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【プレミアム朗読ガイド】焼かれた魚|裏切りの連鎖をどう読むか? ――鼠・犬・烏、それぞれの「声」と「裏切りの演出」

はじめに|演じ分けで物語の深さが変わる

小熊秀雄『焼かれた魚』の中盤には、主人公・秋刀魚が次々と動物たちに助けを求め、そして裏切られていく場面があります。猫・溝鼠・野良犬・烏──。

この部分は、登場キャラクターの性格とテンポを声で演じ分けることで、物語の皮肉や悲しみがより立体的に浮かび上がるパートです。

今回は、この中盤の抜粋をもとに、

  • 各キャラの「性格と言葉づかいの分析」

  • 「声の出し方」「間の取り方」 を具体的にご紹介します。



抜粋テキスト

小熊秀雄・作 「焼かれた魚」より抜粋

翌朝(あくるあさ)幸ひ早起きの若い溝鼠(どぶねずみ)が通りましたので、魚はこのことを頼んで見ました。

 溝鼠は
『それはわけのない話だ、しかし道程(みちのり)もかなりあるし、私もまだ朝飯前だから』
 と言ひましたので、魚は自分の片側の肉を喰べさして、そのかはりに海まで運んで貰ふ約束をいたしました。
 溝鼠は魚の片側の肉を喰べてしまひました、それから魚の胴に長い尻尾を巻いて引きだしました、その日の夕方にひろい野原につきましたが、溝鼠は
『とても私の力では、あなたを海まで運べさうもありませんから。』
 と言つて、魚を野原に捨てて、どんどん逃げて行つてしまひました。
 
魚はたいへん悲しみました。

 その翌朝(よくあさ)、いつぴきの痩せこけた野良犬が野原を通りましたので、魚は海まで運んでくださいと頼みました。
 野良犬は意地悪るさうに、じろりと魚をながめながら
『ふつかも喰べ物をたべない野良犬さまが、から身で歩るいても、ひよろひよろするのに、お前さんなどを遠い海までなど運べるものか、しかし相談によつては、運んでやつてもよいさ』
 と言ひました、魚はそれで溝鼠に喰べられて残つた片側の肉を、この野良犬にやつて、海まで運んで貰ふことにしました。
 野良犬は、秋刀魚の片側の肉を美味しさうに喰べ終へると、魚の頭のところを啣(くは)へて、どんどん海の方角へ馳け出しました。
 野良犬は足も細くて馳けることが、なかなか上手でしたから、路は思つたよりもはかどりました、しかし野良犬は、こんもりと茂つた杉の森まできたときに、魚を放りだして逃げてしまひました。
 
秋刀魚はたいへん悲しみました。それに魚の頬の肉は猫にやり、両側の肉は溝鼠と野良犬にやつてしまつたので、肉がきれいに喰べられて魚の骸骨になつてゐましたので、こんどは何が通つても、お礼として肉を喰べさして海まで運んで貰ふことが出来なくなりました。その日は森のなかにねむりました、夜なかに雨が降つてまゐりました、骨ばかりになつた秋刀魚はしみじみとその冷たさが身にしみました。

 その翌日一羽の烏が通りましたので、魚は呼び止めました。
『烏さん、お願ひですからわたしを海まで連れて行つてくれませんか。』
 と頼みましたが、烏はあまりよい返事をいたしませんでした。
 それで魚は背筋のところに、すこし許り残つた肉をあげますからと言ひました。
『そればかりの肉ぢや駄目だよ』
 と烏は言ひましたので、
『わたしのだいじな眼玉をあげませう、もうこれだけより残つてゐないのですもの』
 と魚が悲しさうに言ひました、それで烏は魚の眼玉を嘴(くちばし)で突いてふたつ取りだしました。しかし魚の眼玉は、からからに乾からびてとても喰べられませんでしたが、烏は首飾りにでもしようと考へましたから、これを貰つてぽけつとにしまひこみました、それから背筋の肉やら、体ぢゆうの肉と云ふ肉を探して、きれいに喰べてしまひました。

(朗読用スクリプト)

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