりしていて掴めない。

次に目を覚ました時、私はある決意をしていた。男子としての生活が続くなら、できるだけ真剣に向き合おう。きっと、何かを学ぶためにこの体になったのだ。

翌日。学校での男子生活にも少し慣れてきた私は、今まで敬遠していた男子同士の輪に積極的に入ってみることにした。

体育のバスケットボールでは、チームの中心となって指示を出してみる。最初は戸惑ったけれど、みんなが私を信じて動いてくれるのが嬉しかった。試合が終わった後、クラスの男子たちが笑いながら肩を叩いてきた。

「お前、けっこうやるじゃん!リーダー向きだな!」
「次も頼むぜ、川崎!」

こんな風に仲間から認められる感覚は、女子として過ごしていた時には味わったことがなかった。

一方で、美咲の告白のことがずっと頭を離れなかった。美咲は放課後も何かと私に話しかけてきて、私を「男子」として見ているのが伝わってくる。

でも、私は本当は「女子」だ。美咲にそのことを伝えるべきなのか?いや、伝えたところで信じてもらえるのか?

そんな葛藤を抱えながら過ごしていたある日、親友の綾乃が私を放課後に呼び出した。

「ねえ、玲奈。ちょっと大事な話があるんだけど」

綾乃はいつになく真剣な表情だった。屋上に行くと、彼女はまっすぐ私を見つめて言った。

「玲奈…私、実はずっと気づいてた。最近変わったよね。男子になってから、前よりも自分らしくなった気がするの」

「え?」

「前はさ、なんか周りに合わせようとして無理してる感じだったけど、今の玲奈はちゃんと自分で物事を考えて行動してる。私、そういう玲奈が好きなんだ」

「綾乃…」

まさか、綾乃からそんな言葉を言われるなんて思わなかった。

その夜、私は一人で悩んだ。美咲からの好意と、綾乃からの真っ直ぐな言葉。

「私は…どうしたいんだろう」

男子として過ごしているとき、私は自由だった。でも、それは私が「女子としてのしがらみ」を脱ぎ捨てたからなのか、それとも本当に自分が変わったからなのか分からない。

次の日、私は勇気を出して綾乃に向き合うことにした。

「綾乃、昨日の話なんだけど…」
「うん、何?」

私は深呼吸をして、自分の正直な気持ちを伝えた。
「私、男子として生活してみて分かったことがある。綾乃や周りの人が私をどう見ているか気にするんじゃなくて、自分がどうありたいかを考えなきゃいけないって。でも、私が男であるか女であるかは関係ないと思う。綾乃とこれからも一緒にいたい、そう思うんだ。」

綾乃は少し驚いたような顔をして、それからふっと笑った。
「そっか。玲奈らしい答えだね。それでいいと思うよ」

その夜、再びあの夢の声が聞こえた。

「お前は自分の願いに気づいたようだな」

「私の願い…それは、私らしく生きること。性別とか他人の目とかに縛られず、本当の自分であり続けることだと思う。」

闇の中で声が笑うような気配がした。

「ならば、試練は終わりだ」

目を覚ますと、私はいつもの自分の体に戻っていた。鏡を覗くと、そこには見慣れた女子の姿が映っている。でも、以前の自分とは何かが違う。

これからの人生、自分らしく進んでいけそうな気がする。


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