不朽・不遇の名作ドラゴンクエスト6について

皆さんはドラクエ6についてどんな感想をお持ちですか。世間一般の評価はおおむね「職業で個性が無くなった」「真ムドー以降の目的が良くわからなくてつまらない」と言ったところでしょうか。それを知ってか知らずかリメイクにおいてもまさかの「唯一、型落ちエンジンの使いまわし」という屈辱の扱いを受けてしまった不遇の名作。
今回は私にとってのドラクエ6についてお話ししたいと思います。

ドラクエ6との出会い


きっかけはコロコロコミックの特集でした。天馬(ファルシオン)が紹介されていたのは覚えています。他詳しいことは忘れましたがとにかくなにがしかの興味を持ち、翌96年お正月のお年玉でさっそく購入。私にとってこれが初めてのRPG体験となりました。

いきなりムドー城の衝撃


目の前に現れる有名なあのシーン。ドラゴンが舞い降りその背中に乗り、眼下のムドー城へ降り立つ。そのBGMの素晴らしさ、映像の美しさと言ったら!あの日の衝撃、映像は今でも忘れられないです。凄くカッコイイ演出ですよね。

1つ1つの動作がとにかく楽しかった


RPG初体験の私にとっては全てがワクワクの連続でした。今では定番のセリフ「装備しなきゃ効果は無いぜ!」を聞き「お、そうなんだ」と戦闘が始まるたびに「そうび」コマンドを選んだり。たけのやりを”そうび”しなきゃいけないんだなふむふむ。全てが手探りで楽しい。それまでやっていたアクションゲームやサッカーゲームに比べてなんだか「大人っぽいなぁ・・・凄いゲームだなぁ・・」と感じました。また今後何度も触れることになるであろうBGMですが、ライフコッド(村)のBGMも凄く好きですね。スキップしたくなります。

ドラクエ6が面白すぎて親に内緒でゲームをした


当時の私は「ゲームは1日15分」という制限が課されていました。15分では攻略できないと親にお願いして40分に延長してもらいました。それでもとてもじゃないが進まないというかドラクエ6をやりたい欲が抑えきれない。そこで私はリスキーな行動に打って出ます。主に土日の夜中2時キッカリに目覚まし無しで起きて親に内緒で4時半~5時ぐらいまでひっそりとドラクエを進めていたのです。父親に見つかったら大目玉を食らうことは間違いありません。親がトイレに起きるたびに体が硬直して、バレないように祈っていました。 とにかく、私を真夜中の危険なスニーキング・ミッションに駆り立てるほどにドラクエ6という人生初のRPGが最高に楽しかったんです!

ムドーと最初の邂逅


悪夢のような強さを誇る真・ムドー。戦闘前の「またオープニングに戻ったかのように見せかける仕掛け」は本当に最初に戻っちゃったんだ?!と思って相当混乱しました。何分初心者なもので・・・でもそういうの含めて不慣れだからこそ新鮮な体験が出来て良かったですね。
肝心のムドーはどこで情報を得たか覚えてませんが炎の爪を駆使してなんとか倒しました。
その時私は「あれ?これで全クリ???まだダーマ神殿も出てきてないけど・・・あれ?あれ?」と思いましたね。
ここがドラクエ6の個性でもあり意見が割れる部分でもありますが「ムドー戦が1つの山場」というのは私も認めています。その後無事ダーマ神殿に到達し物語を進めていきました。

1年がかりでとりあえずクリアできた


時間制限に加えてサッカー部に歌番組にと好きなことが多かった私は、ドラクエ6をクリアするのに1年半以上かかりました。左手のザオリクに悶絶。ひたすらハッスルダンスする主人公。決めてはハッサンの”すてみ”ダメージ129。他にここで語れるような細かい記憶はあまりないですが、カルベローナという町に受けた衝撃は忘れられません。
幻想的な風景、そこに流れるBGM”精霊の冠”。私は全てのゲームの中でこの町が一番好きです。ドラクエ6は街の雰囲気作り、BGMが飛びぬけて良い。ロンガデセオの場末感、サンマリーノの人々が入り組んだ中暮らしているその非日常の中の生活感。エンディング「時の子守歌」も大好きです。「ああ、このゲームがもう終わってしまうんだ・・・」という無情感、虚無感。そういったものが入り混じって鳥肌が立つような感覚だったのをよく覚えています。初プレイ時はストーリーよりもそういった「雰囲気」にのめり込んでいました。幼かったので「世界の2面性」すらピンと来ていなかった。なんとも勿体ない話ですがそういう流れで最初のクリアを経験しました。

