『F1サーカス』大ヒットの影で動いていた「アーケード再参入計画」?|ニチブツ回想録:関係者が語るゲーム制作の記録
こんにちは。
今回は、ニチブツで80年代後半~90年代中頃に活躍されたサウンドクリエイター・船場洋志さんと先日お電話で雑談していた際に判明した「幻の未発売タイトル」についてのエピソードをお届けします。
歴史に埋もれかけた、貴重な思い出話です。
幻の未発売タイトル:『ノンストップ・コマンドー(仮)』
船場さんがさらりと口にされたのは、ニチブツ社内で開発が進められていたという業務用のトップビュー(見下ろし型)の戦車アクションゲームについてでした。そんなの聞いたことない!
船場さんのお話
「企画していたのは若い子で、タイトルは確か『ノンストップ・コマンドー』だったと思います。私がサウンドを担当し、プログラマーは富山さんだったかな。デザイン担当も何人かいて、開発は2〜3面あたりまで進んでいまたような記憶があります」
しかし、残念ながらこのプロジェクトは陽の目を見ることはありませんでした。
お蔵入りの理由: 「面白さ」が社内にうまく伝わらず、評価が芳しくなかった
企画者のその後: その企画担当の方は懸命に開発に励まれていたそうですが、残念ながら『ノンストップ・コマンドー』を形にすることは叶わぬまま、ニチブツを去ることとなりました。
船場さんには、今もふと思い出す後日談があるそうです。
「彼が辞めて半年か一年くらい経った頃だったでしょうか。お昼休みに天神橋筋商店街で、偶然彼と会って立ち話をしたことがあったんですよ」
『戦え!ビッグファイター』の後に、アーケード再参入が計画されていた!?
これまで、ニチブツの非麻雀系アーケード作品(社内用語でいうところの「アミューズ」)は、1989年の『戦え!ビッグファイター』が最終作とされ、社内でもそのように決定していたと聞き及んでいます。しかし、船場さんのお話からは、その後の「90年代のアーケード再参入計画」が浮かび上がってきました。
船場さんの記憶を辿ると、当時の状況がより具体的に見えてきます。
開発時期は90年〜92年あたり?
1991年11月発売のPCエンジン用ソフト『ファイティングラン』より後の開発だったような……
『F1サーカス』シリーズのヒットを受け、持ち上がったアーケード企画だったのかな?憶測にすぎませんが……
もしこの記憶が正しければ、一度はアミューズから身を引いたはずのニチブツが、90年代初頭に再びアーケードの舞台へ勝負を仕掛けようとしていたということになります。
コンシューマー市場での成功を武器に、再びゲームセンターへ——。実現していれば、90年代のニチブツ・アーケード路線の運命を変えていたかもしれないプロジェクトだったのです。
もしも、発売されていたら……
ニチブツの業務用アーケードといえば、後年、麻雀系タイトルの印象がさらに強くなっていきます。実際、船場さんもアーケードのサウンドでは麻雀系のみを担当されています(『キッドのホレホレ大作戦』で、ネームエントリーの作曲のみ担当)。
もしこの作品がリリースされていれば、船場さんのキャリアにおいても貴重な「非麻雀のアーケード作品」となっていただけに、お蔵入りは非常に残念でなりません。
若きクリエイターの情熱が注がれた戦車ゲーム。一体どんな手触りだったのか、どんな音が鳴っていたのか……。今はただ思いを馳せるばかりです。
ただ船場さんは「未使用になった曲は、もしかしたら他のゲームに流用したかも?」と振り返っており、その後に発売されたタイトルで流れている音楽が、元はこの戦車ゲームのために作られたものだった……かもしれません。
船場さんの「デザイン担当」時代について
今回はサウンド担当時代の、しかも未発表タイトルのエピソードでしたが、実は船場さんは80年代中頃にニチブツへ入社された当初はデザインを担当されていました。個性的な麻雀タイトルが次々とリリースされていた時代です。
前述の『ブービーキッズ』の一部作曲も、船場さんがデザイナー時代に、サウンド担当の吉田健志さんとの交流から生まれたものでした。
サウンドへと転身される前の、デザイナー時代の船場さんのお話についても、そしてもちろんサウンドのお話についても、また機会を改めてお届けできればと考えています。
貴重なお話を聞かせてくださった船場さん、ありがとうございました。
