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会話1分で認知機能AI判定、精度95%とは?PMDA相談開始の意味

認知症の診断や検査は「敷居が高い」と感じる方も多いのではないでしょうか。エクサウィザーズグループの子会社ExaMD(エクサムディ)が開発する、スマートフォンでの約1分間の会話音声から認知機能を判定するAI診断支援アプリについて、2026年8月20日付でPMDA(医薬品医療機器総合機構)との「先駆け総合評価相談」が始まったと発表されました。まだ承認・実用化された製品ではありませんが、認知症検査の「入り口」を広げる可能性がある取り組みとして、現役看護師の視点から内容を整理してみます。

何が発表されたのか

ExaMD(開発コード:CogniVoice)は、スマートフォンなどで取得した約1分間の「自由会話」の音声を分析し、認知機能の状態を判定するプログラムです。専用の測定機器は必要とせず、スマホ1台で完結する点が特徴で、在宅での利用も想定されているとのことです。

医療機器の分類上は「SaMD(Software as a Medical Device:プログラム医療機器)」と呼ばれるものにあたります。つまりこのアプリは、あくまで「診断そのものを行う」ものではなく、医師が診断・判断する際の材料を提供する「診断支援」ツールという位置づけです。「AIが認知症を診断する」というより、「AIが会話音声から気になる兆候を拾い上げ、その後の医療的な評価につなげる」というイメージに近いと考えるとわかりやすいと思います。

同社によれば、2026年8月20日付でPMDAとの「先駆け総合評価相談」の申込みが受理され、相談を開始したとのことです。

「先駆け総合評価相談」とはどんな制度か

「先駆け総合評価相談」は、医療機器の製造販売承認を申請する前段階で、申請時に提出予定の資料(臨床試験データ、非臨床データ、QMS〈品質マネジメントシステム〉、信頼性に関する資料など)について、あらかじめPMDAから評価・助言を受けられる相談制度です。

ここで重要なのは、この相談はあくまで「承認申請に向けた事前準備」の段階であり、承認そのものではないという点です。相談を経たからといって承認が確約されるわけではなく、今後正式な承認申請とPMDAによる審査が控えています。ニュースの見出しだけを見ると「AIが認知症を診断する装置が登場」といった印象を受けるかもしれませんが、実際には「承認に向けた相談がスタートした段階」であることは、正確に理解しておきたいポイントです。

なお同製品は、これに先立つ2025年2月、厚生労働省の「革新的プログラム医療機器指定制度」において優先審査対象に指定されています。これは、医療上の必要性が高いと見込まれるプログラム医療機器について、審査期間の短縮や当局との連携強化が期待される制度です。

開発の経緯

ExaMDはエクサウィザーズグループの100%子会社で、昭和大学との連携を通じて臨床レベルでの精度確認を進めてきたとされています。PMDAとの相談は2024年から段階的に行われており、開発前相談や対面助言相談を経て、今回の先駆け総合評価相談へとステップが進んだ形です。また同社は、大阪大学産業科学研究所と共同で「デュアルタスク認知症診断支援AI」など、関連する複数のSaMDの開発も進めているとのことです。

会社側は2026年8月時点で治験の計画症例の観察を終了しており、「2026年度内の製造販売承認取得および早期の販売開始」を目指すとしています。ただしこれはあくまで企業側の目標であり、実際の承認時期は今後のPMDA審査の結果次第である点には留意が必要です。

なぜ今、こうしたツールが求められているのか

背景には、日本における認知症患者・予備群の増加と、検査を受けられる人の少なさという「検査ギャップ」の課題があるとされています。

厚生労働科学研究の推計では、2025年時点の認知症患者数はおよそ675万人規模とされています。ただし、こうした将来推計は複数の研究・時点によって数字が異なり、2024年5月には厚労省が将来推計を下方修正したという情報もあるなど、年々見直しが行われているのが実情です。認知症の患者数・予備群数について「これが確定した公式数値」と一律に言い切れるものではないことは押さえておきたいところです。

ExaMDは、「国内に認知症の潜在リスク群がおよそ1,000万人存在する一方で、実際に検査を受けている件数は年間100万回以下にとどまっている」という検査ギャップを、自社の課題認識として挙げています。専用機器や医療機関への通院を必要とせず、スマホでの短い会話だけで気軽に受けられるスクリーニング手段があれば、この「検査を受けるハードル」を下げる一助になるかもしれない、という発想です。

数字の見方には注意が必要

今回の発表で目を引くのが「判定精度約95%」「潜在リスク群約1,000万人」といった具体的な数値です。看護の現場感覚からしても、こうした数字はインパクトがあり、つい「そのまま信じてよいもの」と受け取りたくなります。

ただし、これらの数値はいずれもExaMD側の発表による自己申告データである点には注意が必要です。臨床研究における判定精度としては約95%を確認したとされていますが、これが査読を経た学術論文として公表されているかどうか、また第三者機関による独立した検証を経た数値であるかどうかは、現時点の報道からは明確ではありません。潜在リスク群約1,000万人という数字についても、厚労省の公式統計と完全に一致するものではなく、あくまで同社が課題認識として示している推計値です。

こうした企業発表の数値は、今後PMDAによる審査プロセスの中で改めて評価・検証されていくことになります。現段階では「同社発表によると」という留保をつけて受け止めるのが妥当でしょう。

読者にとっての意味・今後の見通し

現時点でこのアプリはまだ承認されたものではなく、一般の方がすぐに利用できる状態にはありません。したがって、「もの忘れが心配だからこのアプリを使ってみよう」とすぐに行動できる段階ではない、という点はまずお伝えしておきたいと思います。

一方で、もし今後承認・実用化が進んだ場合、スマホでの短い会話という手軽さは、医療機関に足を運ぶことへの心理的なハードルを下げる可能性があります。ただし繰り返しになりますが、このようなツールはあくまで「気になる兆候に早めに気づき、専門医療機関での本格的な評価につなげるきっかけ」を作るための診断支援ツールです。判定結果だけで認知症の有無が確定するものではなく、実際の診断は医師による問診や既存の検査(認知機能検査、画像検査など)と組み合わせて行われることになります。

看護師の立場から見ても、ご本人やご家族が「様子がおかしいけれど、どこに相談すればいいかわからない」と迷っているケースは少なくありません。こうしたスクリーニングツールが将来的に普及すれば、受診のきっかけ作りとして役立つ場面も出てくるかもしれません。ただし現時点ではまだ「相談が始まった段階」であることを踏まえ、今後の審査の進捗を冷静に見守っていきたいところです。

出典・参考情報

本記事は以下の情報を参考にしています。特にエクサウィザーズグループの発表資料(プレスリリース)を一次情報としていますが、判定精度や潜在リスク群の人数などの数値はいずれも発表元による自己申告データである点にご留意ください。

なお、患者数や検査ギャップに関する数値は情報源によって推計が異なり、年々見直されているものであることも申し添えます。

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医療ニュース, 認知症, PMDA, プログラム医療機器, ExaMD

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