想像力を補完してくれた小説ドラゴンクエスト6


ある日本屋で偶然見つけて即買いしました。
この小説もとても面白かった。いちいちもったいぶったような、大袈裟な、ケレン味のある文章に想像力が刺激されワクワクしました。全3巻ですが誇張抜きで100回以上通して読んでいると思います。また読み進めていくうちに、初回プレイ時には何故だか気付けなかった世界の2面性や奥深さに触れていくことになります。
例えばレイドック王が”現実側”と”夢側”で真逆の性質を持っているけどとても似ているだとか、ホラービーストと戦ったほうのアモールは”夢世界”であったとか。バーバラがドラゴンであるということも、この小説では「ラーの鏡が映し出した真実」としてまず示唆され、後に本人の口から告白されます。(ゲーム中はカルベローナの住人からそれを暗示する内容が語られる)
初プレイ時よくわからなかったガンディーノの負の一面も深堀りされています。作家の方というのは本当に凄いです。断片的な情報から想像力をたくましくして、おそらくこうであろうという物語を紡いでいく。この小説のお陰でドラクエ6への理解が深まった。
また挿絵(テイルズシリーズでお馴染みのいのまたむつみさんが担当)も素晴らしかった。ダメージジーンズとかプラモのウェザリングのような「少しくたびれた感じ」を出して、物語の雰囲気・剣と魔法の世界観に没入させてくれる、絶妙に古めかしくも美しい絵なんですよね。
特に印象的だったのが「月鏡の塔」でバーバラがラーの鏡と対峙するシーン。モノクロなのになんて美しくて幻想的なんだろう・・・!

時を前後してドラクエ6のサウンドトラックを買いました。これが初めて買ったゲームのサントラです。この時、最初に旅する大地のBGMタイトルが「もう一つの世界」、いわゆる下の世界のタイトルが「さすらいのテーマ」になっていることの意味に、小説のお陰で気付けました。物語序盤で語られる幻の大地こそ現実で、主人公側が最初に居る世界こそが夢の世界。「上の世界」のBGMのほうが妙にゆったりしている、それが「本当は上の世界こそ夢の世界だから」という理由から来ていることにやっと気付けました。(この事は”上の世界”の街や城などのドット絵が下のそれより薄く淡く表現されていることにも通じます)

小説による補完を経て追体験するドラクエ6の楽しさ


中学~大学にかけてドラクエ6を断続的に周回しました。
もうその旅の楽しさと言ったら。
何でもない場所に攻略と直接関係のない庵があったりする。で、そこのシスターが「恐ろしい夢を見てしまいました・・・この世界こそ幻で私たちは夢であるという・・・」なんてこぼしたりする。現実側の海底の片隅には漂流の末たどり着いたお笑い芸人・・・パノンの先祖のような道化師が居る。またある海底のほこらでは、鍛冶職人の父親のいまわのメッセージが見つかったりする。あの有名なマジンガ様も待ち構えている。6では山の精霊様と呼ばれている「ルビスの城」がムドーの城のすぐそばの海底にある。狭間の世界には行方不明となったサンマリーノ町長が居る(サンマリーノで"次元のひずみ"らしきものを目撃した住人の話も聞ける。)ヘンピな場所の井戸の中に、何故だか商店街みたいにお店のならんだ場所がある。現実側レイドックへマーメイド・ハープを使って行くと風神の盾が手に入る(たいして強くはない)
あるタイミングでアモールでイベントが発生して「星降る腕輪」が入手できる。

攻略には関係のない、極端に言えば「意味の無さ」が凄く良い。おつかいではない、世界を見て回ってなにかが見つかる、気付ける楽しさ。散りばめられた2つの世界の関係性。1週目では分からなかったドラクエ6の「余白を楽しむ」という奥深さ。そういうのに触れることが出来ました。

この作品の評価が分かれてしまうのはこういった余白が大きいからだと思います。
ムドー後に何かを見出せなかったら凡作になってしまうのも仕方ない。
でも世界を巡りあれこれ想像する楽しさを知ると極上の物語へと変貌する。初めて触れたRPGがドラクエ6だったからこそ、小説が世界観を大いに広げてくれたからこそ、私は極上の体験が出来たと思っています。

またその旅を共にするBGMが最高!!!!!!
船のBGMなんてもうずっと聴いていられますよね。天馬のBGMも大好き。井戸やホビットが住む小屋でよく流れるテーマ(ぬくもりの里に)の物憂げな感じがたまらない。そこかしこを旅する事自体が楽しいですが、お供のBGMがひたすら心地よいのもドラクエ6の好きなポイントです。

(見いだせない人を否定する意図はありません。私にだってプレイしたうえで微妙だなぁと思うものはあります。例えばドラクエ7の、どうしてもブツ切りになってしまうストーリーは苦手というか感情移入出来なくてあまり覚えていません。やり込み要素だけは多くて結構な時間プレイしましたが・・・)


ドラクエ8に見た希望


ドラクエ初の完全3D作品となった8。
それ自体も大好きですが、当時ネットでこういった考察がなされていました。

"ドラクエ6のモンスターが沢山出ているのはリメイクへの伏線では?"

