見出し画像

【寄付について考える】熊本地震の義援金送金から学んだ「庶民が税金の使い道を決める方法」


熊本地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
今年の8月、心ばかりですが義援金をお送りしました。
このようなことを公言する必要はないのかもしれませんが、今回は色々と思うところがあり、自分の行動を言語化してみました。


○「貸付」という言葉に違和感を感じて義援金に参加

被災者向け支援として国や自治体が「特例貸付」を行っているというニュースを目にしました。家を失ったり明日の生活に困ったりしている人々に対して、最初に行う支援がお金をあげる「給付」ではなく、借金を背負わせる「貸付」であることに、私は強い違和感を覚えました。「なぜこんな切羽詰まった状況でお金を貸し付けるのか、そのままあげてしまえばいいのではないか」。この仕組みにどうしても納得がいかなかった私は、熊本県が主催している義援金に心ばかりのお金を送ることに決めました。

○今回初めて「寄附金控除」をしようと考えた

また、私はこれまで災害支援や認定NPO法人への寄付を行なっていましたが、「寄付は純粋な善意であり、見返りを求めるものではない」と考えていたため、何年もの間、一度も税金の控除(寄附金控除)を受けたことはありませんでした。しかし、この「貸付へのモヤモヤ」をきっかけに公的なお金の制度について調べるうちに、行政システムや、「寄付金控除」という制度が持つ、単なるキャッシュバックを超えた国への意思表示としての側面に気づかされることになりました。今回は、この震災支援をきっかけに得た学びを共有します。

恥ずかしながら私の無知が露呈した形となりましたが、もしかしたらどなたかの視野を広げるきっかけになるかもしれないと思い記載してみます。

1. なぜ災害支援は「給付」ではなく「貸付」から始まるのか?

まずは最も大きな疑問であった「なぜ給付ではなく貸付なのか」という点です。これには公的資金を扱う上でのスピード感と公平性を保つための、行政なりのロジックが存在していました。
もし国が「もらえるお金(給付)」として最初から現金を配ろうとする場合、役所は「本当にその人が被害に遭ったのか」「どれくらいの規模なのか」を厳格に審査しなければなりません。これでは手元にお金が届くまで数ヶ月単位の時間がかかってしまいます。
しかし、被災直後に必要なのは「その日の食費」や「数日分の生活費」です。そこで、あとで返してもらう前提の「貸付」にすることで審査を極限まで簡略化し、数日から1週間程度で現金を即座に手渡す仕組み(緊急小口資金など)が作られたのです。また、被害の大きさは人によって異なるため、一律で大金を配ると不公平が生まれます。まずはスピード重視で貸し付けを行い、急場をしのいでもらうステップが必要になるというのが理由です。一理あります。納得しました。

2. 過去の歴史が証明する「貸付が給付に変わる」実態

「被災者に借金を背負わせるのか」という批判は、実は過去の震災でも繰り返されてきた議論でした。そして、その批判を受け、日本の災害支援システムは少しずつ進化してきたという事実も分かりました。その最たる例が、「あとから返済を免除する(実質的な給付へ切り替える)」という仕組みです。
国は、返済が始まるタイミングになっても生活再建が難しく、住民税非課税のままである世帯などに対して、国への返済を全額免除する措置をとっています。

コロナ特例貸付の実態
厚生労働省のデータによると、コロナ禍で収入が減少した世帯向けに実施された特例貸付において、総額1兆4431億円の45%にあたる約6,540億円余が最終的に「返済免除」となりました。物価高による生活苦などを考慮し、国への返済が免除された結果です。(参考:朝日新聞)

阪神・淡路大震災の実態
震災特例貸付の報道によると、1995年の阪神・淡路大震災の際に実施された貸付についても、兵庫県社会福祉協議会は最終的に貸付総額約103億円のうち約4割にあたる約42億円を返済免除とする手続きを完了させる方針を決めました。(参考:神戸新聞)

つまり、この災害特例貸付は、「最初から給付にすると時間がかかるから、まずはスピード重視で貸付として配り、本当に生活が苦しい人はあとから給付に切り替える」という実態もあるのです。

3. 義援金という「100%直接届く」支援

行政がスピードと公平性の間で葛藤し、手続きに追われる一方で、その弱点を補っているのが私たちが送る「義援金」です。
ニュースなどで混同されやすい「支援金」はNPO等の活動費にも使われますが、「義援金」は集まったお金の100%すべてが被災者へ現金で直接配られます。ここには極めて厳しい透明性があります。

