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ええ本買うてくれるなあ

ユグナンの唯一のエッセイ

ジャン=ルネ・ユグナンの「もう1つの青春」をレジ(ただの窓だけど)に持っていくと、古書店のおばあちゃんからそう言われた。この人、ユグナンを知っているのか! と興奮して僕は「日本に3店舗くらいしかこの本置いてなかったんですよ」と言ったが、全然聞こえてなかったみたいで、お釣りの小銭をかちゃかちゃと取っていた。夫婦でやってる店みたいで、おじいちゃんも横にいた。

おじいちゃんは「お客さんなんか言うてるよ」と言った。
おばあちゃん「え、なに?」
「この人20代で死んだんです」
おばあちゃん「この人、見たことあるわあ。映画俳優やろ? (裏表紙を見て)ハンサムよねえ。これ、ユグナンいうんやて」
おじいちゃん「ユグナン(知らない様子)」
「この本、関西ではここにしかなくて」
おじいちゃん「若くして死んだんやて」
おばあちゃん「あら、そうなん。こんなハンサムやのに」
どうやら僕の声は聞こえないらしい。

それからおばあちゃんは僕を見て

若いのに(本を読んで)偉いねえ

と言った。ありがとうね、ありがとうねと、とても喜んでくれた。
ああ本当に全然売れないんだな、と思った。商売にはなっていないだろう。70歳は軽く超えている夫婦。こういう人を見ると、僕は嬉しくて微笑んでしまう。家でゴロゴロして過ごすことだってできるはずだ。それなのに本屋を続けて、こうして本が売れたことに心から喜んでいる。800円のフランス文学が売れただけで。

最後に僕は大声で「いい店ですねえ!」と叫ぶと、おばあちゃんは「そう、いい店。またきてな」とニコニコ。目の色がちょっと灰色っぽいおばあちゃんだった。

今日僕が行ったのは、神戸・上沢の「マルダイ書店」。ビルの1階の小さい店だ。ここを訪れた理由は、ユグナンの「もう1つの青春」の実物がここにあるのを「日本の古書店」で知ったから。東京とかには在庫がある店もあったけど、取り寄せだとなんか味気ないし、3連休で暇だったので、わざわざ行くことにしたのだ。

ビルの1階にある


写真で見る限りかなり小さい店なので期待していなかったが、入って数分で「ここは良いぞ!」と思った。まず目に入ったのが「ランボオ詩集」。地獄の季節」が入っているやつだ。東京創元社発行。次に見つけたのが二ザンの「アデン・アラビア」。これは持っているけど、店の本棚に見たのは初めてだったので感動した。続いてジョン・アップダイクの「走れウサギ」、ヴォネガットの「青ひげ」、もう1個二ザンの長編。全て、僕がいつか買いたいと思っている本だ。途中、「青ひげ」を買うつもりでいたが、結局買わなかった。僕は本をいっぺんに2冊買うのはよくないと思ってる。本なんてすぐに読めるものじゃないし、まずは1冊に集中し、読み終えてから本当に「青ひげ」が読みたいか考えたらいい。どうせ1ヶ月後も棚に残っている。

高橋源一郎が訳した気になる小説もあった。今のを読み終えたらまた行こうかな。

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