確かに。エビルホークやらヘルホーネット、ヘルクラッシャー。懐かしい面々が並んでいる。ドラクエのリメイクと言えばSFC版の3や7のエンジンを流用した4等、その都度最新エンジンを使ってリメイクされてきました。これは期待できる!8のエンジンを使ってドラクエ6がリメイクされ、あの世界を旅する事が出来たらどんなに楽しいことか。当時わざわざスクエニのカスタマーサポートに「SFCのソフトはすぐデータが飛ぶ、出来れば8エンジンでリメイクしてください」とメールしたのも覚えています(返信は”バッテリーを交換してください”みたいな感じだった)ワクワクしながらあてどなくリメイクの発表を待ちわびていました。がしかし・・・

絶望の町、DSリメイク


リメイクの一報に心踊ったのも束の間、私の心は一瞬で失望に包まれます。何故最新エンジンのリメイクではないのか。8方式だと6の4つの世界(現実・夢・狭間・海底)が容量の都合上収まらないのかもしれないから仕方ない。でも、なぜよりによって7エンジン流用の4リメイクの延長線上に6を持ってきてしまうのか。何故PS2版5の様な快適でグラフィックも美しいエンジンでリメイクしてくれなかったのか。全く納得できません。7と同じタイミングなら良いけどもう何年経っていると思いますか?8やリメイク5の素晴らしさを体感したあと今更7のグラフィックで6をやりたいなんて思わない。

内容も散々。妙に狭く見えるフィールド、仲間モンスター削除、追加エピソード無し。代わりにスライムカーリングという神経を逆撫でするためとしか思えない新要素が追加されている。
なんなんだこれは。

想像の余白を楽しむから追加エピソードは無くても良いでしょ?と言われればそうなのだけど、ガンディーノとミレーユ・テリーについてはゲーム中で余りにも寡黙すぎます。せめて2人と育ての親の会話―エンディングで映像だけ流れる―それだけでも足して、もう少しキャラの個性や内面を表現してくれても良いじゃないか。カーリングって何だよ。

モンスターは結局使わないじゃん、と言われても私は使いたい。特にロビン2は耐性に優れ、たまに2回攻撃してくれる楽しさもある。子供の頃仲間に出来なかったカダブウも仲間にしたい。そんな気持ちを思いきり踏みにじられました。

なんとなく流れでこのリメイクを買うのは私がスクエニに負けた気がする、というかこんなものに金を出してたまるか!という思いもあり、結局未だにプレイした事が無いです。
後年わざわざレトロフリークを買って、大事にとってあったソフトを使って遊びました。リメイクのほうが100倍お手軽だけどそう言う問題ではない。

もうベタ移植でいいからSwitch2で出してくれ


ドラクエ1〜3HDやブレイブリーシリーズのリマスター等他作品は呼吸をするかのごとくリメイクされるのに、ドラクエ6だけは一向に日の目を見ない現状。もう私は諦めています。せめて、権利関係で使えないシエーナの名前だけマルシェにしたSFC版をSwitch2で出せないのか?HD2Dが良いけどもうそこまで望まないよ。
というか私にとってはドラクエ8のエンジンでちょうどいい。シームレスに世界が繋がり、意味の無い所に何かがある3Dの世界。ドラクエの世界を極めて美しく自然に再現したあの雰囲気。ドラクエ11よりも遥かに古びた、でも"世界観と没入感"という点で圧倒的に優れた、あのエンジンがいい。今なら容量の問題も解決出来るでしょう?せめてあの感じでドラクエ6をリメイクしてくれないだろうか。ロトシリーズは正直もうわかったよ。3のHD2Dは買ったけれどSFC版で充分という内容だった。ストーリー上ちょっとしたお楽しみはあるけれどそれの続きはもう誰かに聞けば良いかなとすら思ってしまう。

一向に救済されず、それ故再評価されずそのままになりがちなドラクエ6はこれから何処へ向かうのでしょうか?
このまま捨て置くには余りにも勿体ない名作ですよ。私はこれからも小説版ドラゴンクエスト6という夢の世界を彷徨い続けるのだろうか。

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