熊本県庁が、義捐金の受付け口座を開設しました。
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/27/274572.html
ここが決して中抜きされない、全額が被災者の方に配られるところです。私もここから入金しました。

義援金の課題点としては、配分までに非常に時間がかかるということが挙げられます。公平を期すために「被災者配分委員会」などを設置し、被害状況(全壊・半壊等)を正確に把握してから一律配分するため、実際に被災者の口座にお金が振り込まれるまでに数ヶ月以上かかるケースが少なくありません。
被災直後の最もお金が必要な時期には間に合わないため、民間ボランティアやNPOの活動資金(インフラ復旧、食料配布、避難所運営など)に直接充てられる「支援金」の方が、被災現場の早期環境改善には即効性・波及効果が高いとも言えます。

4. 寄付金控除の本質:税金の使い道を示す

私はこれまで、「寄付は善意で行うものであって見返りを受けるものではない」と考えていました。したがって、ホームレス支援の認定NPO法人や自治体の植林活動、能登地震などの災害時の義援金にもお金を出してきましたが、寄付金控除を受けることはしませんでした。書籍でよく見かける、「控除があるからお金を寄付する」という欧米のお金持ちの考え方にも納得しかねていました。(表面的な理解しかしていなかったかもしれませんが)
ちなみに私の年収は平均値程度ですので、生活にそこまでのゆとりがあるわけではありません。生活に困らない程度にお金を使い、余剰を寄付に回していたので、「浄財を喜捨する」という感覚で、それ以上のことは考えていませんでした。

しかし、過去最高を更新し続ける国の税収や、一向に進まない国会議員の身を削る改革を見渡したとき、考え方が変わりました。

寄付金控除を受けることは、一国民が何に税金を使ってほしいと考えているかの意思表示にならないだろうか」ということです。

寄付金控除の本質は、「国や役所がやるべき困っている人の救済を、あなたが国に代わって自分のお金で行ったことを国が認めますよ」ということです。ここで重要なのは、私が後から確定申告をして国からいくらかを返してもらったとしても、熊本の被災者に届く金額はお送りした分からは1円も減らないという点です。あくまでも収めた税金からお返しいただくだけです。税金の使い道はなかなか分かりませんが、こういう権利を行使してみるとわずかであっても税金の使い道を自分で決められると思えるのでは、と考えました。

5. 認定NPOへの寄付が教えてくれる、これからの市民のあり方

さらに学びを広げると、この仕組みは「認定NPO法人」への寄付においても実装されていました。
国や自治体では手が回らない専門的かつスピーディな社会貢献活動(福祉や環境保護など)を行う民間団体のうち、実績や会計の透明性の厳しい審査をクリアした団体を、国は「認定NPO法人」として指定しています。
こうした認定NPOに寄付をした場合、国は寄付した金額(から2,000円を引いた額)の約4割を所得税から差し引いて返してくれるそうです。
お役所がやれない先進的な社会貢献を代わりにやってくれてありがとう」という国のメッセージに他なりません。私たちは決まった税金を文句を言いながら払うだけではなく、信頼できる団体や応援したい被災地に自らの意思でお金を直接投資し、その分だけ国への納税を減らすことができるのです。これこそが、これからの時代に求められる一般市民の社会参画の形なのでは、と感じました。

もっとも、まだまだ知らないことが多く、勉強しなければならないことがたくさんあるなと感じています。今回の件では義援金を送り、寄付金控除を受けることが最適解だと感じたのでこのような行動をとってみました。今後考え方が変わることもあると思いますので、勉強を続けていきます。

【参考記事】
コロナ特例貸付の免除割合データ:朝日新聞デジタル
阪神・淡路大震災の震災特例貸付免除方針:神戸新聞
令和8年熊本地震 義援金募集:日本赤十字社 公式サイト
寄付金控除・認定NPO法人寄附金特別控除の仕組み:国税庁「タックスアンサー」


いいなと思ったら応援しよう!

家庭でできる塾スキル! ~塾選びで失敗しない、塾に依存しすぎないための自学自習指南塾「旬学舎」~ 教育格差をなくすため、学習や教育に関する知見はこれからも原則無料で公開してまいります。皆様の応援(チップ)が、誰かの学びの機会を存続させられるような新しい社会投資の仕組みを目指しています。記事が役立った、面白いと感じていただけましたら、ぜひご支援をお願いいたします。