父の焼きそば、時々、リンゴ
こんにちは。鈴木真史です。
お元気ですか。
気がつけば、8月も半ばを過ぎまして、朝は少しだけ涼しい風が吹くようになりましたね。
今朝、通りかかったときにチラリと見えたプールで遊ぶ子供の数も、以前より少なくなっていました。
ぼくは、この夏は、風邪を引いたり、夏バテになって「醤油かけごはん」しか食べられなくなったり、バイト先で散々こき使われたりした影響で、だいぶ痩せてしまいました。
最近は、ズボンもゆるゆるになってしまいましたので、腰痛ベルトで腹回りをかさ増ししなければ、履けません。
みなさんが、外を歩いているときに、フラフラになりながら歩いている、頬のこけた大男を見かけましたら、ぼくである可能性がありますので、そのときには、よろしくお願いします。
とはいえ、最近は、さすがに食欲も戻ってきたので、何でも美味しくパクパクと、毎日、アホみたいに食べまくっています。
ぼくは、特に嫌いな食べ物というものがなくて、何を食べても美味しいと思える単純な舌の持ち主です。
そんな単細胞のぼくが、いちばん美味しいと思うのは、我ながら悔しいとは思うのですが、父の作った料理です。
ぼくの母は、幼少の頃に亡くなりましたので、それ以来、ずっと父が、ぼくの食事の用意をしてくれました。
とはいえ、ウチの父は、クッキングパパではありませんので、手のこんだ料理なんて出てきません。
スーパーで買ってきたお惣菜やコンビニの弁当や冷凍食品などが、食卓によく出てきました。
子供の頃のぼくは、それらの料理を「美味しい、美味しい」と言いながら、パクパクと食べて育ったのでした。
そんな父ですが、一応たまには、どこからかフライパンなどを取り出してきて、料理らしきものを拵えてくれたこともあります。
よく作ってくれたのは、焼きそばですかね。
インスタントの麺を具材と絡めてソースをかけて焼いただけのシンプルなものなのですが、父が作ると、なぜか、いつもとても美味しく感じられたものです。
父に対しては、いろいろと複雑な思いを抱えながらも、残念なことに、ぼくの舌は、完全に父の料理によってカスタマイズされてしまいました。
たとえ、同じフライパンを使って、同じインスタントの焼きそばを、自分の手で同じように作っても、父の作ってくれたときのように美味しくはなりません。
ぼくにとって、父という人は、一言でいえば、「この世でいちばん美味しい料理を作れる人」ですね。
スーパーでテキトーに買ってきた肉をフライパンで焼いただけでも、父の手にかかると、なぜか絶妙な温度と焼き加減と味付けになります。
まあ、もちろん、そういうふうに感じるのは、この世で、ぼくだけなんでしょうけどね。
ただ、ごく稀に、父が挑戦するオリジナル料理は、ロクな代物ではありませんでした。
一度、父が、いつものように「ハイ」と何気なくテーブルの上に置いた大きな皿の中に入っている料理を見て、ぼくは目がテンになりました。
その中には、大量の油に浸かったタマネギが皿一面にぎっしりと詰まっていたのでした。
「魔除けのマジナイか?」と思いながらも、「コレ、なに?」と父に聞いたら、「よくわからん。でも、体にいいぞ〜」と言って、美味しそうに一人で、ソレをパクパク食べ始めたのでした。
「いくらタマネギが体に良いとはいっても、こんなに油にまみれていたら、絶対に体に良くないだろう」と思いながらも、おそるおそる口に運び入れたら、案の定、めちゃくちゃ不味かったので、ちょっと安心しました。
その料理は、結局、父が一人で全部、食べました。
あんなに体に悪そうな料理を食べても、風邪ひとつ引かないのですから、幸せな人ですね。
子供の頃、ぼくが風邪を引くと、父はよくリンゴを剥いて持ってきてくれました。
父が切ってくれたリンゴは、いつも真っ白でキレイな色をしていて、ひんやりと冷えていました。
親戚の家で出されたリンゴが茶色で、かつ手の温度で温まっていたのとは対照的で、父のリンゴは、いつもキレイで冷たくて、とても美味しかったです。
スーパーで買った肉を、ただ焼いただけ。
インスタントの焼きそばの麺を、ただ附属のソースと絡めただけ。
リンゴの皮を、ただ剥いただけ。
ただ、それだけのことなのに、父の手を通すと魔法がかかったように美味しくなる。
世の中には、不思議なことが、たくさんあるんだなあ、と思います。
この頃は、あまり父の料理を食べる機会がありませんが、それでも、たまにインスタントのラーメンなんかを作ってくれたら、とても美味しくてビックリします。
父の料理は、あまりに、ぼくの舌に合っていて、いつも、つい食べすぎてしまいますので、少し惜しいことではありますが、父が台所に立つ機会が減ったのは、むしろ健康のためには、良かったのかもしれません。
でも、やっぱり、たまには父の切ってくれたリンゴを、また食べたいなあとも思います。
オリジナル料理は、もう結構ですけど。
それでは、今日は、このあたりで失礼します。
ここまで、お読みくださいまして、ありがとうございました。
また次回も、お会いしましょう。
さようなら〜。
